RADIO SAKAMOTO

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ARCHIVE:170903

「坂本龍一です。二ヶ月に一度お届けしているレディオ・サカモト。あっという間のね、2ヶ月だったんですけど。僕はね、この2ヶ月は映画音楽をやってたんですよ。韓国映画で、歴史ものなんですけど。終わったばっかりなんです、まだ。だけど韓国では、もう9月の終わりの方でこれが公開されちゃうんですよ。まだタイトルとか詳しいことが言えないんですけど、ギリギリまで。8月に僕は音楽終わってるのに、もう9月に公開しちゃうって、すごいなぁ、早さが。今回は久しぶりに東京のJ-WAVEのスタジオからお届けしています。ここに来るのも久しぶりだなぁ、本当に。今年も……え!今年もあと4ヶ月!?ついこないだ正月だったと思うのにねぇ、早いなぁ。僕の親しい人がですね、「正月になったら、あぁ今年ももう終わりだなぁって思う」って、それどういうこと(笑)でも、まぁ、本当に早いですよね。あっという間と言えば、SIAF:札幌国際芸術祭ね。これがあの、3年なんですよね。先日オープニングが行われて。僕はその3年前の、1回目のディレクターということだったんですけど、その時に病気が発覚して、とうとうそのSIAFは見れず仕舞いで終わってしまいました。 ねぇ、今回は、2回目のSIAFは大友良英くんがディレクターで、1回目とはまたガラリと変わった芸術祭になっているそうですけども。まあ楽しみなんですけども。ねぇ、大友くんにも激励のメールもしましたし。去年だったかな、ニューヨークで公演があったときに会って、何時間でも愚痴は聞くよ。何でも言ってくれていいよ(笑)って……あの人お酒飲まないんですけど、2人でご飯食べてゆっくり思いの丈を聞いてあげましたけども、大変ですよ、こういうフェスティバルのディレクターなんてのは。いろいろストレスも多くて、悩みも多くてですね、大変なんですけども。でも今回、大友くんは、自分でも非常に満足のいく内容の芸術祭になったと太鼓判を押していたので、とても期待しているんですけども。今回あの僕は、晴れて……晴れてって言うのかな?観に行きます。観に行くだけではなくて、アーティストの毛利悠子さんの作品の一部となってパフォーマンスもするんですけども。ま、この放送のこの日にはもう観ていることになってはいるんですけど、今の時点ではまだ観ていません。えー、でね、その模様は今回、別の枠でちゃんとお届けしますので、楽しみに聴いてください。そのSIAFは10月1日まで行われますので、ぜひ皆さん、ね……そうでなくても札幌はとてもいい街で、僕もいつでも行きたいと思っているくらいなんですけども。」


<デジタルガレージ ファーストペンギンアワード 2017 受賞>

「ここでね、ちょっと近況報告なんですけど……ファーストペンギンアワード……ファーストペンギン賞……一番のペンギン賞という賞ですね。よく分かんないんですけど、頂いたんですよ、ほんとに有り難いことに。多分、そのペンギンというのは、群れがいますよね。で、なんかその、海に入る必要があるときに、最初に勇気のあるやつが飛び込むと、後でみんな付いて行くということなんだと思うんです。じゃないかなぁ。それ以外に考えられないよね(笑)、こういうネーミングを付けるってのはね。僕が、そのファーストペンギンということで、有り難い賞を頂いたんですけど……じゃ、メッセージを聴いて頂きましょうかね。僕が言うのも烏滸がましいので、デジタルガレージという日本のインターネットの曙をこじ開けた会社と言ってもいいんですけども、僕は20年以上前から知っているんですけども。そのデジタルガレージのCEOの林 郁さんと、それから同じくデジタルガレージの取締役で、今はあのMITメディアラボの所長になった伊藤穰一さんからメッセージを頂いてますので、どうかお聴きください。」

