藤代: ベーシックインカムという制度について

別所: その言葉自体は時々、見たり聞いたりしますが、どんなものでしょう

藤代: 政府が全国民に最低限の生活を保証するため現金を支給する制度です。働かなくても家賃、食費、光熱費分のおカネが貰えます。国民が怠け者になるリスクがある反面、将来不安がなくなるので、今の日本で問題になっているような、消費の停滞が解決するというメリットが期待されます。この制度の導入は、ヨーロッパを中心に議論が盛り上がっていて、日本でも導入を検討すべきとの声があります。

別所:海外で具体的に進んでいる例はありますか。

藤代: 数年前にフィンランドで実験されたことがあるのですが、このコロナ危機で今まさにベーシックインカムに近い政策を実施しているのがイギリスです。休業を余儀なくされた人の給料を80%、30万円強を上限に最低3ヶ月支払うというものです。そしてスペインでは、低所得者を対象に恒久的な措置として、毎月5万から12万円程度を支給する制度が発足します。所得制限など一定の条件はあるにせよ、ベーシックインカムに近い形です。

別所: 政府からの現金支給といえば、特別定額給付金10万円がありますね。

藤代:この定額給付金も考え方によっては、ベーシックインカムに近い性格のものと言えます。当初は住民税非課税世帯に限定されるはずでしたが、全国民へ一律給付というのは、まさにベーシックインカムの考え方です。今のところ次回の支給予定はないのですが、コロナの影響が長期化すれば第2、第3弾の可能性があります。そうなれば随分とベーシックインカムに近づくので、いっそベーシックインカムを本格的に検討みてはどうだろうか、という話にもなりそうです。突拍子もない話に聞こえると思いますが、ベーシックインカム導入で将来不安をなくすことで、経済の持続可能性を高められるかもしれないという考え方は、世界的に注目されている。これは事実です。