藤代 4月からはじまる働き方改革法案を踏まえ有給休暇の価値についてです。

J.K. 日本人は休みを取らないと言われていますが、実際は?

藤代 よく言われているとおり、日本人は有給を取得していないようです。有給の取得率は厚生労働省の調査ベースで51%、旅行代理店エクスペディアの調査でも50%というほとんど同じ数字です。日本企業の正社員の場合、有給は平均が18日なので、9日しか取得していないということです。この数字には夏休みや体調不良による休みも含まれますので、それを考慮すると随分と少ない印象です。

J.K. 有休消化は叫ばれていても取りづらいんですね。

藤代 ここで有給をとらないことがどれだけモッタイないか計算しました。データを整理すると、まず有給18日に対して取得が9日とします。正社員1日当たりの給料は、賃金構造基本調査という統計に基づくと1万5千円ですから、有給1日は1万5千万円の現金価値です。つまり未消化の9日分の有給の価値は13万5千円です。賃金が増えにくい、といわれる中で、13万5千円の有給を残すのはとても大きいです。有給は労働者が有する当然の権利ですから、それを使わない、使わせないというのは実質的な給料の減額です。一人当たり13万5千円を日本全体に拡げると4兆円。かなりの金額です。

J.K. 同じ給料なら全部とれるのが理想ですよね。

藤代 そうしたなか4月からは企業に対して一定の有給取得を義務付ける制度がスタートします。上手くいくと有給が増えて賃金も上昇するかもしれません。これはどういうことか?まず有給取得率が上がると、休みの従業員の穴を埋めるための新たな労働力が必要になります。この人手不足の中で、有給が取れず賃金も低い会社は人材不足、流出に苦しみ、経営が成り立たなくなります。つまり企業は賃金を引き上げないと人材が確保できなくなります。従業員が有給を取らないことを前提に人材を配置している企業、ブラック企業が生き延びる環境が悪くなるということです。