ON AIR DATE
2017.04.09
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

☆☆☆☆☆

Let's travel! Grab your music!

TUDOR logo

Theme is... BRIAN ENO



『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマはミュージシャン「ブライアン・イーノ」。
バックパッカー時代に必携して様々なシーンで愛聴したエピソード・・・
本人に会いたくてコンタクトを取るために訪れた場所で
対応していただいた人、そして、自分のPCに送られてきたメール・・・
訓市がブライアン・イーノへの思いを語ります。


★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2017.04.09

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Wailing Wall / Todd Rundgren

2

San Lorenzo / Pat Metheny Group

3

Music For Airports 2/1 / Brian Eno

4

Cavatina / "Deer Hunter" Original Sound Track

5

アネモネが鳴いた / 大橋トリオ

6

Spinning Away / Brian Eno & John Cale

7

Silver Morning / Brian Eno

8

Wind On Water / Robert Flip & Brian Eno

9

Volare / Dean Martin

2017.04.09

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★

ブライアン・イーノ。皆さん名前は聞いたことあると思うんですが、どのくらい知っていますか?僕たち、特に90年代のバックパッカーにとってイーノの音楽というのは、寝袋やバックパックと同じくらい必需品で、誰もが必ず1枚は持っていました。もともとはROXY MUSICという、相方にセクシーの権化みたいなブライアン・フェリーという方と一緒に、ダブル・ブライアンという形でバンドをやっていたんですが、インスタレーションもやるし、アンビエントという音楽を作ったのものブライアン・イーノだと言われています。そして、音楽プロデューサーとしても本当に腕が良くて、David BowieとかTalking Heads、あとはU2のThe Joshua Treeというアルバムはブライアン・イーノの作品ですし、簡単に聞き分けることができます。ものすごくきれいなギターのカッティングの音が、鋭く切れる包丁で切り刻むキュウリのような音がしたら、それはイーノのプロデュースのアルバムです。そしてイーノが作ったアンビエントの音楽っていうのが、これはもう独り者のバックパッカーにとってはその音楽を聞いていると一人じゃなくなるというか、完全に景色と音がシンクロする場所というのにたくさん出会います。“Music for Airport”というアルバムは、空港の為の音楽という、音がループして繋がっていくような作品なんですけども、僕は本当に空港で聴きました。若い頃は安チケットしか買えません。安い=乗り継ぎが多いということで、東京からロンドンまで行くのに乗り継ぎが4回で30時間。しかも乗り換えの空港に着くたびに、いちいち何時間も待ったりするので、やることがないんです。そこで『あぁ、暇だ、孤独だ。どうしよう。』というときは、荷物からCDウォークマンとイーノのアルバムを出して、ヘッドホンをつけます。そうするとささくれ立った心があっという間に満ち足りて、心のヴイックスヴェポラッブのような感じの優しさに包まれ、空港の片隅に置かれた観葉植物になったような気分になります。そして観葉植物として行き交う人々やヘッドホン越しに聞こえる小さな搭乗のアナウンスの声、カートの上に乗ってはしゃぐ子どもの笑い声や、窓の外の飛行機の尾翼の影とか、そういうものをあくまでぼんやりぼんやり眺めて、誰の迷惑もかけずに楽しい時間を過ごすことができる。これからトランジットがたくさんある旅に出る予定の人。ぜひイーノのアルバムを入れておいてください。もちろんこの“Music for Airport”もいいんですが、僕の一番のオススメは“Apollo”というアルバム。アポロ計画を念頭に作っていたものですが、確かドキュメンタリー映画の為に作ったものだった気がします。ジャケットが月の写真だと思うんですけど、このアルバムは本当にお世話になりました。通しで聴いて本当に素晴らしくて、これは海で夜明けを待つときとかに聴いたり、山で満点の星空や谷間に浮かぶ満月をこのアルバムが終わるまで眺めたり。旅の風景を思うとき必ずこの音があります。きっと宇宙から見た地球の姿を表現しようとした音楽だと思うんですが、地上で聴くこのアルバムというのは僕たちをちょっとだけ宇宙に近づけてくれるのかなと思います。



★★★★★★★★

僕はイーノには会ったことはないんですが、一度だけメールをもらったことがあります。それは僕が26歳くらいのときに最初のインタビュー雑誌を作っていたときです。ロンドンに滞在していて、なんとかイーノに会ってインタビューをしたいと思いました。彼はもともと楽器すら弾けないのにバンドを始めた人。でも、たぶん確固たるビジョンがあるんでしょう。何をやっても彼の世界観のすごいものを作る。ぜひ、どうやって仕事をするのか知りたいなぁと思いました。しかし、彼は年に最大でも2回しかインタビューを受けない。しかも過去について、つまり、過去作ったものとかそういうものについては一切話さないというので有名な人でした。それでもコンタクトを取ろうといろいろトライしましたが全く手がかりがない中、バックパッカー時代の友達が『ブライアン・イーノが当時やっていたレーベルの住所ならわかるぞ』と、調べてきてくれました。よし、行ってみようと思ってバスに乗って、確かすごく静かな住宅街の一角だったと思うんですが、もらった住所が道に面してガラス越しに中が見える小さいオフィスでした。中で働いている数人の女性が見えたんですが、本当にここがイーノのレーベルのオフィスなんだろうかと、道を聞く人もいないので前をウロウロしていたんです。すると、その中の女性が声をかけてくれました。『どこに行くの?』住所を見せて『イーノのオフィスを探してる。』と伝えると、『ここがそうよ。あなたは正しい場所に着いたのよ。』とにっこりされました。きっと僕がリュックを背負ったままウロウロしていたのを見かねて声をかけてくれたんだと思うんです。僕は目的を一生懸命伝えました。『インタビュー雑誌で、イーノのインタビューがしたい。』彼女の答えは僕が以前に聞いた通りの答えでした。『イーノはインタビューは受けないし、過去についても話さない。でも、あなたがそれをしたいと言った事だけは絶対、彼に伝えるようにしましょう。』とても静かで感じのいい人でした。それからなんの音沙汰もなかったんですが、一週間くらい経った頃かな、突然知らない人からメールが入りました。そこには、『僕はブライアンだ。君の事を妻から聞いたよ。君のやろうとしていることはとても素敵だと思うけど、僕は過去のことは話さない。幸運を祈る。』それは、ブライアン・イーノからのメールでした。僕が一生懸命説明していた女性というのがイーノの奥さんだったんです。彼女がちゃんとイーノに伝えてくれて、僕は彼からメールをいただいたんですが、ちょうど取材が初めてで、何もうまくいってない時に、“君のやろうとしていることは意味がある”と書いてくれたブライアン・イーノの言葉にどれだけ勇気づけられたことか。旅の思い出というのは、どこか雄大なところに行ったとかすごいものを見たということだけじゃなく、こういう何気ない一言だったりします。