ON AIR DATE
2017.05.07
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

☆☆☆☆☆☆☆

Let's travel! Grab your music!

TUDOR logo

Theme is... ROPPONGI




『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「六本木」。
先日、ストーン・ローゼスのライヴを観ている時に訓市がふと思い出した
「あの頃の六本木」・・・ちょっと危うくて混沌とした、
でも、ワクワクした当時の六本木で体験した今でも忘れられない
エピソードとは?



★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2017.05.07

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Slow Slippy / Underworld

2

King's Cross / Pet Shop Boys

3

Jack Talking / Dave Stewart & The Spiritual Cowboys

4

My Way Home / Citizen Cope

5

幸せであるように / Flying Kids

6

One Evening / Feist

7

Last Dance / Sarah McLachlan

8

Goodnight Irene / Tom Waits

9

Bye Bye Badman / Stone Roses

2017.05.07

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★

先日、僕は武道館に行ってThe Stone Rosesというバンドのライブを見ました。マンチェスター・サウンドの代表的なバンドで、80年代後半から90年代頭にものすごく人気がありました。僕の同級生なんかはヘビメタが大好きだったんですが、ちょうどGuns N’ Rosesが出てきた頃だったので、『あぁ、イギリス版のガンズね。』と勘違いして、えらい音が違うのでびっくりしたなんてこともありました。ダンスカルチャーを通過したバンドで、ふわふわしたギターとリズミカルなドラムが本当に素晴らしくて、当時より今の方が好きになってしまったくらいなんですが、ライブの途中、ギターのジョン・スクワイアを見て急に昔の六本木を思い出してしまいました。90年代の六本木というのは、ものすごくたくさんの外国人がいました。もちろん今でもたくさんいるとは思いますが、ずいぶん感じが変わったなぁと来るたびに思います。今はたくさんの観光客に外資系の企業で働くバシッとスーツを着たような人もたくさん見かけますが、当時はそんな人たちよりバックパッカー上がりの外国人をたくさん見たからです。というのも、当時は円高で、何よりフラッと日本にやってきた女の子がすぐにホステスクラブで働いたり、男の子がバーテンをしたり露天商をしたり、仕事を見つけるのが割と楽だったんです。3ヶ月働いてまとまったお金を稼ぐと、それを持ってまたみんなアジアに方に散っていく、というサーキットみたいになってまして、たくさんのヨーロッパ各地の人、それからイスラエル人とかがいました。みんな短期の外国人アパートにすし詰めで住んでますから、仕事が終わってもどうせ場所なんかない、ということで、朝までいろんなところで大騒ぎして飲んでたので、僕は六本木というのはバンコクのような、東南アジアのような気配を感じていました。僕や僕の仲間というのも、日本に短期で帰ってきてアルバイトをしてお金を貯めたらすぐにまた3ヶ月とか半年くらい各地へ散る人が多かったので、なんとなく日本人なのにスタンス的には彼らと一緒で、自然と仲良くなることがたくさんありました。今でも突然、Facebookかなんかで昔の六本木時代の旅人から連絡がきたりします。みんなそれぞれの国で大人になって家族を持ち、写真を見るとものすごい恰幅が良くなっていたりして大笑いをするんですが、みんなが口にするのは『あの頃はすごくたのしかったなぁ。六本木は賑やかで楽しい場所だった。』と。今よりはるかに雑然としていて喧嘩なんかもたくさんありましたし、もっと危ない雰囲気の街でしたが、それと同時にどんな人でも受け入れる、どこか無国籍な、そして活気のある街でもあったような気がします。歌舞伎町なんかもそうですよね。怖い思いをする人もたくさんいると思うんですが、怖いもの見たさみたいなものがみんなの心にあったと思います。特に夏の頃になると、みんなアジアで旅をしているときと同じ格好で街を歩くので、絞り染めのドレスにサンダルの女の子とか、民族衣装を着たイスラエル人とか、今の六本木ヒルズから眺める街からは想像もつかないような景色がそこにはありました。



★★★★★★★★

90年代の六本木でいろんな人と出会いましたが、そのなかに一人、マンチェスター出身のイギリス人がいました。彼女は僕らよりもひと回り以上歳が上で、自分の故郷にはもう何年も帰っていないような生粋のバックパッカー。いろんなところを流れていたみたいですが、彼女もどこかで、“短期間滞在して働けば、お金が貯まる”そんな東京の噂を聞いて六本木に流れ着いた一人でした。『ホステスになればあっという間にお金が貯まるわよ。』と言われて来たらしいのですが、面接で残念ながら『ホステス向きの顔ではない。』と言われて、ウェイトレスをやっていました。ある晩、僕たちは友達が働いていたバーで酒を飲んでいると、仕事終わりの彼女が現れて『いやー、世界は狭い。本当に驚いたわ。しかも照れたわ!』と開口一番に言いました。何があったのか聞くと、店で働いていたら女の子の数が足りないというので、入ってきた外国人のお客さんのテーブルについたそうです。すると、そのなかの一人がジロジロ彼女のことを見て『あれ、ひょっとして・・・』と彼女の名前を呼んだと。『あんた、誰?』『俺だよ、俺。ジョンだよ!』それはThe Stone Rosesのジョン・スクワイアだったらしいです。ちょうどバンドが解散して一人で来た時だと思うんですが、僕らはその話を聞いて驚きまして。『ジョンと知り合いだったの?』すると、『知り合いも知り合い。地元の学校の後輩よ。』しかもある日、『ギターを貸してくれ。』と言われて貸して、今でいう借りパクをされたらしくて。以来、会ってなくて、それがその日、何年ぶりかに地球の反対側の国の、六本木という街のホステスクラブで再会。『向こうもギターのことを覚えていて、最初ものすごく気まずそうだったし、私は私でホステスやってて気まずかったわよ。』そう言って大笑いしながらお酒を飲んでいました。マンチェスターという街が、いかに昔景気が悪く荒れていて、やることがサッカーとフーリガンの喧嘩しかなかったこと。そんな街にダンスミュージックの波がやってきて、それを経たマンチェスター出身のバンドがたくさん出てきて、全てを変えていったということ。そんなことをとうとうと話してくれました。そしてThe Stone Rosesが、おらが街が産んだスーパースター、ヒーローで、年下だけど町中がとても誇りに思ってる。『考えてみたら、ギターなんかくれてやるわ。』と話してくれました。僕はそんな街の背景なんかは考えずに音を聞いていたので、彼女の話を聞いたら元々好きでしたが、よりThe Stone Rosesの音というのが素敵に聞こえるようになりました。ふわふわしてるけどみんなを包むようなギター、ロックですが腰が動くというか、軽く体を揺らしてしまうようなビート。そういうエピソード一つで随分音って変わって聞けるんだなぁ。そんなことを僕は武道館のステージで素晴らしいギターを弾くジョン・スクワイアをみて急に思い出しました。もしかしたら彼が弾いていたギターは彼女のものだったのかもしれません。