藤代:  おはようございます。今朝は、グッドハートの法則という、数字を見るとき等に役立つ考え方を紹介したいと思います。

J.K.: どのような法則ですか?

藤代: 国や組織の目標などで、ある特定の数字をターゲットにすると、その数字はごまかしの対象になるので信頼できなくなってしまうという法則です。例えば、中国では地方の役人を経済成長率で評価していますので、経済成長率が水増しされてしまいます。そこで地方の本当の経済成長率を知りたい中央政府の役人やエコノミストは、発表された経済成長率があてにならないので、電力消費量、貨物の輸送量など、単純で水増しが難しいものをみて、実力を測定しようとしてきました。すると今度は、地方政府の役人が人の住んでいない家の電気をつけっぱなしにしろ、と指示を出したそうです。これでは経済成長率も電力消費量もあてにならず、結果的に経済成長率を目標にする意味がなくなってしまいます。

J.K.:   日本でもそのようなことはありえないでしょうね。

藤代: しかし日本でいえば、ここ数年取り組まれている長時間労働の是正です。取り組み自体は賛成でも、一部の企業では報告ベースの労働時間削減を最優先する余り、サービス残業が増えている可能性があります。最新の統計をみると、企業が政府に申告した労働時間は減っているのに、労働者が申告した労働時間は減っていません。背景にサービス残業が疑われます。最近では、パソコンをシャットダウンしてから会議を始めて、記録が残らないようにする裏技が横行しているとも聞きます。

J.K.: 数字にこだわりすぎると、本質がみえなくなるということですね。

藤代:  私のように経済分析をする人間は、職業病でどんな数字も基本的に疑ってかかるのですが、ある数字が急激に望ましい方向に変化した場合は、背景に何があるか調べてみると面白いかもしれません。