2023.02.11 ONAIR

今回のテーマは「ナッジ」

参考図書はリチャード・セイラー、キャス・サンスティーンの
『NUGE 実践 行動経済学 完全版』です。

「ナッジ」の英語としての意味は、「注意を引くために肘で軽くつつく」です。
リチャード・セイラーとキャス・サンスティーンが提唱した「ナッジ」は、
「金銭的インセンティブや罰則を用いずに、相手の意思決定の癖を利用して、
行動変容を促すもの」だそうです。
なにやら小難しく聞こえますが、身近な場所にナッジは取り入れられているのです。

例えば…
ナイキは、講演会の際に、ゴミ箱の上にバスケのボードを取り付けたそうです。
そうすると、そこにいる人たちは、ゴミを投げてボードに当てて入れるのを楽しむようになり、
ゴミを散らかってしまうのを防いだという例があります。
ポイ捨てたら罰金、きちんと捨てたらお金を…
というような金銭的なことでは動かさず、人々を促しています。
他にも、スーパーやコンビニのレジ周辺の床の足跡も、元々ルールがあるわけではないですが、
「この足跡に沿って並べばいいんだな」と自然に伝わるようになっています。
こういう活動はもっとあって良いのではないでしょうか？

気付かぬうちにナッジされていることが他にもたくさんあると思いますが、
利点としては、コストが減ったり物事がスピーディーになったりするということがあります。

私たちが「ナッジ」を実践するために、
基本的な考え方やテクニックがあると参考図書には書かれています。
その１つは、「デフォルト」→選んで欲しい選択肢を最初から設定しておくということです。
例えば、臓器移植の意思選択について…
運転免許書の中に、臓器移植を「しません」というチェック項目しかない国、
「します」をという項目しかない国があるそうです！
これは、元々記載されている選択肢によって、
その人に意思決定もどうするか変わってくる傾向がみられます。

他にも、会員登録制度で「◎日間はトライアル期間で無料」
というキャンペーンなどは、その時はとてもお得に見られますが、
無料期間が終わっても、慣れた環境を変えるのが億劫になり、
自動継続に進む人が増えています。
変更をせず初期設定のまま使いたいという心理が
ビジネスでも用いられているとも言えるかもしれません。

考え方やテクニックのもう一つは「ソーシャル」
→社会的な行動だと意識させることです。

イギリス政府、納税率増加の実例として…
納税率の低さが問題視されていたイギリス政府。
税金滞納者に対し、「あなたの済む地域のほとんどの人は期限内に納税しています」
という主旨の手紙を送るようにしたところ、 納税率が68%から83%に増加したそうです。
そのように比較を提示されることによって、行動につながるという考え方もあります。


「ナッジ」の基本は、良い行動や良い選択に導くことではありますが、
それを悪用するケースもあります。
それを見極めていきながら、日常やビジネスに取り入れてみるのも面白いかもしれません。

キーワード「ナッジ」について、 もっといろいろ考えてみたいという方は、
『NUGE 実践 行動経済学 完全版』をぜひ読んでみてください。


■毎週、各界の著名人がこの図書館にふさわしい1冊を紹介して下さる 「BOOK SHARING」

ご登場いただいたのは、アーティスト、慶應義塾大学・准教授で、
現在は、人と AI のクリエイティブ領域における、
共創についての研究を続ける徳井直生さんです。

ホルヘ・ルイス・ボルヘス著『伝奇集〜バベルの図書館〜』をご紹介いただきました。


■図書館の膨大なCD・LPコレクションから他ではめったに聴くことのできない
レア音源を特別に試聴するコーナー「RARE COLLECTION」

今回は、桑田佳祐が、80年代に結成し活動していたバンド、KUWATA BANDです。
彼らのシングルのみでリリースした[ONE DAY]のカップリング・ナンバー
[ハヴ・ユー・エヴァー・シーン・ザ・レイン(雨を見たかい)]です。

サザンは活動休止状態で、桑田さんもまだ本格的なソロ活動をしていない
この時期に結成された KUWATA BAND。
「BAN BAN BAN」「スキップ・ビート」「メリー・クリスマス・イン・サマー」
など大ヒットを連発して、
アルバム『NIPPON NO ROCK BAND』もリリースしたのちに
1986年に出たシングルが、 この[ONE DAY]です。

そのカップリングに、桑田さんが敬愛する人気アメリカンバンド、
CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイバル)のヒットナンバー
[ハヴ・ユー・エヴァー・シーン・ザ・レイン(雨を見たかい)]の
カヴァー・ヴァージョンが収録されています。
当時の7インチ・アナログ・シングルからお送りしました。


□今週の図書
リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン
『NUGE 実践 行動経済学 完全版』
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集〜バベルの図書館〜』

□オンエア曲
Fairground / Simply Red
Bubbly / Colbie Caillat
Think Twice / Donald Byrd
Nothing to declare / Clowdberry Jam
That old feeling / Chet Baker
Have You Ever Seen The Rain / KUWATA BAND
I’m not the only one / Sam Smith