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列車とは不思議なもので、連帯感が生まれるんです。

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PROFILE
 
 
 狩野喜彦 - 映像ディレクター -
1952年静岡市生まれ。1975年(株)テレビマンユニオン・コマーシャル(後のテレコム・ジャパン)入社。テレビ番組、ラジオ番組、コマーシャル、ビデオ・ソフトの企画、演出に携わる。87年(株)テレコム・ジャパン退社。フリーランスの演出家として活動を始める。同年よりスタートした現在も放送中の長寿番組「世界の車窓から」の第1回を担当。現在もこの番組のほか、テレビ、ラジオなどの製作を通して世界各地へ出かけている。また最近は写真家やエッセイストとしても積極的に活動を展開。写真集『Adiew〜記憶のなかの異郷〜』、写真エッセイ集『星の王子さまへの旅』などを発表している。

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初めは女性のモデルを使ってみたんです。(狩野)
世界中にはいろんな人がいるという事を、短い時間ですごく学べる。(葉加瀬)

狩野さんは、あの有名なテレビ番組『世界の車窓から』の、何と第1回目から関わっていらっしゃるんですね。あの番組はもう何年続いているんですか? 僕の記憶にインプットされてからの方が、長いような気がするんですけど(笑)

1987年の6月からなので、この間の6月で16年になって、現在17年目に入ったところですね。

そうですか。一番初めの放送は何処だったんですか?

イギリスですね。イングランドとスコットランド。

やはりこれは“鉄道発祥の地”という事ですか?

そうですね。1825年にもう鉄道が開通したという歴史があるんで。

この時の気分とか記憶に残っている事とかありますか?

「どんな物を撮ればいいのか」とかも全く無かったわけで。それでとりあえず“列車を撮る・列車に乗る”(笑)。

アハハハ(笑)

「とりあえずその辺を細かく撮れば、何とかなれるんではないか」みたいな事で。切符売り場で切符を買う手だけとか、時刻表を見てみたいな事から細かく撮っていったりしていって。その頃は番組も、どういう方向がいいかというのが見えてなかったんでね。乗客達も「どう撮ればいいかな?」という風に思っていて。最初の時は女性モデルを一人雇ったんです(笑)。

そうか! 演出をして…。

そうそう。イメージ的に撮ったりもしたんですよ(笑)。帰って来て編集したら、何かちょっとシラけるなという感じでやめちゃいましたけど。

なるほど、いろんな試行錯誤があったわけだ。一番初めは“綺麗な女の人を入れてとりあえず風景と合わせて撮ってみて…”という番組になるのかなと。でも撮ってみたら、普通に列車に乗って旅をされている方々を撮った方が、画になったんだね。

そうですね。やっているうちに乗っている人達を見ていれば、みんな味があったりとかして。国民性とかもありますし、これは素直にやった方がいいのかなという事ですね。

そうですよね。僕らは番組を見ていて、もちろん車窓からの風景で、「こんな所に行ってみたいな」とかも、もちろん感じるんですが。それより大きな要素として、乗っている人達の表情とか、人っていろんな顔があるんだとかね(笑)

はい。

世界中にはいろんな人がいるという事を、あの短い時間ですごく学べるんですよね。その気分が伝わって来る。何か自分も、その列車に乗っているような気分になれるんですよね。

そうですね。多分、観ている人なんかは疑似体験と言うか。もし自分が外国で列車に乗って旅をした事がある経験があったりすれば、その時の事を思い出して、自分も乗っているような気分になれるし。乗ってない人は、例えば高級レストランや美術館が出て来たりしても、自分で旅に行くとすると結構大変かもしれない。でも、列車だったら気楽に乗れるかなみたいな事で。割といいんじゃないかと思います。

なるほど。本当におっしゃるとおり。あの番組を見て旅に行きたいなと思って、実際にその国へ行かれてる方も多いと思いますよ。

そうですね。これだけ長く続いていると(笑)、「小学生の頃、見てました」とか、「中学生の頃に見てました」なんて人が、もう大人になっていたりしてますからね。

そうでしょうね。



列車に乗っていると大抵はお客さんと仲良くなります。(狩野)
“運命を一緒にしちゃった”というところがありますからね(笑)。(葉加瀬)

僕も列車で旅をすると、窓から見た風景というのは、他の移動手段とは全然違う何かを持っていますもんね。グッと熱いものを感じたり、青春を感じたり(笑)。何かありますよね、あれは独特なものが。飛行機の窓から見るものとか、船でのものとかとは全然違う。

違いますね。

自分と向き合う感じがしますね。

まさにそうですね。

何故でしょう。スピードかしら? あのサウンドかしら?