「伊藤穰一です。MITメディアラボの所長と、デジタルガレージの共同創業者です。」
「林 郁です。デジタルガレージのグループCEOと、共同創業者です。」
「まぁ、あのー、いちばん最初に飛び込むペンギン……まず危機があるんで、勇気が必要だし、ビジョンも必要だし、そしてやっぱり先駆けて走りになってるというのがとても重要で、坂本さんは本当にもう昔のテクノ時代から、ずーっと今になっても、どんどん先のものをやっていってるってことと、あとは、思ったことをきちっと言って、そしてその権威に従わないで、自分のクリエイティビティとあと社会運動も、とても勇気を持って行動してきたので、そういう意味では本当にファーストペンギンなんじゃないかなって気がします。」
「あの賞自体の定義をもう一回ちゃんと差し上げた方がいいと思うんですけど、基本的に世界を舞台にして活躍している日本人の方で、かつ後進の育成も一緒にやられている方ということで、そういうコンセプトの賞です。」
「やっぱり日本……さっきのファーストペンギンじゃないけど一つ氷山みたいなもんで、結構みんな混んでる中で、飛び込んで外に出ていけば、いろんな社会に対して、世界に対して、貢献できる文化だとか知恵をたくさん持っているのに、適当な大きさなんで、日本だけの中でビジネスしたり、日本でずっと生活しても、なんとなく収まってたことがずっとあったんですけども、やっぱり高齢化社会と人口も減っていっているし、そして技術によって世界はもう全部繋がっていってるんで、昔から『インターナショナル』って言葉はあったんだけれども、本当にグローバルになる日本を支えていく企業だとかリーダーは必要で、放っとくと今、どんどん閉鎖的になっていっちゃう可能性があるので、その流れの逆に。」
「最近ちょっと気になるのが、優秀な大学を出ても海外にあまり行きたくならないっていう傾向が如実に出ていて、昔だと海外で日本人に会ったり、例えばスイスに行っても日本人の人がいたのが、だんだん日本人の数が減ってきているような。ゲームをやって、近所のコンビニで皆で群れて楽しく遊んでいる若者が増えちゃってるんで、もっとなんて言うんですかこう、型破りな、あんまり型にはまんないで、自分で自分のことを考えていくような人たちを作っていって、そういう人たちがリーダーにどんどんなっていくような社会になんないと、そういうエコシステムは出来ないんじゃないかっていう。リーダーが一人素晴らしい人がポンと出てきて、世の中がパッと変わるのであればすごい簡単なんですけど、そうじゃなくて教育システムとか、そこに関わる人達とか、あとメディアに対するリスペクトとか、そういうことがだんだん、少しずつ日本て、前よりも劣化してるとは言わないけど、同じ形になってきちゃってるような気がするので、リーダー一人というよりも、そういう環境を作るのが大切なんじゃないかなと思うんですよね。」
「坂本さんは、やっぱり文化をデザインして、そしてみんなの心を変える力を持っていると思っていて、そしてかっこよく、人が馴染みやすい形で、難しいアイディア……『教授』てあだ名がついてるぐらいなんで、これからやっぱり環境問題だとか世界平和とか、結構いろんなところで、今危機に向かっているところで、やっぱり坂本さんがそれを世界のみんなに、美学と日本的な文化をちゃんと伝えるリーダーというか、コラボレーションもいろいろあると思うんだけど、そういう未来の文化を作ってもらう事をとっても期待しているので、頑張って欲しいなと。」

「……という訳でね、かなり照れくさいんですけども、この賞をくれるっていうことを、ジョーイ (伊藤穰一さんのことを僕たちはジョーイジョーイって呼んでるんですけど) からメールをもらった時に、『なんで?なんで僕なの?』って聞いたら、『それは君が坂本龍一だからだよ』っていう返事だったんですけど。……ウケないですね……はい、ありがとうございました。」

