藤代: 今朝は水曜日に発表されたGDPについて、その評価とそれに関連して最近話題の統計のあり方について。

J.K.:まず、経済成長率はマイナスだったようですね?

藤代: 実質GDPは前期比年率で1.2%の減少。夏場に相次いだ自然災害で、消費と輸出が打撃を受けました。消費は、失業率が低下して所得も増えているので、本来もう少し強くても良いのですが、賃金の上昇に対する期待感が低いなかで、相変わらず鈍い状態にあります。輸出は台風の影響で、出荷ができなかったほか、中国を中心に海外経済がややスローダウンしていることもあって、冴えない動きとなりました。ただ、経済全体をやや長い目でみると、企業の設備投資が牽引する形で回復経路に戻ると予想されますので、このまま景気が悪くなる可能性は低いです。

J.K.:この番組でも何度か取り上げている統計のあり方はどうですか?

藤代: このGDP統計は様々な統計を合成して作っているのですが、その幾つかの統計が問題視されています。一部のSNSなどでは政府が統計を操作しているのでは?という声もあります。最近問題視されたのは厚生労働省が発表している毎月勤労統計という賃金の指標。これは今年に入ってから急に強い数字が出るようになっていて、現実を過大評価しているとの声が多くあがっています。

J.K.:経済政策の判断が狂ってしまっては問題ですよね?

藤代: 統計の宿命とも言える問題があります。統計は基本的に「サンプル調査」といって日本全体の一部をつまみ出して作成されています。選挙の出口調査と似たようなイメージで、毎月勤労統計もその手法です。このサンプルは定期的に入れ替えているのですが、今回たまたま賃金をもの凄く上げた企業が多く含まれていたので、それによって数値が嵩上げされてしまいました。統計上は賃金が急上昇しています。厚生労働省は、そうした特殊なサンプルを除いたベースの数値も公表していて、政府やエコノミストはそちらをベースに景気の判断をしていますので、景気判断に大きな歪みが生じるということはないと思います。さすがに政府が統計を操作しているという考えは行き過ぎだと思いますが、統計の精度が低いと政府への信任も含めて色々な問題が起きるのは事実です。いち早い改善が必要です。