藤代:今朝は携帯電話料金の値下げが経済全体に与える影響です。

J.K.:政府が4割の値下げを要請ということで、かなり話題になっていますよね。

藤代: 日本の携帯料金が先進国のなかで高いとの認識から、政府は各社に値下げを要求しています。政府が民間企業に介入するのは乱暴だという指摘がある一方、国の通信インフラを使って通信会社がもうけ過ぎるのはよくないといった様々な意見があります。今日は別の視点を考えます。携帯料金が安くなったら、消費者は恩恵をうけるのか?ということです。

J.K.:携帯料金が安くなると消費者は恩恵ありますよね?

藤代: と思いきやそう簡単には決まりません。そもそも携帯の値下げは消費を刺激するためですが、その効果は計算上ゼロなんです。どういうことか?

まず、携帯料金が安くなると、浮いたお金は、他の消費と貯蓄に回ります。貯蓄に回ったおカネは、その時点で経済からドロップアウトしますから、景気刺激効果なしです。

浮いたお金が他の消費に回ると何が起こるか?ここでは全て洋服の購入に回ると仮定します。すると、洋服の需要と供給の関係に変化が生じて、洋服の値段が上がります。

J.K.:需要が増えると人気が出る、ということで値段は上がるということでしょうか

藤代: これが経済政策の難しいところです。政府は携帯料金を引き下げるように要請しましたが、浮いたお金は他の消費に回り、結果として他のモノの値段があがるので、最終的に経済全体の物価は変わらず、したがって消費量はさほど変化しません。また貯蓄に回る分を考慮すると、その分だけ消費はダイレクトに減ります。消費を刺激したいなら賃金を増やす政策をする、あるいは減税などで可処分所得を増やす。これが基本中の基本です。