そして今回のレディオ・サカモトでは、数年前に教授がデジタルガレージの為に頼まれて作ったという、一般公開されてはいない楽曲「Kotohogi」をオンエアしました。

■Digital Garage(デジタルガレージ) | First Penguin Award

http://www.garage.co.jp/ja/fpa/

<札幌国際芸術祭。対談:坂本龍一×大友良英>

「そしてもう一つ、最初にも言いましたけども、現在、札幌国際芸術祭2017が行わていますよね。今回は大友良英くんがディレクターで、1回目とはまたガラリと変わった芸術祭になっているそうですけども、僕も楽しみなんですけど。僕がアーティストの毛利悠子さんの作品の一部となってパフォーマンスもするんですけども、(番組収録の後日に行った) その様子を聴いてみましょうね。」


<今回の芸術祭のテーマ「芸術祭ってなんだ?」に込めた思い>

「札幌のモエレ沼公園に来たんですけど、えー……実は僕、初SIAFなんですよ。SIAFっていうのは、札幌国際芸術祭なんですけども。これは3年毎に行われるということで、皆さん覚えているかもしれませんけど、3年前は僕がディレクターだったんですけれども、病気になってしまって来れなかったというね。だからもう、今回、生まれて初めてSIAFを経験して、とてもお客さんとして見て歩いてて、とても楽しいんですけど、で、今回の2017年のSIAFのディレクターの大友良英さんが隣に座っております。」