スピードであったり、ゴトンゴトンというリズムであったりとかね。その風景を見ていますと、それぞれの国でそれぞれの風景を見ているんだけども、それが記憶の中で昔の事と結び付いたりして。

まさにそう(笑)。自分を見ている感じがしますね。本当に綺麗な映像だと思うんですけれども、あの独特の映像を撮るコツみたいなものとは、何か考えている事があるんですか?

映像に関しては、実際はカメラマンが切り取る世界なんで。ただその中で、僕なんかがいつも思っているのは“なるだけ素直に撮ろう”と最近思っていて。

ホー…。

“素直さ”とか“自然”とかいうと、例えば「自然にしてて下さい」とかって知らない人に言いますよね。でもそうもいかないわけだから(笑)

それはそうです(笑)。

だったら「こんにちはー」という感じで行けば、向うは「な〜に?」って。それでその笑顔が良かったら、それを撮ればいいんじゃないか…みたいな事で。

うん。

そういう事でだんだん乗客と親しくなっていくと。向うもだんだん慣れてくれば普通になって来ますんで。旅は1つの路線で、長い場合は十何時間とか一緒に乗っていますから。短い場合ても3時間くらいは乗っているかな。そうすると大体は仲良くなってくるんです。

そういう事なんだよね。あれだけ短い番組、あのショットを撮る為に、それだけの時間が必要だという事ですね。

そうですね。列車とは不思議なもので。長い旅の場合だと、「一緒の列車に乗っちゃった」みたいな連帯感がね(笑)。

“運命を一緒にしちゃった”というところがありますからね(笑)。

そういう事もだんだん出て来たりするんで。長距離列車だと、親しくなってくることはありますね。

なるほど。じゃあ、初めからカメラを回しているわけではないんですか?

イヤ、最初から。それはね、つまりあの番組の場合は忙しくて。まずホームに行く前に駅を撮りますよね。それから、時刻表や切符売場を撮ったり。乗り込む前の列車の顔を撮って、それから乗り込む人を撮って。そして出発の時というのが一番大変で。ホームを離れる瞬間を撮りたいわけですよね。

ハハハ、そうだよね(笑)

そこに見送る人がいて、いいシーンがあったりしますよね。その辺はその時々で、「あっちにしよう!」みたいな事でやっていますけど。だから結構忙しくて、ほとんど撮りっぱなしという事はありますよね。

じゃあ、すごく長い時間カメラは回っているわけですね。

テープは、ほぼずっと回っているような状態でしょ(笑)。

それで、あれだけ短いものを作る。

そうですね。

やはり、そういうもんなんだよね。だからこそインパクトのあるものが撮れるんだろうねー。


外国語だって何かのメロディーに聞こえたりするんです。(狩野)
音楽を聴きながらの移動中、「いま風景と合ってたな」と思う瞬間がある。(葉加瀬)

僕はミュージシャンなので、音楽がかかった瞬間に分かったりするんですけど。かなりマニアックな曲もかけますよね(笑)?

葉加瀬さんのも、たまにかかったりする時もありますよ(笑)。

ありがとうございます。大変誇りに思っておる事でございます。あれは狩野さん自身が選曲する事もあるんですか?

一応僕が始めた時から、基本的にこの番組はディレクターが好きな曲をかけようという事に決めたんで(笑)。現在でもディレクターが選曲していますね。

なるほど。普段旅をする時に、御自身はウォークマンとかで音楽を聴くんですか(笑)?

昔は、そんな感じの事をしていた時もあったんですけどね。でもやはり旅をしている時は現地の音をね。ウォークマンを聴いていると結局は自分の世界に入っちゃうし、その音楽の世界に引っ張られちゃいますよね。そのせいであまり世界が拡がらない。

なるほど。

ある時にそれをやめちゃうと、外国語だって何かのメロディーに聞こえたりとかするんです(笑)。

その通り。

列車のゴトンゴトンという音の上から、街のノイズがフワッと出て来て、フワッと消えたりみたいな事が結構あるんで。ここ10年くらいは、ほとんど音楽を聴きながら撮るという事は無くなりましたね。

なるほどねー。

“そのノイズ自体が音楽じゃないか”みたいな(笑)。

ハハハ(笑)。かなり深い境地まで辿り着いているわけですね。でも本当にそうですね。僕は旅が多いもんですから、欠かさず音楽を聴きながらの移動が多いんですけども。「ワーッ、いま風景と合ってたなー」と思う瞬間がたくさんあってね。

うんうん。

「気持ちいいな」というのがたくさんあるんですけど。その行き着く先には“外国語がメロディーに聞こえて来る”みたいな世界が(笑)。それはもっと深いですね。

ハハハ(笑)

それでも番組を作る時は、最終的には音楽を載せるわけですから。そのノイズを聴いてイメージを高めていくわけですよね?

