2023.07.01 ONAIR

今回のテーマは「遊動」

参考図書は原研哉さんの『低空飛行 この国のかたちへ』です。

「遊動」というのは辞書的な意味では「自由に動くこと」。
「遊動」の対義語は「定住」 になります。
農耕の発達以来、田畑とともに生きる安定した暮らしの形だった定住が、
通信技術と移動手段の進化によって揺らぎ始めています。

ここ数年で思いつくのは、コロナ禍によりリモートワークや
遠隔コミュニケーションが加速したことではないでしょうか。
家にいながら仕事ができるだけではなく、どこにいても仕事ができる・繋がれる、
という状況を生み出しました。
まさに世界は「遊動の時代」へと突入していると言えます。

この半世紀の間、国境を超えて移動する旅行者の数はうなぎ登りです。
1964年、最初の東京オリンピックの頃、国境を超えて移動する人の数は、
およそ1.2億人!
しかしコロナ禍前の2019年にはおよそ14億6000万人で、12倍も増えています。 2030年には、およそ18億人から20億人になると言われている「遊動の時代」。
人も、製品も、情報も、資金も国境を超えていきます。
しかし、そうやって世界がグローバル化していくほど、
実はローカル、その土地の固有性や文化・伝統の独自性が価値をもっていき、
「遊動」が進むほど、実はローカルの可能性が広がっていくと言われています。

遊動の時代、観光資源は重要な未来資源となるのですが、
現在、日本の観光政策はそれを活かせていると思えないところも…

日本では家は「不動産」といって動かないことが前提となっていますが、
遊動の時代には、不動産を所有して、一生かけてローンを払うような考え方は、
そぐわなくなります。

土地や建物を私有財産ではなく社会資本に切り替えるという発想の転換も
必要になるかもしれません。
不動産というより、住まいとしての機能を買う、あるいは借りるという考え方で、
流動性や自由度を高める方向に住宅のあり方をアップデートすることも
必要とも考えられます。

キーワード「遊動」について、 もっと知りたいという方は、
『低空飛行 この国のかたちへ』をぜひ読んでみて下さい。


■毎週、各界の著名人がこの図書館にふさわしい1冊を紹介して下さる
「BOOK SHARING」

シンガーソングライターのゆいにしおさんに
『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』をご紹介いただきました。


■図書館の膨大なCD・LPコレクションから他ではめったに聴くことのできない
レア音源を特別に試聴するコーナー「RARE COLLECTION」

今回は、竹内まりやが、1986年にリリースしたシングル
「恋の嵐」のカップリング曲、 [夜景]です。

70年代からシンガーとして活動していた竹内まりやさん。
彼女は山下達郎さんと結婚し音楽活動を一時休止していましたが、
その後出産を経て、 リリースした1984年のアルバム『ヴァラエティ』でカムバック!
このアルバムは空前の大ヒット&ロングセラーとなりました...

[夜景]は、その後マイペースながら順調に活動を続けていた彼女が
1986年にリリースしたシングル「恋の嵐」のカップリング B 面曲。
じつはこの曲、アルバム『ヴァラエティ』の時にレコーディング
されていたものの、何故かアルバムには収録されなかったという、
バラード・ナンバー。

のちの名曲「駅」や「シングル・アゲイン」を思わせるような切ない
ラブ・ソングですが、 まりやさん周りの業界人や熱心なファンの間で
この曲は人気が高く、 隠れた名曲として知られていましたが、
2007年のアルバム『デニム』の初回限定盤に 収録、初CD化されましたが、
こちらも現在は入手困難...

オリジナル・7インチ・シングルでお届けしました。


□今週の図書
原研哉『低空飛行 この国のかたちへ』
阿佐ヶ谷姉妹『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』

□オンエア曲
Swim / Papa’s Culture
I need you more than words can say / Sunrize
50ways to leave your lover / Paul Simon
Open a window / Rex Orange County feat.TYLER THE CREATOR
SUMMER TUNE / ゆいにしお
夜景 / 竹内まりや
Longing / Love / George Winston