ON AIR DATE
2021.11.07
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54



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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・

村上春樹ライブラリーで村上ワールドに浸る。「新しい文化の発信基地になってくれれば」

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TUDOR logo



『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


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#371 --- 日常を変えない難しさ、大切さ ---

前半はメッセージを紹介しながら
リクエスト曲をオンエア!

後半のテーマは「村上春樹」。
昨年に続いて2回目となる今回は、
彼の母校にオープンした「ライブラリー」の話から
世界中にファンが存在する村上さんが
日々、何を考え、行動し、暮らしているか?
彼の“生きかた”について訓市が語る。


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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
メッセージをお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからのメッセージ&リクエストをお待ちしています!!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2021.11.07

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Mr. Wendal / Arrested Development

2

My Father’s Daughter / Olivia Vedder, Eddie Vedder, Glen Hansard

3

Distant Eye’s / Little Tempo feat. Linda Lewis

4

In My Life / Himesh Patel

5

月光 / 鬼束ちひろ

6

Bird Of Sorrow / Glen Hansard

7

Send in The Clowns / Ted Greene

8

Who Knows Where The Time Goes / Nina Simone

9

Sit Around The Fire / Jon Hopkins with Ram Dass, East Forest

2021.11.07

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。



Kunichi was talking …


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10月に、2号に渡って『BRUTUS』という雑誌で村上春樹さんの特集がありまして、僕はその2号両方で村上さんの取材を担当させてもらいました。なんだかんだと村上さんを最近のマガジンハウスでの取材に引っ張り出し、もう何度目でしょうか? 最初は本当にめちゃくちゃ緊張して、また緊張していたつもりでしたが、大分慣れてきたというか勝手が分かってきたような気もするので、もちろんちゃんとしなくちゃと色々考えて取材に臨むのですが、同時になるだけ決めつけずに普通にその場の雰囲気で進めたいなとも思っていました。同じ方を毎年のように取材するとなると似たような質問はなるべくしないようにするのが礼儀ですし、とは言え初めて村上さんの取材を目にする読者もいるので、あまり知っている前提で話を進めることもできない。そのあたりのバランスが難しいんですけど、同じ人を定期的に取材できるというのは中々ないことで、毎回会う度に少しずつ扉が僕の方に開いていくといいますか、その人の新たな一面を知れる訳で、これはもう編集者冥利に尽きます。しかもそれが世界の文豪。当然、緊張感というのは取れないんですけど、今回の取材で同行した他の編集者達を見て、やっぱり村上さんってものすごい人なんだなと感じました。と言うのは過去4、5年になりますかね? 今までの取材は古谷さんという波乗りとお酒が大好きな、今時の編集者では貴重な割と無頼派っていうんですかね、もう会社をお辞めになったんですけど、おじさんと二人で村上さんのところへ伺っていたのですが、今回は他にも新人の子とか担当編集の子とか数人も同行していたんですよ。みな異常に緊張と高揚感で雰囲気が別人の様だったので、やはり村上さんとは人の行動を変えてしまうほどすごい人なんだと。そして改めて自分の初回の時の緊張具合を思い出しまして、気合いを入れ直したりしていました。自身のラジオ番組を始めたりして、昔より人前といいますか世間との接点が増えてきたと思う村上さん。今回どうしてこのタイミングで特集を出すことになったのかと言えば、母校である早稲田大学に「村上春樹ライブラリー」ができたことがありました。「宿敵早稲田め…」と思うほど村上さんの母校に通わなかった僕ですが、これは本当に羨ましいなと思いました。村上さんの全作品が収蔵されている部屋があるのですが、まぁちょっとびっくりするほどたくさんの本が並んでいて、いかに村上さんが70年代のデビュー以来コンスタントに本を出版してきたのかというのが一目瞭然なんですよ。短編集、長編、エッセイ、共著の作品、海外の翻訳物。ランニングを日課にして、毎日きちんとスケジュールを立てて確実に執筆を進めてきた成果っていうのが一つの空間として目の前にあるわけです。僕は作家でもなんでもありませんが同じ文章を書く端くれとして、大いに反省をしなければならないと思いました。スケジュールなんか絶対無理ですし、酒飲んで朝走るなんて逆に体に悪いですからね。



