2025.05.17 ONAIR

今回のテーマは「性善説」

参考図書はルトガー・ブレグマンの『Humankind 希望の歴史』です。

『性善説』とは、「人間の本性は本来善である」という思想。
古代中国の儒家・孟子が唱えた説です。
参考図書で著者は、
「ほとんどの人間は本質的に善良である」と主張しています。
しかし、人間は本質的に、利己的で攻撃的、という考えは根強いものです。
(これがいわゆる「性悪説」)

今回の参考図書では「性悪説」の根拠となっている
心理学や人類学の真偽を問うことで、人間は本質的に善良である、
と説いています。

人間の道徳性(善性)の脆弱さを証明した1つの有名な実験が
「ミルグラムの電気ショック実験」。

被験者は二人一組となり、一人は先生役、一人は生徒役。
生徒役は隣の部屋で椅子に縛られていて、声だけが聴こえます。
そして記憶力テストが始まるが、生徒が答えを間違えると、
先生は研究スタッフの 指示に従って、電気ショック発生機のボタンを押し、
生徒にショックを与える。
そして、間違えるたびに電圧を上げていく…。

実は、生徒役は研究チームのメンバー。
その結果、先生役の65%が感電死レベルの電圧を生徒に与えました。
この実験結果から、「人間は権威の命令に無批判に服従する」
=善性は簡単に覆る、ということを証明したとされています。

しかし!この実験には、実はからくりがありました。

生徒が本当に苦しんでいると思っていたのは先生役の56%だけ。
電気ショックを本物と思った人の大半も、スイッチを押すのを止めていました。
研究スタッフが先生役に高圧的に命令するほど、先生役は従わなくなったそう。
それでもスイッチを押し続けた人がいたのは、なぜでしょうか?

それは、彼らが研究者を信用した=この研究を助けたいと思ったからです。
善良でありたいという心によって、人々はスイッチを押したのだと
述べられています。

著者曰く、これはニュースの影響が大きいとのこと。
ニュースが扱っているのは、例外的な出来事。
しかし、良いことよりも悪いことに敏感である人間の習性
(ネガティビティ・バイアス)によって
悪いニュースの影響を受けやすくなります。

実際、30ケ国の人に、
「全体的に世界は良くなっているか、悪くなっているか、
良くも悪くもなっていないか」 という質問をするという調査をしたところ、
どの国でも圧倒的多数が世界は悪くなっていると答えたそうです。

デジタル時代の今、ニュースはますます過激になってきていて、
その影響で、人間は悪者であるという考えが蔓延しやすいのです。

だからこそ、「人間は本質的に善良である」という考えは
必要なのかもしれません。

キーワード『性善説』についてもっと知りたい方は、
『Humankind 希望の歴史』をぜひ読んでみてください。


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「BOOK SHARING」

最新著書「アンパンマンと日本人」が話題!
作家で東京科学大学教授の柳瀬博一さんがご登場。
E.O.ウィルソン著『バイオフィリア:人間と生物の絆』
をご紹介いただきました。


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ボーナス・トラックとして未発表テイクなどが収録されています。
さらにアナログ盤やカセットでもリリースされているという、
まさにコンプリートなリリース!


□今週の図書
ルトガー・ブレグマン『Humankind 希望の歴史』
E.O.ウィルソン『バイオフィリア:人間と生物の絆』

□オンエア曲
Everywhere / Fleetwood Mac
As it was / Prep
I Saw the light / Todd Rundgren
Anxiety / Doechii
Third Man Theme / Band
夕焼け波止場 / 鈴木茂
Like him / Tyler The Creator