今週は商品ジャーナリストの北村森さんに、「サバ缶」のブームについて解説していただきます。

J.K. 缶詰の代名詞といえば「ツナ缶」だったものが、「サバ缶」に変わったというのは聞いたことがありますが、今またブームなのでしょうか。

北村: 「ブームが一過性で終わらなかった」という表現が正しいと言えそう。ツナ缶とサバ缶は2014年に生産量が逆転。背後には健康志向があった。爆発的なブームとなったのは3年前の2018年。当時は大手メーカーでも品切れ続き。前の年の2倍以上の生産体制をとっても売れに売れた。ただ、人気は2018年だけの話で終わらなかった。缶詰業界団体のデータを見てみると、時期によって多少の増減はあっても、現在もサバ缶がトップを走っていて、新商品も次々出ている状況にある。コロナ禍で、食材を自宅に多く置いておきたいというニーズにも、きれいにはまった格好。

J.K. そういえば「サバ缶」では近年進化があるような気がします。

北村: ここ数年のサバ缶の大きなキーワードは、まさに「進化」。レモンバジル味などで知られる「Ça va」((岩手県産)はサバ缶ブームの立役者で、今年は「チョコレート味」まで登場(410円)。サバ缶自体の進化のみならず、合わせて使う商品も登場している。水産大手のマルハニチロはこの9月に「サバ缶とたべる」シリーズを発売。「トマトスパイスカレーの素」「スンドゥブの素」の2種類のスープ状の商品で、サバの水煮缶を入れてレンジアップするというもの(173円)。

J.K. 消費者に飽きられない工夫などはいかがでしょうか?

北村: サバ缶の持ち味は「健康志向への答え」だけではなかったのがポイント。調理したり味付けに苦心したりせずに、そのまま食べても美味しいことが大きかった。さらにいうと、味付け(和風だけでなく、オリーブオイル味など)の多彩なバリエーションだけでなく、サバ丸ごと一本を使った縦長の缶詰(「さば水煮 銚子港水揚げ」高木商店)など、素材そのもので勝負する商品もある。つまり、「サバ缶はひとつではない」というところが重要。そこに、先ほど触れたような、サバ缶を使うためのスープ型商品も登場しているのだから、これはやっぱり強い。

J.K. 今後「ツナ缶」の巻き返し、はありそうですか?

北村: あるかもしれない。実はツナ缶は昨年2020年に5%程度の微増だった。原料価格が安定したことが要因のひとつ。コロナ禍で、おうちごはんや弁当への意識の高まりは、この先もう少し続くとも言えそうで、私個人的には、味のバリエーションのさらなる広がりを期待したい。パンに挟むだけ、ごはんにのせるだけ、という商品ラインナップの強化などもポイント。

J.K.商品ジャーナリストの北村森さんでした。ありがとうございました。