藤代: 今週の株価下落について、相場の格言を紹介しつつ解説します。

J.K. 先週から今週(前半)にかけて、アメリカの株価が暴落したようですが。

藤代:アメリカのハイテク株、GAFAM(google,amazon,facebook,apple,microsoft)、電気自動車大手が急落。これまでバブル的に上昇してきた反動です。ここで紹介したい相場格言は「噂で買って、事実で売る」、これはNYウォールストリートでの「buy the rumor(噂),sell the fact」の日本語訳です。

J.K. 予想の段階で買って、それが事実になったら売るということですか?

藤代: ここでいう投資家の「噂」、「予想」とは、今回のケースだと中央銀行FRB超緩和的な金融政策を長期にわたって続けると宣言するのでは?というもので、それを前提に株を買ってきました。一般的に金融緩和は、景気にプラスの影響を与える一方で、バブルや物価が急上昇する原因にもなりますから、中央銀行が「金融緩和を何年も続ける」と自ら宣言することはレアケースです。ですが、例外的にそうした姿勢を示したのが8月末。FRBのパウエル議長は、ほぼ明示的に金融緩和を長く続ける方針を示しました。噂、予想が事実になった形です。今回、投資家が利益確定売りに走った理由の一つは、この文脈で説明できると思います。

J.K. 具体的にFRBは、どういう方針を示したのですか?

藤代: 8月のアメリカの失業率は8.4%。2月は3.5%でした。今、FRBは景気をサポートするために政策金利をゼロまで下げていますが、パウエルさんは、失業率が十分に下がるまでは、経済活動が過熱してしまってもそれを抑え込むことはせず、ゼロ金利政策を続ける方針を示しました。それが、投資家目線には、もうこれ以上金融緩和の度合いが強まる可能性はない、と映ったようです。

こういった背景から今回、小さなバブルが弾けた印象ですが、大きくなったバブルが弾けると、リーマンショックや90年代以降の日本のようになりますから、中長期的にみれば、必要なイベントだったかもしれません。