藤代:おはようございます。本日はインバウンド(外国人の旅行)について、最近様々な数値が飛び交っているので、それを整理しながら解説する。先ず数値を確認すると、19日発表された9月の訪日外客数は192万人と、9月としては過去最高を更新。私が季節ごとのバラつきを考慮して年間ペースに換算したところ2400万人ペースだった。これは昨年と比較しておよそ20%増加。10年前のおよそ3.5倍。

J.K:ものすごい勢いですね。でも、一方で最近は"爆買い"という言葉を聞かなくなりましたし、炊飯器を両手に抱えている方も見ませんよね?

藤代: 一方で、訪日外国人一人当たりの消費額は前年比で17.1%減少した。外国人旅行者は、自国の通貨で予算を決めているので、ここに円高の影響がでている。為替は、昨年後半までUSD/JPYが120を越えていたが、今年は100程度まで円高が進んでいて、外国人からみると"お得感"が薄れている。化粧品やお菓子はさほど影響が出ていないが、高級品にその影響が色濃く出ている。

J.K:整理すると、日本を訪れる外国人の数は増えている一方で、一人当たりの消費額が減少しているということですね?

藤代:はい。その結果、外国人が日本で消費する額は前年比で2%程度減少。これは約5年ぶりの減少。一見すると、日本のインバウンド需要が曲がり角に差し掛かったとの印象を受けるが、やや長い目でみれば、これまでの伸びが異常で、目下の勢いは決して弱くない。そもそも前年比で50%増加というのは、常識的に考えれば持続不可能。

J.K:先行きはどうですか?為替の影響も含めて、注目点は?

藤代:個人的には、1人当たりの消費額という"金額"の議論よりも、どれだけの観光客が来るかという"人数"の議論が重要と考えている。その点、足もとの実績は非常にしっかりしていて安心できる。従来は為替が円高になると、海外からの客足は減少していたが、最近は為替との関連が薄れている。先行きは、中国、東南アジア諸国でパスポートの取得が進むほか、ビザの発給要件も緩和されるなど、制度面の追い風が見込まれるため、円高という逆風に持ち堪えることが期待される。