「どうも。よろしくお願いします。」
「本当にご苦労様です。」
「いえいえ、でも、なんか、本当に嬉しいです。」
「事前に聴いていた予想よりも、内容がすごく濃くて、たくさんいろいろ見るものがあって、実は驚いているんですけど。」
「なんか、増えちゃったんですよね。」
「大変だったでしょうね。」
「最初、多分まだ、本当に企画の最初の頃の段階で、僕、ニューヨークに行って坂本さんにお会いして、いろいろ愚痴こぼしたりしている時に、こんなに増えるつもりがない……小じんまりって思ってたんですけど、悪い癖ですね(笑) ……どんどん広がっちゃって、呼んだアーティストがこの人もこの持ってひとも言うんで、僕が呼んだ人っていうのは全体の中の多分2割くらいなんですけど、どんどん広がって……で、面白いからいっか!って感じになっちゃって。」
「いいんじゃないですかね。あの、即興的な感じがあって。」
「あの……なんだろうな。まだ、アートと音楽の境界にあるような、まだ何者ともつかないようなものとかも、なるべくいっぱい入れてったりなんで、逆に従来アートの世界でやっていきたいという野心を持っている方のものが少なめになっちゃったから、そういう人達から見るとなんだよって思われてるかもですね。」
「いわゆる昔の王道のアートは少ないんですね。」
「少なめなんですけど、王道のアートが出る芸術祭はいっぱい他にあるので(笑)、だから、ごめんなさいって。別に王道のアートが嫌いな訳じゃないんですけど、せっかく坂本さんがやって俺がやってって、2代音楽家が続くの、珍しいので。」
「めずらしいね。それは意図したものなのかな、偶然ということはないか。で、まさにその芸術祭ってなんだっていうテーマでね(笑)」
「ほんとに、話がきた時に、まさか来るとは本気で思ってなかったから……いやいや、そもそも芸術祭って何だろうっていうところから考え出さないと出来ないなって思って。特に僕は美術から来た訳じゃないので、やっぱ、最初やるとき思ったけど、芸術祭って基本的には美術の人が作ってった歴史があるので、すごく僕らとはいろんなマナーとかやり方も全然違う。結構びっくりしますよね。」
「全然違いますよね。僕も本当に知らなかったんで、いやいや、しますよ。」
大友「『あぁ美術ってこうなんだ』っていう。だからそれは、別に批判とかでも何でもなく、やっぱり違うところから来るので。でもさっきも言ったけど、音楽家が2代続く意味ってやっぱりあると思うので、芸術って別に美術だけじゃないじゃないですか。」
「ね。パフォーマンスもね。映画もね。」
「だけど、美術の側の人が音楽とかをやったりしているのが芸術祭だったのが、音楽の側の人が音楽の視点で、美術も取り上げて行くっていう風な芸術祭に、きっとなっていくんだろうな。そういう事をやるべきだろうなって思ったのが一つあるのと。」
「ま、自分でやるからには、そうすべきですよね。」
「そうそうそう、それしか出来ないですからね。あと同時に、芸術祭ってそもそもなんだ?って考えたときに、ずっと考えてたんですけど、2ヶ月くらい。これ、みんなに聞いた方が面白いやって。」
「なるほど。」
「で、聞くとみんな答えてくれるから。答えた段階で、あ、言いましたね?言ったからには責任取ってくださいね……っていう巻き込み方をしちゃったかな(笑)。で、やっぱり一人で考えるのより、答えがいっぱい出てくるから、で、もちろん最終的には僕が判断して、この方向としていくんだけど、そのプロセスでいろんな話が出て来るのが面白くて、だからなんか、ちょっと禁じ手みたいなテーマですけど、『芸術祭ってなんだ?』って聞いちゃえって。」
「メタ芸術祭って。」
「巻き込む意味がありますかね。あとやっぱり、美術の外側の人間だからこそといえるところもあって、でも他の芸術祭を批判してるんじゃないかと思われて、随分いろいろ、僕から批判の言葉を引き出そうとするインタビューも受けたんですけど、でもね、僕なんだかんだ言っても、やんないよりやった方がいいと思っているんです。例えダメな芸術祭だったとしてもね。で、町おこし芸術祭でうまくいっているところもあるし、それはそれで悪くないと思っているんだけど……新しいですからね、日本で芸術祭をやるっていうのは。だからそれがそうやって、試行錯誤しながら練れて行けばいいかなって。」
「淘汰もされていくだろうし。やっぱり最終的に残るとしたら、もちろん、その作品の内容もあるけども、その町の人たち……もちろん市役所のお役人も含めて、でも、関わってくれる、あるいはそれを喜んでくれる、伝えてくれる、市民の力ってのかな。そこが一番大事なような気がするんだよな。」
「いや、そうだと思います。他人事じゃなくて自分たちにとって何かっていうものにしていかなきゃと思ってて、それがうまくいっているかどうか分かんないですけど。」
「それはでも、時間かかりますよ。10年、20年かかることなので。」
「かかるよね、うん。そんなにすぐに答えが出るもんではないと思ってて。だからそういう目線で、坂本さんが1回目で始まったとして、僕、2回目なんで、そこでベクトルというか、点が今2つになったんで、直線が引けると思うんですよ、方向が。次、誰がやるか分からないですけど。そうすると平面になって、その次にやる人がいると、点が4つになったら立体になるなぁ、とかっていう、そのくらいの長いスパンで、ゆっくり。」
「そう思いますよね。3×4=12……10年越えたくらいやり続けて、初めて市民が支えてくれるというか、根付いていくという感じですよね。僕もそう思います。」
「だからその中の、2つ目の僕は意思なので、そんな気持ちですかね。」


