藤代: アメリカで個人投資家が大暴れしていることについてです

J.K. 個人投資家の売買が活発という話は以前にもお話しいただきましたね。

藤代: 今回ニュースを読むにあたっていくつか前提として抑えておくべき知識がありますのでその説明をします。まず「空売り」という取引についてです。これはある株が値下がりすると儲かるという取引で、目的が2つあります。1つは「守り」。株式を保有している投資家が株価下落に備えて、リスクを一部ヘッジするためです。もう一つは「攻め」。割高な銘柄に目をつけて、株価下落で一儲けをもくろむ取引です。これは主にヘッジファンドと呼ばれるプロの投資家が得意としています。

J.K. その空売りが関係しているという今回の騒動、具体的にどんなこと?

藤代: あるファンドが比較的小規模な企業A社の株式に空売りを仕掛けました。すると、その取引情報を見た個人投資家がSNSで「皆で一緒になってA社の株を買おう」と呼びかけて団結して買い注文を入れます。当然、株価は急上昇します。空売りを仕掛けたヘッジファンドは大損です。A社の株価は1日で2、3倍も上がる場面もありました。買った株は値上がりする、それにファンドが悲鳴をあげる面白さも手伝って、こうした「ファンド退治」とも言うべき取引がかなり過熱しています。

J.K. 事実今週その株は乱高下しましたね。この先はどうなりそうですか?

藤代: ある種のババ抜きだと思います。マネーゲームの対象になった株は、1か月で15倍になったものもあり、とんでもない高値になっていますから、誰かが売り抜けようとした途端に株価下がる可能性は高いです。値上がり益がゼロになるだけで済む投資家もいれば、大損する投資家も出てくると思います。これは、マネーゲームで投資家が損失を出した、というごく一部の話でそれまでだと思いますが、中長期的には、株式や金融市場の安定感が失われてしまうデメリットが大きいです。こうした事態を目の当たりにすると、普段は要らないと思う「規制」は適度にあった方が良いのだと、つくづく感じました。