藤代: コロナで変わったアメリカの住宅市場

J.K. 不動産市場については良いニュースも悪いニュースもありますね。

藤代: ようやくデータが揃ってきて、状況がわかってきました。まずアメリカ大都市のアパート(日本でいうマンション)では、賃貸物件離れが加速しています。特にNYでは、元から家賃が高騰していましたから、在宅ワークでオフィスに行かなくても良いのであれば、重い家賃負担から逃れようとする動きが出てくるのは当然だと思います。アパートのオーナー側も家賃引き下げに動いているようです。実際、物価統計では、これまでほぼ一貫して、上昇していた家賃が、この数ヶ月下向きのカーブを描いています。

J.K.一方で住宅販売が好調というニュースもありますね。

藤代: 絶好調といってもよいレベルです。NAHB住宅市場指数という住宅建設業の景況感を表す指標は9月の数値が、1985年の統計開始以来で最高水準でした。そして住宅着工件数、住宅販売件数は新築・中古ともにコロナ前を明確に上回っていますし、中古住宅に関しては価格が前年との比較で2桁%上昇しています。これはおそらく、高級賃貸物件を引き払った方々が郊外の戸建て住宅を購入する動きが加速しているのだと思います。

J.K. アメリカでは大都市の賃貸物件から、郊外の戸建て住宅ということですね。そこで日本ではどうですか?

藤代:アメリカはわかりやすいトレンドがでている反面、日本でははっきりとしたトレンドが出ていません。ここ数ヶ月、東京都の人口増加ペースが少し鈍化したり、都心(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスの空室が僅かに増加して、賃料も少し下がったとのデータがあるくらいです。オフィスを引き払った企業が報道で大きく取り上げられたりしていますが、あくまでそれは一部の限られた事例であり、全体のトレンドではないと思います。ただ、今後は何らかの動きが出てくるかもしれませんので、色々なデータをチェックしていく必要があると思います。