いろんなパターンがありましてね。ノイズを聴いている時に、頭の中に何かの曲が浮かんできたりとか。自然と鼻歌が出てきたりとか。「アレッ、何で俺こんな歌を鼻歌で歌ってんだ?」みたいな(笑)。

なるほど(笑)

それは「ちょっと覚えておこう!」みたいなね事とかもありますしね。その音楽自体を聴いていなくても、突然「ここには、あの曲がはまるよなー」と思う事もありますよね。

もう自分のファイルがあるんだ。

いろんな事があって、旅から帰ってくるわけですよね(笑)。

それで、帰って来て決める。

編集の時というのも、また違う次元の旅をしているような感じになるわけですよ。その時に、現地の時の想いとかいろんな事が重なって来て、「これはこの曲だろ」みたいな事がね。たくさんあればいいですけど、無い時もありますね(笑)。

ハハハ(笑)。で、今までの『世界の車窓から』の中から、選りすぐりのものを集めたCDが発売されたんですけど。16曲入った『ワールド・トラベル〜「世界の車窓から」』。これを聴いたら、もう見ている雰囲気になるわけですね。

そうですね。音楽から記憶を呼び覚まされた風景みたいなものが、多分出て来るのではないかと。番組を見ている人達は、この音楽を聴いた時にその映像まで思い出してくれるかもしれないし。見てない人でも、自分の旅とかに想いが馳せられるのではないかと。

なるほど。


鉄道の無い国というのは、少ないですよね。(狩野)
“線路は続くよどこまでも”ってやつで(笑)、続いてるんですよね。(葉加瀬)

世界各国の鉄道・列車で、印象に残っているのはありますか?

鉄道には大体2種類あるんですよ。“観光用の列車”と、人々の足になっている“生活列車”。面白いのは“生活列車”ですね。いろんな事があるのは。

そうでしょうね。

その中で印象に残っているのはカンボジアかな。カンボジアの列車は内戦の間もずっと走っていてね。それで列車と言っても、全部が貨物列車なんですね。最後尾の2〜3両に客車が付いてる。それに人間も乗せて走るんですけど。その貨物列車の中も、屋根の上も、人間が全部乗っているんですね(笑)。

ハハハ(笑)、映像で見た事ある!

屋根の上に当たり前の様に人がいて。そこを果物の売り子のお姉さんとかが、果物がいっぱい入ったカゴを持って、渡りながら売っていくわけですよ。客もそれを買って、屋根の上で食べているという光景がかなり印象に残っていますよね。

なるほど。

貨物列車もボロボロで。中も荷物と人が折り重なっているんですけどね。それで屋根がほとんど無いんですよ(笑)。

もう無くなっちゃってるのね(笑)。

飛んじゃってね。多分、戦争の時に襲撃されたかなんかの理由でしょうけど。剥がれちゃって屋根が無くなっていて。カンボジアなんで、スコールが降るわけなんですね。雨がザーッと。その時、屋根の上の人達が、雨に濡れて避難して来るんです。

はい(笑)

屋根から降りて来るんだけど、降りて来て列車の中に入っても同じだって。

ハハハ(笑)、部屋ではないわけだから。あまり避難にはなってないという事ですね(笑)。現在の日本では考えられない列車の姿ですね。

だからカンボジアの列車の姿というのは、僕達のお父さんの代くらいの人達が、第二次大戦後に使った“買い出し列車”の様なね。「多分、ああいう感じだったのかもしれないな」と思ったりもしましたけどね。

なるほどね。僕、今フッと思ったんですけど。東京だけの鉄道の路線図というのが頭を過ったんですよ。それだけでも地下鉄とか合わせたらすごいじゃないですか。でも狩野さんは世界中の“路線図”というのを見ていらっしゃるわけでしょ。「ここに今度行くぞ!」と決める時には。

そうですね。

「一体世界には、どれだけ鉄道のレールというのがあるんだろうな」と思ったの。

そうですよね。それは僕も計算した事も無いし、数えた事も無いんですけどね。鉄道の無い国というのは、少ないですよね。

ネー。本当に“線路は続くよどこまでも”ってやつで(笑)、続いてるんですよね。

本当にそうですね。終点だけど、また隣の国へ行けばまた始まるみたいなね。

そこから始まるんですもんね。


「ハイ、日本人ですよ」って素直に言えるようになった。(狩野)
“日本”を考えたり、“自分の家”を考えたりね。(葉加瀬)

これだけお仕事で海外に行ってらっしゃると、逆にプライベートでお休みが取れるという時は、どうなされるんですか?

