藤代: 最近の日本経済に生じている歪みについてです。
J.K.: 少しずつ景気は回復しているとも言われますが、どんな点が問題でしょうか
藤代: 日本経済を異なる角度からみると、歪みが浮き彫りになります。まず製造業と非製造業に分けてみます。この1年くらいは半導体などのIT関連財と、アメリカ向けの自動車輸出がかなり好調で、製造業は全体として景気が良いと言える状況にあります。一方、非製造業(サービス業)は精彩を欠いています。非製造業は日本国内でビジネス展開する企業が多いので、海外経済の恩恵が届きにくいという事情があります。先日発表された日銀短観でもその構図がはっきりしていました。
J.K.: 製造業に回復が偏っているということですね、他にも偏りがありますか?
藤代: 別の視点でみると、企業間取引、BtoBと呼ばれる形態が比較的堅調なのに対して、企業対個人の取引、BtoCは苦戦していて、ここにも偏りがあります。コロナでDXが盛んになって、企業はそれに絡んだ投資に積極的ですから、企業相手の取引は色々な需要があり堅調です。一方で深刻なのは個人相手にビジネスをする企業です。なぜ苦戦するかと言えば、それはシンプルに個人消費が冴えないからです。ここで緊急事態宣言になると、その偏りが増大することになりそうです。
J.K.: 今日からG20が行われます。世界的にみて日本の経済政策はどうなのでしょうか。
藤代: 欧米では景気刺激策の恩恵で個人消費の回復が著しい反面、日本は、輸出で稼げる製造業、企業相手のビジネスに特化する一部の企業、ここに景気の回復が集中する反面、個人消費は元気がない、という構図がはっきりしています。
ワクチンが進めば、消費はある程度回復すると思いますが、やはり所得が増えないなかで、ペースはかなり鈍くなる可能性もあると思います。
個人的には、アメリカのように消費をダイレクトに刺激する策、ワクチン接種に目途が付いた頃、あるいは東京の緊急事態宣言も終わる頃、惜しみなく実施する必要があると思います。
G20で日本は、欧米のような景気刺激策を持ち帰って経済を際するための早く議論を進めるべきだと思います。