<ジョン・ケージの先にあるもの>

「もう1つ。それで思い出したけど。前回も出て、今回も出ているアーティストが毛利悠子。一人だけ?」
「そうそうそう。はっきりと継続と意識したのは、毛利さん、なんです。それは2つ理由があって、ま、一つは坂本さんも毛利さんいいと思ってて、俺も毛利さんいいと思ってるっていう、純粋に作品のあれなんですけど、前回ね、毛利さんが、最初自分がやる場所が、自分の作品には合わないと思って、自分で場所を探して移動したって話を聞いていて、これだ!って思ったんです。だから、毛利さんには今回も、自分で場所を探してっていうのをお願いして、他にも梅田哲也さん、堀尾寛太さんに、もう2年前から来ていいから、自分の作品がやれる場所を自分で探してっていう、結構無茶ぶりを。」
「いいですね、それ。」
「でも、それをやると札幌の人たちと話し合いながら見つけていくから、それがいいなって思って、だからいヒントになっているんですそれが。」
「面白いですね。」
「で、毛利さん、実際に俺すごい傑作だと思うんですけどね、凄い作品を……」
「僕はそれは明日観るんで、楽しみなんですけど……明日見るだけじゃなく、実は僕、明日は作品の一部になって、ピアノを弾くことになってるんですけど。」
「そうですよね。毛利さん自身が実際仕込んだピアノには、坂本さんの演奏が自動で演奏されてるんですけど、僕あれ、音楽の歴史から見ても、ものすごいものだと思うし、美術の展示の歴史から見ても、本当に歴史に残るような、将来、教科書に載ってもいいような……これ褒め言葉になるのかな、分かんないけど、そのくらいすごい作品……」
「日本のアート史に残る作品……」
「と思いますよ。だから、誰かちゃんと批評家の人が、俺がただすげぇって言ってると、すげぇって言ってるだけになっちゃうから、ちゃんとこの作品の意味を書ける人が出てくれば。で、しかも毛利さんが北海道でこの2年間、何してきたかっていうのをそれを観るとちゃんと分かるようになっていて。」
「素晴らしい。楽しみだなぁ。」
「ピアノって面白いですねえ。」
「結構あれは、いろんな音が出る……余地のある、ものであったり、そこは面白いと思います。だから、ジョン・ケージがいろいろやったけど、まだやりきってない……ところがあるような気がしますね。」
「なんか凄い生意気なこと言っちゃうと、ジョン・ケージさん素晴らしいですが、もっともっとあんな理屈っぽいのより、もっと先があるような気がしてて。」
「まだある……と思いますね。」
「まだあります。そのピアノが朽ちてくとか、自然にね、調律が狂っていくのも含めて、錆びるとか。毛利さん、そこらへん、ちゃんと分かっているかどうか知らないけど、ちゃんとやっているから。すごいですよ。坂本さんの演奏が……あ、でもこれやっぱ、明日観てからの方がいいや。あんま言わない方がいい。」
「そうですね。もう超楽しみですね。」
「本当すごい、感動しました。」
「だけど、今日はここのモエレ沼のピラミッドの中のいろんな作品を観せてもらったんですけど、大友くんのもそうですし、明日はあちこち札幌の中を駆け巡ってね、観て歩きたい……楽しみです。でも本当にご苦労さまとしか言いようがない、もう本当に……」
「いやいや、なんか、自分がこんな芸術祭だったら楽しいだろうなって思ったことの全部がやれた訳じゃないですけど、かなりが出来たので。そこに坂本さんが来てくれて、しかも前回来れなくて、初めてだっていうのが、とても嬉しいです。すごい嬉しいです。」
「感動的です。いやぁ、楽しみだな。」

