藤代 原油価格が一時マイナスになったことについてお話します。

J.K.: マイナス金利は聞きましたが、そもそも値段がマイナスとはどういうことですか?

藤代: 端的にいえば、原油を買うとお金が貰える、売った側はお金を払います。なぜか。コロナ問題でガソリンなどの需要が減るなかで、原油の採掘業者は相変わらず高水準の生産を続けているので、市場には原油が溢れかえってしまいました。そして遂にアメリカの原油貯蔵施設でキャパシティが限界に近づいてしまい、文字通り原油が溢れそうな状態にあるためです。

J.K.: 暴落するメカニズムはわかりましたが、では、なぜマイナスになったんですか?

藤代: これを理解するためには原油市場を少し解説する必要があります。一般的に原油価格と言った時はWTI原油という指標を指しますが、より正確にいうと、WTI原油「先物」価格です。先物というのは、ある時点で原油の売買の予約だけしておいて、満期が来たときにお金と原油を決済、交換する取引です。今回暴落したのは5月に満期を迎える取引。先物の買い手は、満期を迎えると、原油の黒い液体の現物が手元にくるのですが、困ったことに原油の貯蔵施設がほぼ満タンです。そこで、手元に来た原油を保管するためには、極端な話、自分でタンカーやタンクを用意する必要がある。そんなことはできませんから、原油が手元に来たら困る!ということで投資家が原油を投げ売りしました。

J.K. なるほど。そして、日本のガソリン代などは安くなりますか?

藤代: 少し安くなると思います。原油が安くなったのは事実ですが、ここ数日のマイナスや暴落は、あくまで「先物」の世界で起きたことで、現物の取引ベースとは少し違います。また普段のガソリン代には税金がたくさん含まれていますから、マイナスになる可能性はゼロです。現在の原油先物は1バレルあたり16ドル50セントです。これは1リットルに換算すると13円くらいです。コンビニで500mlのPETの水が100円とすると、その15分の1以下になっているんですね。