藤代 最近のヨーロッパ経済で起きている変化についてです。

ハリー: そもそも今、ヨーロッパの景気はいいんですか?

藤代: 景気の足腰そのものは、ギリシャ危機のピークだった2012年頃との比較で、随分と強くなっているのですが、最近の風向きはお世辞にも良いとはいえません。最も風向きが悪い国は、意外なことに、ドイツです。言わずと知れた自動車大国なのですが、環境規制の対応などもあって、生産が抑制されているため、国全体として元気がありません。

ハリー: 製造業の調子が悪いということですね?先行きは大丈夫でしょうか?

藤代: ドイツは非常に産業競争力を持つ国ですから、深刻な不況の心配はさほどないといえますが、今回は比較的大きめの景気対策を講じる可能性が出てきました。

景気対策といえば、これまで金利を下げたりする金融緩和が中心でしたが、今回は財政政策、つまり政府が直接お金を使って景気をテコ入れする方法が検討されています。

ハリー: なぜ、いま、そのような財政政策が必要なのでしょうか?

藤代: これまでの議論では、政府がお金を使うと国の借金が増えるので、あまり使うべきではないと、されてきました。特にルールを厳しく守るドイツはその傾向が強かったということです。ただ、最近の世界的潮流として、景気が悪い時には、しっかりと政府がお金を使った方が、かえって財政が健全に保たれるのでは?という意見が増えてきました。今回のドイツはそれを印象づける動きです。同じ様な動きは経済不振が続くイタリア、EU離脱を控えるイギリスなどで、今後は広がっていきそうです。