■︎札幌国際芸術祭 – SAPPORO INTERNATIONAL ART FESTIVAL

http://siaf.jp

<「デモテープ・オーディション」坂本龍一×U-zhaan×長嶋りかこ>

U-zhaan「J-WAVE レディオ・サカモト。ここからは、僕、U-zhaanと」
長嶋「長嶋りかこ、そして」
坂本「……え?ここはどこかな。これは何かな。マイクかな……もうすっかり忘れちゃって(笑)」
U-zhaan「(笑) 教授がいらっしゃって嬉しいですよね。」
長嶋「(笑) 嬉しいですねぇ。」
坂本「いや、もう置いてきぼりですよ。」
U-zhaan「こんなにタイムラグなく話せるのがすごい幸せですよ。」
坂本「Skype越しじゃない僕っていうのは、久しぶりじゃない?」
U-zhaan「久しぶりじゃないですよ、全然。この間ニューヨークでお会いしたばっかりです。」
坂本「じゃないか!そうなんだ。」
U-zhaan「そうなんだって……ご馳走様でした。」
坂本「ありがとうございます、本当に。」
U-zhaan「ニューヨークであの……蓮沼と一緒に。」
長嶋「そうだね。」
U-zhaan「教授はあの、札幌芸術祭に行ってきた、と。」
坂本「これを録音している今はまだ行ってないんですよ、実は(笑)」
U-zhaan「この週末に行くことになってるんですよね。長嶋さんも行くんですよね。」
長嶋「はい、伺います。楽しみです。」
坂本「あの、毛利悠子が作品を出していて。悠子がって呼び捨てにすることないか、悠子さんが。彼女が多分ただ一人、3年前のSIAFと今年と、両方作品を出しているアーティストなんだそうです。」
U-zhaan「そうなんですね。」
坂本「で、今回は僕が、毛利悠子が作った作品の一部になって、まぁパフォーマンスをしてくる、というものです。」
U-zhaan「うーん。作品の一部になって……じゃあ、その作品の中に組み込まれたような場所に、楽器が用意されてるってことなんですか。それとも……」
坂本「もともとピアノを使った作品なんですよ。」
U-zhaan「あ、そうなんですか。長嶋さん、最近何してましたか?」
長嶋「え、最近ですか。あの、あれですね。それこそ、坂本さんの映画……いいのかな、言って。」
坂本「そうだ。『CODA』。」
長嶋「はい、『Ryuichi Sakamoto:CODA』っていうドキュメンタリーの映画がありまして、それの宣伝のグラフィックとかいろいろやってました。」
坂本「全部やってもらったやつだ。」
長嶋「さっきまで……」
坂本「あら!ありがとうございます、本当に。なんか……本も出るんでしょ?」
長嶋「あぁ、そうですそうです。ね、坂本さんの。すごいですよその本。」
U-zhaan「あ、教授の本が出る?」
坂本「らしい。」
U-zhaan「らしいって(笑)、関わってないんですか(笑)」
坂本「関わってないもん。」
長嶋「他人事(笑)」
坂本「全部、編集とかデザインとか、もうお任せしてる。」
U-zhaan「あ、長嶋さんが教授の本を作ってるんですね。」
坂本「そうそうそうそう。」
長嶋「いや、あの、編集はもちろんね、たくさんいらっしゃいますけど、デザインの方をやっているんですけど、すごいですよ。でかい辞書みたいな。」
U-zhaan「とりあえず、サイズがすごいと、何しろ。」
坂本「そうですね。見た目がすごいですよ。見た目勝負だから。」
長嶋「(笑) たくさん詰まっています。」
坂本「内容は後から。」
U-zhaan「内容は、今までの教授のWORKSとかを?」
長嶋「WORKSというか……もちろんWORKSも入ってくるとは思うんですけど、話の中で。でも坂本さん、引き出したくさんじゃないですか。坂本さんの会話聞いてると、あ、今の単語分かんなかった!みたいな事ってあるじゃないですか。」
U-zhaan「うんうん。」
長嶋「それが、もうその一冊があれば、坂本さんの言葉が全部分かるぐらい(笑)」
U-zhaan「その一冊を読み込めば、これから知ったかぶりをしないで済むようになる。」
坂本「(無視して) じゃ、始めましょうか。」
U-zhaan&長嶋「(笑)」
U-zhaan「そうですね。もう本当に今回、曲多かったですよね。」
坂本「どれが面白かった?」
U-zhaan&長嶋「うーん……」
坂本「やっぱりさ……」
坂本&長嶋「シャッター。」
U-zhaan「そうですよね。」
坂本「インパクトは、シャッター (jack19998「ステキな音で閉まるシャッター@岡山表町商店街」) と鍾乳洞だけど両方ともね、フィールドレコーディングだよね。まぁ、鍾乳洞の方 (松本一哉「落ちる散る満ちる」) はね、一種、自然を利用した作品……だと思いますけどね。」
U-zhaan「あと僕は、安田健児さんの『茶の間』という作品も好きでした。はい、あのナイロン弦のギターで、スチールパンと。」
長嶋「優しいやつ。」
坂本「独特のなんていうのかな……空間的美意識はあるよね。ああいう、フォークっぽい曲なのに、そういうものを感じられるという。面白いですね。」

