ON AIR DATE
2018.12.23
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54



★★★★★★★★★★

訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・

「記憶に残る10杯のラーメン」で平成の麺シーンを振り返る

★★★★★★★★★★


TUDOR logo

Theme is... 平成



『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅にまつわる思い出の曲をオンエア!

後半のテーマは「平成」。
多感な高校時代から旅に明け暮れた20歳代、
そして、二人の娘をもつ親になった40歳代まで・・・
濃密かつ重要な30年間=平成時代を送った訓市は年の瀬に何を思う?


★★★★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


2018.12.23

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Do Wah Diddy Diddy / Manfred Mann

2

A Place In The Sun / Stevie Wonder

3

I'll Close My Eyes / Blue Mitchell

4

Farah / Pharoah Sanders

5

Dawn (Luv Master X Mix) / Hiroshi Fujiwara

6

Drinking In L.A. / Bran Van 3000

7

Together / Tierra

8

I'm Still Here / The Notations

9

Feels So Good / Chuck Mangione

2018.12.23

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。



Kunichi was talking …


★★★★★★★★★★

先日、ガス・ヴァン・サントに会うため、ロスに行きました。僕はロサンゼルスに行くときはホテルに泊まらず、必ず親友の家に泊まるんですが、今回も“久しぶりに会えるから楽しみだな”と思って、行きの飛行機で窓から景色をボーッと見ていると、あることに気づきました。それは、来年になるととうとう年号が平成から新しいものに変わる。つまり、これが平成最後の年の瀬だということです。昭和から平成になったのは1989年の1月、僕が中学3年生で15歳のときでした。だから、現在45歳ですが、15歳から45歳までの30年間、僕にとって青春や世界をフラフラ回るようになったその期間全てが平成だったということに気づいたのです。1月7日、昭和天皇が亡くなった日。僕は親友の今ちゃんと渋谷をいつも通りフラフラしていて、ハチ公広場で号外が配られているのを見て、昭和が終わったのを知りました。あれから30年が経ったという事実にまずびっくりなんですが、それほど年号というものをあまり気にしていなかったからかもしれません。ただ、こうやって気が付くと、15歳の夏、つまり昭和の最後の夏に行ったのがロサンゼルスで、今こうして平成最後の年の瀬に行く海外もまたロサンゼルス。それに気づいてしまい、突然この旅が意義深いものに感じるようになってしまいました。リスナーの皆さんにとって、平成という時代はどんなものだったんでしょうか。僕のように人生の転換期全てをこの時代に過ごしたという人もいれば、平成生まれで、他の年代を知らない人もたくさんいると思います。僕の人生は紛れもなく平成で培われました。平成元年に高校生となって散々遊んで、付属高上がり。小さな世界しか知らない井の中の蛙って奴でした。それが留学先で英語を覚えて外の世界を知って、“自分とは誰なんだろう”っていう考えなきゃいけない問題を知って、それを探してもがくようになった。いろんな場所を旅するようになって、とにかく旅っていうこと自体に夢中になり、そして、見聞だけ広げに広げたものの、それが何の役に立つのかさっぱりわからなくて、またまた悶々としたのも平成でした。やがて働くようになった30代。子供を持って日々刻々とおっさん化しつつ、人様のお金を使って旅しながら働く40代の今、その全てが平成に詰まっているんです。そう考えると今度はすごく悲しくなってきまして、平成には青春から中年までのいいとこ全てが出揃ってますが、次の年号はそこから爺さんになっていく一方で、どう考えても坂でいったら下り坂。どうすればその新しい元号をポジティブに見られるのか、いま思案中です。


★★★★★★★★★★

行きの飛行機でそんなふうに平成のことを考えながらロサンゼルスに行ってしまったので、その後は何をするにもいろいろ考え込んでしまうようになりました。親友の車に乗り込んで流れているオールディーズを聴いていると、その思いはより強くなりましたし、今回ロスにいるときはいろんな友達が入れ替わり立ち返り車で迎えに来てくれたんですけど、なぜかみんな車が壊れている。代車だったり古い車に買い換えていて、Bluetoothもケーブルもなく、みんなラジオかカセットテープで音楽を聴いていて、それがまた15歳の頃を思い出させるというか、気分をえらく感傷的にしてくれました。ラジオをつければどっかで聴いたことのあるオールディーズやスウィングジャズのゆっくりしたのが流れていたり、カセットテープをかける人たちはなぜか必ずザ・スミスの曲が入っていて、それが車内に響き渡る。珍しく雨が降っていたロスでその雨に濡れた景色を車の窓越しに眺めていると、景色と音が混じり合って、15歳の頃に見た80年代のロスの景色が蘇ってくる感覚でした。当時はK-ROCKというニューウェーブ専門ラジオ局が若い人に人気で、車に乗せてもらうと必ずK-ROCKが流れていたんですが、そこでよくザ・スミスもかかっていたので、その感じを強く思い出しました。それから、泊めてもらった友人の家には犬がいるんですけど、えらく懐かれてしまって。泊まるときは必ず朝散歩に行くんですが、散歩するバレーまで車で行く途中にグリークシアター、そしてグリフィスパークと天文台があって、グリークシアターは僕が15歳の時に初めてアメリカでライブを観に行った野外コンサート場で、グリフィスパークと天文台も僕の母親がジェームス・ディーン狂で、『理由なき反抗』のロケ地だということで、2人で最初にロスに行ったとき連れてかれた所がその天文台。そんなことも昔と今がリンクしているような気がして、また不思議とぼんやりしたものです。そもそも今回の旅は取材で、ガス・ヴァン・サントと、同じく仲良しでプロスケーターのジェイソン・ディルという人に会いに行ったんですが、僕がロスに初めて行ったのも、ベニスビーチにいる本物のスケーターたちを見たいっていうのがその理由。そんなこともまた、最初に行ったのがスケーターのためで、今もまたそういう人と仕事をするために行くっていうのがすごくリンクして、これまた不思議な気分になりました。アメリカの気が荒そうなスケーターと歳もバラバラで、“どうやって仲良くしてるんですか?”と若い子に聞かれたりしますが、彼らの生き方というか、血気盛んでどっか刹那的で怪我もいとわず、向こう見ずなところ。それは、かつて自分がバックパッカーの頃に知り合った世界中のヒッピーの若い男の子たちととても態度が似ていて、片や自然の中、片や都会っ子。場所は違えど、すごく似ているので、今でもなんとなく彼らと一緒にいると居心地の良さを感じるんです。そんなことも全て平成で学んだんだなあと、またおじさんは景色を見ながら考えるのでした。