藤代: 最近の金融市場に漂うトランプ・ロスともいうべき現象についてです。

J.K.: 前大統領の経済政策は何かと過激でしたが、なくなっての変化は?

藤代: トランプ大統領といえば、中国製品に高い関税をかけるなど過激な政策が目を引きましたが、常識破りだったのは中央銀行FRB、パウエル議長を名指しで批判したことです。本来、金融政策を担う中央銀行は政府からの介入によって金融政策がゆがまないように、独立しているので政治家が口を出すことはないのですが、トランプ大統領は例外でした。

J.K.: トランプ大統領、どういった要求をしていたのでしょうか?

藤代: コロナが広がる前、失業率が50年ぶり低水準にある状況で「金利をゼロかマイナスにしてもっと経済を刺激しろ!」と発言。コロナが広がった後は「もっと大胆に金融緩和しろ!」とかなり強い口調で批判していました。パウエル議長はそれに忖度する素振りはみせず、金融政策のかじ取りをしていたわけですが、実際は多少の圧力に屈していたようにみえる節がありました。それがバイデン政権に変わってからは少しずつ変化して、大胆な金融緩和に距離を置くようになっています。

J.K.: FRBの金融政策、変化ありましたか?

藤代: 最近はアメリカ経済の見通しがかなり改善する中、FRBはもうこれ以上の金融緩和は不要だろうということで、徐々に緩和路線を縮小する方向に向かいつつあり、昨日はそうしたFRBの動きを反映して金利が上昇、それが株価、特にNASDAQには打撃になり大きく下落しました。こういう状況になると金融市場参加者は「トランプさんがいれば、金融緩和を継続しろ!と言ってたんだろうなぁ」と懐かしむ訳です。トランプさんがホワイトハウスを去ってから、経済は色々な意味で正常化しています。景気が良くなるから株価が上がる、逆に株価が下がるからと言っても、実体経済は、思いのほか大丈夫と言うことも考えられます。