■Facebook : 映画『Ryuichi Sakamoto:CODA』

https://www.facebook.com/ryuichisakamoto.coda/

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詳しくは、エントリーフォーム内の応募要項をお読みください。

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<坂本龍一 「この2ヶ月で聴いた曲から紹介」プレイリスト>

「ここからは、僕がまぁ本当に、毎日、普段聴いている音楽をご紹介する〈プレイリスト〉ですけども、えーと、何からいこうかなーっと思ってね、この2ヶ月ぐらいによく聴いていた曲を、もうランダムに挙げていきますね。最初はね、クラシックの曲ですけども、イタリア人のドメニコ・スカルラッティという人がいるんですよ、作曲家が。の、『Sonata in B Minor』ロ短調のソナタの『K. 87』という曲なんですけれども、亡くなったすごいピアニスト……ウラディミール・ホロヴィッツという人がいるんですけども、その人の演奏で、この録音も別に悪くないんですけど、あの……YouTubeに、もっと多分この人の、随分長生きしたおじいちゃんだった人なんですけど、この録音よりもっと後に弾いている映像がYouTubeにあって、そっちの方がすごいです、演奏は。でもそれは盤になっていないので、今日はこの盤になっているものを聴いて頂きますね。ぜひ、ちょっとYouTubeで見つけて聴いてみてください。」

  • Sonata in B Minor, K. 87 / Vladimir Horowitz

「はい、次ですけどね。アイスランドの女性のチェリスト。ヒルダー・グドゥナドティエルっていう人で「Elevation」という曲です。ヒルダーはね、僕が2年前でしたっけ……『The Revenant (レヴェナント:蘇えりし者)』という映画の音楽を作ったときに、随分弾いてもらったんですよ。それ以来の仲なんですけど。デヴィッド・シルヴィアンとも一緒にやったりとか、ヨハン・ヨハンソンとかね。アイスランドには、たくさん素晴らしい音楽家がいますけども、その中でも特にチェロを非常に自由に使った、まあ即興的な曲が多いんですけども、いろんな人に自分の音楽を提供している人で、才能溢れる人ですね。」

  • Elevation / Hildur Guðnadóttir

「これ、全部チェロの多重録音で、全部一人で作ってる感じですね。はい、次ですけど、もう本当に、ジャンルがまちまちで飛んでいきますけど、次はね……姉さんですよ姉さん。ビョーク姉さんね。ビョークなんですけど、ターニャ・タガックという女性と一緒にやっている曲でね。ターニャっていうのは、カナダの先住民のイヌイットの女性で、イヌイットの伝統的な歌い方……喉を鳴らすというようなね、歌い方があるんですけど、スロート・シンギングという喉の歌い方……喉歌唱っていうんですかね、それをやるので有名なんですけど。伝統的な音楽から始まって、だけどビョークと一緒にやったりとか、クラシックのクロノス・クァルテットと一緒にやったりとかですね、とても実験的なオリジナルな活動をしている女性で、面白いですよ。」

  • Ancestors / Björk

「えーとね、このカナダの先住民、イヌイットのターニャの曲をもう1曲、聴いてみてください。」

  • Erie Changys (feat. Radio Tyulyush and Michael Red) / Tanya Tagaq

「えっと、これはそのカナダのターニャが、ユーラシア大陸側の……やはり先住民、アルタイ山脈の側のトゥーヴァというモンゴルの隣だったかな、近くのトゥーヴァという国があるんですけど、モンゴルのホーミーっていうのは有名ですよね。で、同じような、似たようなやはり喉を鳴らすような歌い方がトゥーヴァという国にもあって、そこのラディック・トュリューシュという人と一緒にやっている曲ですね。だから、大陸を越えた先住民同士のコラボレーションということで、とても面白いなと思うんですけど。」

