
参考図書は野本遼平の『ゼロから創らない戦略』
◎『価値移転』とは、ゼロから新しいものを作り出すのではなく、
別の場所にあるものを持ってきて価値を生み出すアプローチのことです。
著者の野本良平は、ある場所では当たり前で評価されていないものを、
別の市場や用途へ移すことで新しく価値が生まれると述べています。
山口さんはこの考え方について、新しいものを作るというより、
物事の「文脈」を変えることで価値を生み出すことだと解説します。
◎現実世界における家族や友人との関係を
インターネット空間に移した「Facebook」や、
捨てられていたスキマ時間を企業の現場に移した「タイミー」などが、
価値移転の例として紹介しています。
長濱さんも、普通の日本の家を外国人向けの宿泊施設として提供する「Airbnb」などのサービスもこれに当てはまると応えます。
日本人にとっては見慣れた普通の家でも、
外国人にとっては日本の生活文化が垣間見える興味深い空間になるからです。
◎山口さんは、水が砂漠では大きな価値を持つように、
場所を変えることで希少性が変わると話します。
また、空間だけでなく「時間軸」での価値移転もあり、
50年前には捨てられていたような駄菓子や古い雑誌が、
現在では高値で取引されることもそのひとつです。
長濱さんは宅配トランクルームのサービスを挙げ、
将来価値が生まれるかもしれないものを空き地に預けておくのも、
時間軸を使った価値移転の戦略だと気づきます。
◎長濱さんは、誰もが無料で読める文章をあえて有料にする
「note」のようなサービスも、価値移転ではないかと話します。
それに対し山口さんは、個人的なメモをコンテンツ化する面白さを挙げ、
建築家・コルビュジェのノートがそのままの形で出版されている例を紹介します。
売り物として作られていなかった個人的なノートであっても、
場所と文脈を変えることで、熱心なファンにとってはたまらなく魅力的な価値を持つそうです。
◎さらに山口さんは、イノベーションにおける「技術移転」の重要性について話します。
かつて鉄道は時速100キロを超えると脱線すると言われていましたが、
戦争で職を失った航空機の技術者が「振動制御」の技術を
鉄道に持ち込んだことで、新幹線が誕生しました。
当初は「素人は黙ってろ」と専門家に猛反発されたそうですが、
過去の常識にとらわれた専門家こそが、
新しい価値を生む際のハードルになり得ると山口さんは指摘します。
◎世の中にまだないニーズを掘り起こした例として、
山口さんはソニーの「ウォークマン」を挙げます。
また、日常的な「愚痴」でさえも価値移転が可能だと話します。
友人にとっては困りものの職場の愚痴も、転職斡旋業者にとっては
貴重なデータであり、顧客獲得のチャンスになります。
このように、不要に思えるものでも、
置く場所や聞く人を変えることで大きな価値へと転換できるようです。
◎この価値移転は、私たちの人生やキャリアの指針にもなると山口さんは語ります。
坂本龍一さんが現代音楽の知識をポップスの世界に持ち込んだことや、
鈴木大拙さんが日本で当たり前だった仏教の知識をアメリカで「禅」として広め、
世界的有名人になった例を挙げます。
自分の居場所を変えることで、当たり前だった知識やスキルが、
ユニークな価値として輝くことがあると山口さんは締めくくります。
◎キーワード『価値移転』についてもっと知りたい方は
野本遼平の『ゼロから創らない戦略』を読んでみてください。
■毎週、各界の著名人がこの図書館にふさわしい1冊を紹介して下さる
「BOOK SHARING」
ファンクやソウルを軸にジャンルにとらわれない
流動的なJ-POP を鳴らすた4人組バンド、TiDEの
ボーカル&ギターの井上大悟さんに
網谷優司『ニヒリズムとメランコリーの克服 ―フロイトのフモール論を導きとして』をご紹介いただきました。
■図書館の膨大なCD・LPコレクションから他ではめったに聴くことのできない
レア音源を特別に試聴するコーナー「RARE COLLECTION」
Al De Meola, John McLaughlin, Paco De Lusiaという
3人のスーパー・ギタリストによる
夢の共演のライブ・アルバム『Friday Night In San Francisco』の最新リマスター盤からご紹介。
◎若くしてReturn to Foreverのメンバーとなり注目を浴びた、Al Di Meola。
Miles Davisのエレクトリック期の重要なメンバーとして活躍した、John McLaughlin。
そしてフラメンコ・ギターのマエストロにして?神?とも称された、Paco de Lucía。
この3巨匠によるギター・バトルのライブ・パフォーマンスは、
1980年12月5日金曜日にサンフランシスコの Warfield Theatreにて開催されたものです。
◎日本盤のタイトルにもあるように、まさに「The Guitar Trio」によるこのライブは、
すべてアコースティック・ギターのみによる演奏で、これは当時としては大変珍しいことだったそうで、
翌年1981年にレコードとしてリリースされた際にも大きな話題となりました
◎名ライブ盤『Friday Night in San Francisco』として
これまでも何度か再発されてきましたが、
今回は新たな2026年リマスタリングによる素晴らしい音質、
とくに日本盤はより高音質なSA-CD仕様で完全生産限定盤として復刻されました。
アルバムの収録曲は全5曲(「Mediterranean Sundance / Rio Ancho」「Short Tales of the Black Forest」「Frevo Rasgado」「Fantasia Suite」「Guardian Angel」)、3人の超絶技巧による素晴らしい演奏が楽しめます
『Friday Night In San Francisco』(最新リマスター盤)から
『Fantasia Suite/ Al De Meola, John McLaughlin, Paco De Lusia』を試聴しました。
□今週の図書
野本遼平の『ゼロから創らない戦略』
網谷優司『ニヒリズムとメランコリーの克服 ―フロイトのフモール論を導きとして』
□オンエア曲
Canned Heat / Jamiroquai
Could It Be I’m Falling In Love / The Spinners
My Sweet Lord / George Harrison
Special Delivery / Chris Brown
Window / TiDE
Fantasia Suite/ Al De Meola, John McLaughlin, Paco De Lusia
You / 藤井 風