藤代: 政府の新型コロナウィルスの経済対策、財政について、お話します。

J.K.: 108兆円規模の経済対策、不十分との声もありますが、どうなのでしょう。

藤代: まずこの108兆円というのは、全てが新たに必要となる国の支出ではありません。最近は経済対策の規模を大きく見せるような打ち出し方をするので、実体の規模はそんなに大きくありません。新たに国が増やす支出は20~30兆円。この額がいわゆる「真水」と呼ばれる部分で、国民一人当たり10万円のの現金給付などが含まれます。ただし、これでは物足りない印象を受けます。

J.K.: 一方でこれだけのお金を配ると将来の財政が心配という向きもありますよね。

藤代: 政府が使うお金を考える時のポイントは「家計」と別物だと考える必要があります。たとえばある家庭で30万円の収入に対して50万円使いたいので、20万円借金したとすると、当然ながら20万円の借金返済のために、将来節約する必要があります。一方、政府が同じことをした場合は考え方が異なります。まず50万円使った場合、政府部門に20万円の借金は残るのは同じですが、政府が使った50万円は、日本国内に散らばるだけで日本国内には残るんです。つまり政府が借金で調達した20万円は、色んなルートを伝わって民間部門に行き渡る形です。ここが家計の財布とは根本的に異なる部分です。

J.K.: でも、現在の借金は将来世代に残るので、闇雲に借金してはダメですよね。

藤代: 使い過ぎるといつかはそのツケが回ってきます。一方で政府の難しいところは、本来使うべきお金を過度に節約してしまうと、逆に借金が増えてしまうことです。節約によって景気が悪くなって税収が減るからです。政府は、経済全般が必要としている額をしっかりと見極めて、躊躇なく使う必要があるということです。こうして考えると、今のように経済が苦しんでいるときに、政府が大胆な支出に二の足を踏むと、経済が腰折れしまって、将来の税収が悪化し、財政がかえって悪化してしまう可能性もあります。

今日言える一つの結論は、「景気対策=借金」ではないと、ということです。