僕の場合は、旅をしている事が日常になってしまっているという感じなんですよ(笑)

そうでしょうね(笑)。

だから夜中に時々目が覚めて、「今、どこにいるんだっけな?」って。

ハハハ(笑)

「トイレの方向が昨日のホテルの方向に…。いや、こっちだ」みたいなね(笑)。

分かります! 僕も旅人生なんでね(笑)。

だからプライベートの旅というのは、あんまりというか…。

逆にお休みがあると、ずーっと家にいて一歩も出ないみたいな事になっちゃいますね(笑)。

割とそういう方が多いですね(笑)。

そうなってしまいますよね、きっと(笑)。これから考えていらっしゃる新しい企画とかあるんですか? あるいは“こんな所に行ってみたい”と狙いを定めている国だとか街だとか。

『世界の車窓から』で行ってみたいと思っているのは、アルジェリアとかね。

オォ!

アルジェリアは一度違う番組の撮影で行った事があって。その時にアルジェの駅を見たんです。すごい立派なフランスの建築の駅でね。「列車走ってるなー」と思ったんですけども。そのロケが終わってパリに帰って来た時にテレビを付けたら、過激派が騒ぎを起こして。現在も取材が出来ない状態なんですよね。だからいつかまたアルジェリアに、今度は列車に乗っていきたいなという気持ちがあるのと。

はい。

もう一つ、いま興味を持っているのがリビア。リビアは“反米のならず者国家”とか言われてますけどね。カダフィ独裁政権ではあるけれども、最近は結構、観光政策に力を入れ始めていて。あそこにはローマ時代の遺跡が結構残っているんですよね。だから地中海文化圏なんだけれども、その辺の所のリビアを見ていみたいなとは思いますけどね。

なるほどね。まだまだ旅は続きそうですね。狩野さんにとって難しい質問だと思いますが、旅って何ですか? 

旅というのは、要するに“自分の存在を再認識する時間”みたいな感じなんですよね。

なるほどね。

それは通り過ぎる風景だったり。いろんな国の人々の顔だったり。見ている中に、それぞれが自分に跳ね返ってくるみたいな事があって。それで蒼臭く言えば、やはり“自分は何だろう?”(笑)みたいな事を感じるし。

えぇ。

それから若い頃は結構「英語を上手く喋りたいな」とか、「フランス語をちゃんと喋りたいよ」なんてね。「“日本人らしくなく”いたいな」なんてね。「“僕は日本人だ”と言われたら嫌だな」と思ったりとしてたんですけど。でも最近はいろんな国の人達と逢っていくうちにですね。結局のところ、その人達が生まれる場所を選べないように、私も日本人である事は仕様がないやと。だから「ハイ、日本人ですよ」って素直に言えるようになった事はあるんで。

僕もいつも感じます。外国に行った時にね、日本人である僕とか。あるいは“日本”を考えたりね。あと何処か違う所に行った時に“自分の家”を考えたりね。

そうですよね。

そういう意味で、本当に再確認する為に移動しているというが大きいですよね。そうすると帰ってくる事で旅って終わるじゃないですか(笑)。終わりの無い旅は無いからね。必ず終わるから“旅”なんだもんね。

それで、また始まるとね(笑)。

また始まる為に、終わるんですものね。

えぇ。

まだまだ続きますね。ずっとですね。

そうですね。きっとね。

でも、やっぱり休日は家にいるんだ。ホッとしました(笑)。


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CITY INFO



ON AIR LIST
世界の車窓から / 溝口肇
LAST TRAIN HOME / PAT METHENY GROUP
LA VIOLETERA / NANA MOUSKOURI
I'VE SEEN IT ALL / BJORK&THOM YORKE
THE NEARNESS OF YOU / MICHAEL BRECKER
風の子供たち / 葉加瀬太郎

 

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