藤代 経済の分脈で、でてくるThis time is differentという言葉を紹介します。

J.K. 「今回は違う」、「今回は例外だ」という意味ですか?

藤代 これはバブルやブームが起こると必ず言われる言葉です。「今回は違う」という言葉を聞いたら、それはバブルが発生している可能性を疑った方が良いかもしれません。この言葉を紹介するのは、最近、アメリカを中心に少し不気味な動きがあるからです。

J.K. どんな動きですか?

藤代 簡単に言うと、信用力の劣る企業向けにレバレジッドローンという仕組があり、それを用いた借金が大流行しています。これで大企業でなくても、まとまったおカネを借りることができます。一方で貸す側(主に銀行)は、おカネを返してもらう権利を第三者の投資家に転売します。これを証券化といいますが、その証券を買った投資家は、国債を買うよりも高い金利を受け取れるので大人気というわけです。ちなみに、投資家に転売する時は、複数の証券をひとまとめにして、そこに含まれる幾つかの貸出先が倒産しても、全体では利益がでるように工夫されています。

J.K. 似たような仕組みで、大失敗したのがアメリカの住宅ローンでしたよね。

藤代 仕組みはかなり似ています。証券を束ねてリスクをみえにくくしている点も同じなので、本質的にはほとんど変わりません。この状況を見て、世界の金融監督当局はアラームを鳴らしているのですが、投資家と銀行はThis time is differentといいます。住宅ローンは個人向けで、レバレジッドローンは企業向けなので、そこが全然違うといいます。今のところ取引の規模は、それほど大きくはないのですが、景気が曲がり角を向かえると、このレバレッジドローンが逆回転をはじめる可能性があります。経済の文脈でてくる「今回は違う」というこの表現は特に注意が必要です。