藤代: 最近の日本経済、景気対策を踏まえて、現状を整理します。

J.K. 景気対策といえば、Gotoトラベルの予約状況が好調との報道がありますね。

藤代: 観光産業は9月に入ってから少しずつ元気を取り戻し、10月に東京都発着が対象に加わって回復の力が一段と強まっているのは事実と思います。Gotoトラベルの予算の消化状況、携帯電話の位置情報を利用したデータをみる限り観光業が息を吹き返していることは明らかです。旅行を控えてきた反動とGotoのお得感が相まって、人々が観光を楽しんでいる模様です。

J.K. 経済対策としてGotoはどうですか?

藤代: 家計に対する支援策として、2つのタイプがあります。1つは定額給付金10万円のように直接現金を配る政策と、もう一つはGotoトラベル、イートのように消費を補助するものです。どちらが良いという話ではなく、単純に同じ金額を使うならGotoのような政策の方が効果的です。まず何といっても給付金のように貯蓄に回ってしまうことがありません。また事業者が倒産を回避できることで、雇用が維持され、地域経済の好循環を生むといった波及効果が期待できます。国内産業を重点的に支援するという目的に合致します。一方定額給付金は、ある意味マイナスになる要素を含んでいます。

J.K. どういうことですか?

藤代: たとえば、定額給付金で家電が売れると、海外製品の輸入が増える、つまり日本のおカネが海外に流出することにもなります。日本メーカーの製品でも海外製が増えていますから、国内の家電販売が増加すると貿易赤字が拡大するという何とも皮肉な状況があります。つまり日本国内の生産は増加せず、雇用も増えません。もちろん、この議論はこんなに単純ではなく、良いか悪いかは全く別問題ですが、国内産業を重点的に支援するという意味においては、やはりGotoが理に適っています。この視点で考えると、先々の景気対策は、現金給付よりかはGoto事業の延長等、消費を補助する政策の可能性が高いと思います。