
今回のテーマは「弱いつながり」
参考にするのは、1973 年にスタンフォード大学社会学部教授の
マーク・S・グラノヴェターが発表した『弱い紐帯の強さ』という論文です。
*こちらは日本語訳で30ページ程度の論文なので単独の書籍はなく、
野沢慎司さんが編・監訳の
『リーディングス・ネットワーク論』に収録されています。
この論文の中で、人々の社会的なつながりについて、
「強いつながり」と「弱いつながり」があるとしていますが...
・「強いつながり」を持つ人々とは、家族や親戚、親友、職場の上司や同僚など
・「弱いつながり」を持つ人々とは、友達の友達、たまたま何かの機会に知り合った人など
とされています。
グラノヴェターによれば、つながり(紐帯)の強さは、
ともに過ごす時間量、情緒的な強度、親密さ(秘密を打ち明け合うこと)、
助け合いの程度の4つの要素で定義できるとしています。
グラノヴェターの調査によると、
多くの人は人とのつながりで新しい仕事を見つけていて、
その時、「弱いつながり」をきっかけに仕事を見つけた人の方が、満足度が高いそうです。
つまり「弱いつながり」の方が成功するチャンスに繋がっている…?!
なぜ「弱いつながり」で見つけた新しい仕事の方が、満足度が高いのでしょうか。
それは、「強いつながり」を持つ人々は生活環境や価値観が似通っているため、
自分と同じ情報を持つことが多いからと言われています。
またその人の性格や能力をよく知っているので、その人でも思いつくような
転職先しか紹介してくれないということも考えられます。
しかし「弱いつながり」を持つ人は、その人のことをよく知らないがゆえに、
まったく未知の仕事を紹介してくれる可能性があります。
それで失敗する可能性もありますが、
自分でも気づいていない新たな適正を発見できる可能性もありそうです。
転職した人にとっては思い当たる節があるかもしれません。
「弱いつながり」は個人間だけではなく、グループやチームにとっても強さを持つ。
「強いつながり」をもつ集団は、外部と遮断され、新しい情報が入って来づらい。
今、「弱いつながり」が再び注目を集めているのは、
インターネットの普及、ソーシャルメディアの普及があるためです。
一般的には、ネットやSNSは「弱いつながり」の形成を促進していると
考えられています。
しかしネット上で形成された「弱いつながり」が、
オンラインを超えた 日常空間にどのような効果をもたらすかは、
まだ定かではないという 見解もあります。
また思想家の東浩紀さんは、
ネットはむしろ「強いつながり」を作るメディアだと論じています。確かに、同じ思考や価値観の人々が、「強いつながり」を持ち、
ネット上で力を奮っている様子はしばしば 見かける光景です。
「弱いつながり」によって、
これから思いがけない出会いや出来事が起こっていくかもしれません。
今日のキーワード「弱いつながり」について、
もっと深く考えてみたいという方は、
『リーディングス・ネットワーク論』という本に収録されている
マーク・S・グラノヴェターの『弱い紐帯の強さ』をぜひ読んでみて下さい。
■毎週、各界の著名人がこの図書館にふさわしい1冊を紹介して下さる
「BOOK SHARING」
リーガル・リリーのベーシスト・海さんに、
西加奈子さんの『夜が明ける』をご紹介いただきました。
■図書館の膨大なCD・LPコレクションから他ではめったに聴くことのできない
レア音源を特別に試聴するコーナー「RARE COLLECTION」
今回はUKロックの大物バンド、ピンク・フロイド。
彼らが1973年3月に発表したベストセラー・アルバム『狂気』。
その50周年記念エディションから「マネー」です。
アルバム『狂気』は、 1973年にリリースした、
ピンク・フロイド最大のベストセラーで、
全米アルバム・チャートでは発売後741週(!)に渡って
チャートに居座り続けるという ロングセラーで、
全世界でこれまでに5000万枚以上を売り上げるという超モンスター・ アルバム。
この曲「マネー」は、ぴインク・フロイドには珍しいシングル・カット曲。
レジスターやコインのSE音をループして構築されたもので、
テクノ・ポップのルーツとも言われています...
今回の50周年エディションは日本独自の企画として、
2021年のリマスター・ヴァージョンになっています。
□今週の図書
論文:マーク・S・グラノヴェター『弱い紐帯の強さ』
(『リーディングス・ネットワーク論』収録)
西加奈子『夜が明ける』
村上春樹『街とその不確かな壁』
鹿島 茂『ナポレオン フーシェ タレーラン 情念戦争1789−1815』
エリック・マコーマック,柴田元幸(訳)『雲』
□オンエア曲
What’s all this about? / Linda Lewis
Work it out / Breakwater
Opening up to you / Laura Allan
Florence / Matt Maltese
ハイキ / リーガルリリー
Money / Pink Floyd
Yard Sale / Ben Harper&Jack Johnson