藤代: アメリカに続いて日本株もコロナ前の水準を(一時)回復したその背景

J.K.: 実際の経済環境が厳しいなかで、日経平均株価も上昇していますね。

藤代: 日経平均は2月に付けた水準を(一時)回復しました。一方、企業収益はコロナ前の水準を大幅に下回っていますから、不況なのに株価が上がるという奇妙な状況です。ただ株価があがるにはそれなりに理由があります。今日は、日本国内にあるおカネの量にフォーカスして解説してみます。

J.K.おカネの量とは具体的になんでしょうか?

藤代: 結論から言うと、日本の企業や家計といった民間部門が保有するおカネが増えています。あくまで一つの理由ですが、政府が一人当たり10万円、予算規模で13兆円を配ったことです。このお金はどこから来たのか?それは単純に新たにお札を発行しただけです。ここで一番重要なのは、いくら景気が悪くても、これまで日本にあったお金は、消えないことです。それなのでおカネを刷れば、どんなに不況でも民間部門にあるおカネは、増税さえしなければ増えます。現在、民間部門のおカネの量は1年前と比べて7%くらい増えています。これは同じ基準で遡れる2003年以降で断トツ。グラフは垂直に近い形で伸びています。

J.K. それが株式に向かっているということですか?

藤代:そういう面があるのは確かです。民間部門全体でみれば、おカネがじゃぶじゃぶです。一方で経済活動は元に戻っていませんから、本来、消費や設備投資に向かうはずだったおカネが株式市場に集まってます。それを裏付ける一つの事例としては、マザーズという新興企業が上場する市場が活況ということがあります。個人投資家が、消費に回すはずだったおカネを株式投資に回している姿が透けて見えます。これと似た構図で、ものすごいことになっているのがアメリカ。ロビンフッダーと呼ばれるアメリカの個人投資家がとんでもない量の株式を買って株価上昇に拍車をかけています。最後に重要なこと。今日はおカネの量に注目して解説をしましたが、株価はこれだけでは決まリません。そこが難しいところです。