TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING

Theme is... 動く旅

『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


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番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで
お寄せいただいた旅のエピソードと、
その旅に紐付いたリクエスト曲をオンエア！
選曲のオーダーや悩み相談にもお答えします。

後半のテーマは「動く旅」。
例年であれば月一回ペースで飛行機に搭乗して
海外を訪れていた訓市・・・
コロナ禍で“動くこと”さえできなかった2020年に
日々、夢想してイメージしていたシーンとは？
今、訓市が望む2021年について語る。


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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK！

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからのメッセージ＆リクエストをお待ちしてます！！


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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Kunichi was talking …


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この2020年、僕がどんなことを考えていたかっていうと大体こんな感じです。

僕は今、滑走路の上にいる。羽田空港には随分と早く着いた。深夜便で飛ぶ人たちというのは思ったより随分と多く、カウンターには大勢の人が大きなトランクを抱えながらイライラしながら並んで待っている。ここで怒ったってしょうがないのに。ここで10分余計にかかろうが、30分かかろうが、飛行機に乗ればそこには10時間以上いるのだから。セキュリティを通過し、本当にそんな全部PCやら金物やらを外させて、“全部確認してるの？”と意地悪なことも考えた。人によっては持ち込みの荷物だけで海外に行く人もいて、パンパンに荷物を詰め込んでいる人もいるのだから。そんなことを言いながらセキュリティでは恥ずかしい思いもしたことがあったなぁ〜。随分急いで家を出た時、カバンの中に何があるのかも見ないで必要なPCとかだけを突っ込み、セキュリティに通る時、２つ入っていたライターが引っかかり、カバンの中を見せてくださいと言われた時に、着た後のしわくちゃのTシャツだのどこかのレシートだの、タバコの箱を包むセロハンとかが出てきて、係の人も苦笑いだった。それから出国カウンターを出て、今ではもう自動になってしまったけど、わざわざ人がいるところに行ってスタンプを押してもらう。あとでいつからいつまでどこに行っていたか、それを見れば分かるからというのが大義名分なんだけれど、ただただ昔の通りスタンプを押してもらいたいだけの気もする。免税店でタバコのカートンを買い、カフェテリアで軽食を取り、喫煙室でタバコを吸うと、もう他には何もやることがない。そうすると椅子に座って、窓の外を眺める。いや、もしかしたらガラスに移り混んだ自分をぼんやりと眺めているのかもしれない。外では翼の先を点滅させた飛行機やら、忙しく動き回る作業者が見える。今頃、僕のカバンが積み込まれているのかもしれない。機内食でも運んでいるのかもしれない。どうでもいいことを考えたり、これが何回目のフライトだったかを考えたり。アナウンスの声が聞こえ、搭乗口に目をやると、もうすでに並んでいる人たちの姿が見える。もちろん荷物を乗せるスペースに限りはあり、それが椅子取りゲームのようなことは分かるけれど、長いフライトなのだから少しでも外にいたい人と、誰よりも早く機内に行きたい人たちがいるとすると、自分はいつも前者で、できるだけ外に長くいたかった。


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飛行機に乗りアナウンスが始まり、緊急事態に備えたビデオが始まる。どの航空会社も割と凝ったビデオを作って流しているのだけれど、僕の好みはエールフランスだった。カバンをロストされたり、席をダウングレードされたり、あまり良い思い出はほとんどないのだけれど、あのビデオだけは本当に素敵。やがて飛行機は離陸体勢に入り、あっという間に上空へ駆け上がる。地面がみるみるうちに遠ざかり、ビルや工場の煙突から昇る煙や、夜だったら煌々と光る街灯や、その合間を点として動く車たちがやがて僕らの視界から遠ざかり、エンジンのゴーという音の中での静寂が訪れる。雲間を抜けた青空や、終わりのない闇のような夜空を滑るように進みながら飛行機の中での過ごし方は様々だ。早朝の便の時にはその前の晩の酒が残っていてまだ二日酔いだと飛行機が飛び立つ前に、すでに熟睡している時もあるし、ドアが閉まり気圧が変わった瞬間に眠くなることもある。寝れなくて持ち込んだ単行本を読むこともある。はまりにはまって10時間ぶっ続けで2、3冊読んでしまうこともあれば、1ページも進まない時もある。そんな時は映画館で観に行こうと思っている以外の、つまり普段だったらまず観ないだろうという映画から観る。アメコミ原作系とかリメイク系。２時間あまりを何も考えず綺麗に無かったことにしてくれる。人生として考えたら無駄なのかもしれないけど、完全なる時間泥棒の映画たち。退屈せず感動で涙を流しそうになることもなく、飛行機を降りる頃にはどんな話だったかもよく覚えていない。けれど、そんな映画だけじゃなくって感動して1人でエンドタイトルまでボーっとしながら観てしまうような素敵なインディ映画もたくさんある。そんな状態をフライトアテンドさんに見られてクスッと笑われて、ブランケットで自分の顔を隠したことも何度もあるなぁ。けれども1番の過ごし方は、これから先に待つ現地でのことを頭に思い描きながら、眺める外の景色。あともう少しだ。あともう少しで目的地の空港に着く。

こんなことを僕はずーっと1年間考えていました。何が今年足りなかったのかなぁ。動けるようになったら何がしたいんだろうっていうと、色んな国に行きたい色んな街に行きたいって思いましたけど、あんなに嫌っていた飛行機に乗って遠くに行きたいと心の底から思うようになりました。2021年こそ世界が落ち着いて、人の往来が自由に出来ますように。そして“動かない旅”ではなく、“動く旅”というものがたとえ本当に小さなものでもたくさん出来ますように。