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ライブラリーには翻訳された村上さんの著作も並んでいるのですが、その数のまた多いこと。僕は村上さんに雑誌『POPEYE』で連載していただいた、私物のTシャツ 通称「村上T」についてまとめたものを単行本にした時にインタビューページを担当していたのでクレジットに名前が載ったんですね。村上さんの著作に自分の名前が載るっていうのはびっくりって言うかですね、これまた編集者冥利に尽きるんですけど、なので世界中の出版社から「村上T本」の翻訳を出したいという時には僕のところにも連絡が来るようになったんですよ。初の印税です。それが世界中から連絡が来るわけですよ。しかも、ものすごくビジネスライクなメールではなく、大体が必ずいかに村上さんを好きかとか、この本を出したいかという一文が添えられているわけです。これだけたくさんの国の人に読まれて愛されている日本出身の作家というのは、ちょっといないと思います。海外で酒を飲んでいて本の話になったりすると、かなりの確率で「クンイチは日本のハルキを読んだことがあるか?」みたいな話になるんですよ。そして「『ねじまき鳥』を僕は読んだことがある」「『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が大好きだ」とか、村上さんの本を実際に読んでいる人がたくさんいるのでびっくりします。日本人としてちょっとうれしい瞬間で、確かに村上さんの本っていうのは日本でものすごく人気がある以上、たくさんアンチがいたり批判されることも多いと思うのですが、もう村上さんの小説を間違ってるかもしれませんけども“小説界のビートルズ”ぐらいに思ったほうがいいんじゃないかと思います。ビートルズって「ポップだ」という人もいれば、「元々あんなのカバーバンドだ」とか「ものすごく深い」とか「コンセプチュアル・アルバムを生み出したのはビートルズだ」とか。「全部好きだ」という人もいれば、「ストーンズが好きで、ビートルズは好きじゃないけど1曲は好きな曲があるよ」みたいな話し方をされるじゃないですか。村上さんも一緒です。「嫌いだ」「短編は好きだ」「読んだことはある」と、とにかく触れた人の多さで言うと最早、ビートルズじゃないですか? たくさん売れたり読まれたりすればそれでいいのかって話じゃありませんけども、たくさんの人に響くというのはやはりそこに普通じゃない何かがあるんだと思います。『BRUTUS』で村上さん号を作っていた時、世間はまだ緊急事態宣言下で、色んなことが不確実で怒りや不安が渦巻いていた時でした。そんな時に村上さんに話を聞く。それは何を聞きたかったのかっていうとマニアックな話とかそういうことではなくって、村上さんはこういう時代をどうやって生きているんだろう?っていう何かヒントが欲しかったんだと僕らは思うんですけど、実際に話を聞いて思ったのは何があっても日々を飄々と生き続けること。ちょっとやそっとじゃ毎日を変えないという、その確固たる姿でした。やるべきことをやり、出来る範囲で好きなことをやり、日々の日常を変えないということ。それは村上さんが大作家だからだとかお金があるからそういうことが出来るんだろうとか、そういうことじゃなくて心持ちや好きなものに対しての過ごし方です。走って、本を読んで、書いて、安いレコードを探しに行く。来週死ぬとしても、今の生活を1ミリも変えずに続けそうなその姿勢。僕もそうでありたいなとすごく思いました。来週死ぬとしても、毎朝事務所に行ってやりかけの仕事をしたり、メールに返信してしまったりして普通に過ごす。それが出来るためには今を大事に楽しく生きていなければ出来ないと思います。暗い話に心を引っ張られないで、日常を大事にしていきたい。そういうことを村上さんに習ったような気がします。