ITジャーナリストの三上洋さんに、「個人情報保護の強化とインターネット広告」について解説していただきます。

J.K. 去年4月にアップルがスマートフォンなどで、個人情報同意の仕組みを導入したことで、それ以来よくその確認を求められるようになりましたね。

三上: iPhoneのアプリが他のアプリやWebサイトと情報を共有するかしないか、つまり追跡・トラッキングについてユーザーが選択できるようにしましたアメリカの調査会社フラーリーは2月、承認した人の割合が25%にとどまっていると発表。つまり7割が同意しなかったとされています。

J.K. この規制でどのようなことが起こっているでしょうか。

三上: ユーザーの同意が得られない場合、広告会社がサイトやアプリの閲覧履歴から「車好きの30代男性」などと 人物像を推定し、個人ごとに異なる広告を表示する追跡型(ターゲティング)広告が利用できなくなりました。

利用可能な情報が減ると、配信や効果測定の精度が下がり、 広告単価の 落ち込みにつながることになります。メタは22年に100億ドル (およそ1兆3000億円)の減収になると予想しています。。

J.K. それでも広告が出る仕組みは新しく出てくるのでしょうか。

三上: Googleでは、複数のサイトをまたがった追跡の仕組み「サードパーティCookie」を廃止しようとしています。これでプライバーは守れるように思えますが、代案としてgoogle独自のプライバシーサンドボックスと呼ばれる仕組みで、ターゲティング広告に近いしくみを作ろうとしています。

J.K. 日本での状況も含めて今後の展開は...

三上: 日本では4月に改正個人情報保護法が全面施行され、個人を識別できるような情報でなくても、ほかの情報と組み合わせて特定できれば利用者の 同意が必要となった。またEUでは今までより厳しいデジタルサービス法とデータ法という法律を導入する予定で、トラッキング広告が禁止される可能性が高くなっています。こうした動きは今後も広がるとの見方が多いとみられこれまで右肩上がりで成長してきた50兆円超の世界のネット広告市場は追跡型が大半の現在のネット広告については転機を迎えたといえます。