「はい、全然変わりまして、19世紀のヨーロッパの音楽に飛んで終わりましょうかね。僕はね、今まであんまり馴染みがなかったんですけど、ちょっと調べ物があって、19世紀ロマン派の音楽を調べていて、いろいろロマン派の特徴あると思うんですけど、一つはやっぱり、シューベルトとかシューマンみたいな有名な作曲家が、たっくさん歌曲を書いた。ピアノ伴奏の歌曲を書いた。で、その流れで、もう一人、もっとシューマンよりも後の人で、ヒューゴ・ウォウフという重要な作曲家がいるということでですね、今回たくさん彼の曲を聴いたんですけども、ま、素晴らしい歌曲がたくさんあります。その中でも、彼の中でも有名な歌曲で……ゲーテの詩に基づいた、一連の作品があるんですけど、『Goethe-Lieder』というんですけど、その中から聴いてみましょう。もう亡くなった、20世紀を代表するドイツのソプラノのシンガー、エリザベス・シュヴァルツコフという素晴らしい歌手がいて、彼女が、一連のこのウォウフの録音をしています。ジェラルド・ムーアという、シュヴァルツコフとは名コンビであったピアニストが伴奏をしています。」

  • Goethe-Lieder : Mignon I / Elisabeth Schwarzkopf & Gerald Moore

<『エコレポート』── エコロジーオンライン 上岡 裕>

「レディオ・サカモト。ここからはエコロジーオンラインの上岡裕がお届けします。この夏、エコロジーオンラインは葛西臨海公園で行われた『WORLD HAPPINESS 2017』に、二度目の参加をさせていただきました。広島に原爆が投下された8月6日の日、原爆の日です。キュレーターを務めた高橋幸宏さんといとうせいこうさんの呼びかけでライブは黙とうからスタート。広島の原爆を市民目線で淡々と描いたアニメ作品「この世界の片隅に」のテーマ曲「悲しくてやりきれない」を歌ったコトリンゴと、のんの歌声は心にしみました。今回のWORLD HAPPINESSでは、新たな会場探しにも協力し、熊本支援に活用したソーラーパワートラックがサブステージとして活用される予定でした。残念ながら、安全上の問題から今回は見送りになりましたが、その代わりに環境省と一緒にブースの方で参加をさせていただきました。環境省は現在、『都市鉱山から作る!みんなのメダルプロジェクト』を推進しています。市民から回収したスマホや携帯電話などの小型家電から希少金属を回収して、オリンピックのメダルをつくろうというのです。その回収キャンペーンを、WORLD HAPPINESSで手がけ、かなりの数の携帯、スマホが集まりました。エコロジーオンラインも、音楽を通して高齢のみなさんをケアをする活動を始めました。そして、iPodの寄付を呼びかけています。Music & Memoryというアメリカで始まった活動なんですが、認知症になった方が好きだった曲をiPodに入れて聴かせてあげるというシンプルな活動です。音楽を聴くだけで昔の記憶がよみがえったり、薬の量が減らせたり、問題行動を減らせる効果があるようなのです。寄付をしていただいたiPodも、使えるものはMusic & Memoryの活動に活用し、使えないものはオリンピックのメダルの原料として有効活用してもらおうと思っています。この秋からは、日本初となるMusic & Memoryのパイロット事業を手がけます。知り合いの医療法人が経営する施設で、3ヶ月ほどチャレンジ。その結果を踏まえて日本での活動を形づくっていきます。僕らの呼びかけをきっかけに、音楽による認知症ケアが広がりを見せ初め、敬老の日のラジオ特番が決まり、一緒に活動したいというドクターも現れてきました。認知症を患っていなくても、家族が集まって、おじいちゃん、おばあちゃんが好きだった曲を一緒に聴く……それだけでも脳の活性化につながります。そのうえ、楽器の演奏をすると認知症になりづらいということもわかってきました。この活動のきっかけとなったのは、坂本さん達が手がけた、『健康音楽』というイベントだった訳ですが、ピアノを弾き、曲を作る坂本さんは、認知症から遠い存在かもしれませんね。この活動についてはまたご報告させていただきます。エコロジーオンライン上岡裕でした。」

■WORLD HAPPINESS 2017
http://www.world-happiness.com/

■エコロジーオンライン
http://www.eco-online.org