2022.07.23 ONAIR

■今回のテーマは「ネガティブ・ケイパビリティ」

参考図書は、帚木蓬生さんの
『ネガティブ・ケイパビリティ 答えのでない事態に耐える力』
著者の帚木蓬生さんは精神科医で小説家で、“ネガティブ・ケイパビリティ”に関して、
精神科医と小説家、2つの視点で解説している一冊になります。

“ネガティブ・ケイパビリティ”とは...
どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力で、
やり過ごす、そのままでいられる能力とも言えます。

私たちは「能力」というと、何かを成し遂げる力だと思っています。
しかし”ネガティブ・ケイパビリティ“はその裏返しの力ということになります。


以前取り上げた「逃走線」は、辛い時は逃げようという考え型でしたが、
これは真逆な気がしますよね。

「逃走線」の場合は悪い状況から抜け出そうとしますが、
今回の場合は良いか悪いかもどうにも答えが出せない状態と言えます。

この時、瞬発的に何かするのではなく、一旦待って考えてみるということが必要になります。

どうにもならないように見える問題も、持ちこたえていくうちに、
落ち着くところ に落ち着き、解決していくことも多いです。
しかし コロナの問題に象徴されるように、様々なシステムが複雑化した今日の社会では、
拙速に原因を求め、急いで対処 することが正しいとは言い切れません。
一度決断しても、「それが最善なのか」と、別の角度から見直してみる、
そんな勇気も必要かもしれません。


先週と今週の「RARE COLLECTION」で紹介したデザイナー
アンディー・ウォーホルはアーティストとして自分を
戦略的にスターにしていくことを考えた人物です。

彼にとってアーティストと成功する秘訣は、
「然るべき時に然るべき場所にいること」だそうです!
あるタイミングである場所にいることがすごく重要で、
企業戦略においても大事なことでしょう。

力ずくではなく、流れを見極めてタイミングを押さえて
良き場所にいれば高波になっていく、まさにサーフィンと一緒ですね。

耐えること、待つことを実践するのはなかなか難しいし、
瞬発的に考え動くこともその時は大事なことかもしれませんが、
長い目で見て、この能力を身につけることは大事な考え方かもしれません。


“ネガティブ・ケイパビリティ”についてもっと詳しく知りたい方は、
『ネガティブ・ケイパビリティ 答えのでない事態に耐える力』をぜひ読んでみてください。


■毎週、各界の著名人がこの図書館にふさわしい1冊を紹介して下さる 「BOOK SHARING」

KIRINJI の堀込高樹に、
中国系アメリカ人作家ケン・リュウさんが編纂した、
現代中国のSF小説のアンソロジー『折りたたみ北京』をご紹介いただきました。


■図書館の膨大なCD・LPコレクションから他ではめったに聴くことのできない
レア音源を特別に試聴するコーナー「RARE COLLECTION」

先週に引き続き、レア音源ではなく、レアなレコード・ジャケットを選んでみました。

1971 年にリリースされた、 ザ・ローリング・ストーンズの
アルバム『スティッキー・フィンガーズ』です。

63年のデビュー以来、ヴォーカルのミック・ジャガーとギターの
キース・リチャードを中心にして活動してきた
イギリスのロック・グループ、ローリング・ストーンズが、 新しく自分達のレーベルを設立し、
その第1弾としてリリースしたのが、このアルバム。

このアルバムのジャケットデザインも、
先週の『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』を手がけた
ポップアートの先駆者、アンディー・ウォーホルです。
本物の男性のジーンズ・ファスナーを使用していて上げ下げが実際にできるというもの。

ちなみにこのファスナージャケは、各国独自生産らしく、
日本盤は YKK 製だったというエピソードも!

今日は英国オリジナル盤で「Brown Sugar」お届けしました。


□今週の図書
帚木蓬生 『ネガティブ・ケイパビリティ 答えのでない事態に耐える力』
ケン・リュウ編纂アンソロジー『折りたたみ北京』
中井由梨子『20歳のソウル』
トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』

□オンエア曲
I’m like a bird / Nelly Furtado
Love is stronger than pride (Mad Professor Remix)/ Sade
A Lifetime Lovin You / The Innocence
Anything Goes / Tony Bennett&Lady Gaga
Rainy Runway / KIRINJI
Stay / Severin Browne
Brown Sugar / The Rolling Stones
Hear my dear / Tedeschi Trucks Band