ON AIR DATE
2016.10.23
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

Why do you travel? Why you're not?

TUDOR logo

Travel & Poems


『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!

後半のテーマは「旅と詩集」。
訓市が高校時代の留学時に持参してココロが救われた詩集とは?
以来、旅には必ず詩集を持っていく訓市・・・
「詩集」は旅での孤独感を撃退する最高の良薬!その理由を語ります。




★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
ドライブ旅で聴いた曲なども教えてください。

旅に紐付いた「リクエスト曲」をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2016.10.23

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Save Your Day / Jose Gonzales

スウェーデン出身のシンガー・ソングライター、ホセ・ゴンザレスによる2003年のアルバム『Veneer』に収録されている曲です。

2

Flight From The City / Johann Johannnson

アイスランド出身のアーティストで、映画音楽も手掛けるヨハン・ヨハンソン。2014年の映画『博士と彼女のセオリー』ではゴールデン・グローブ賞の作曲賞も受賞しています。この曲はリリースされたばかりの最新作『Orphee』から。

3

In My Life / The Beatles

1965年にリリースされたアルバム『Rubber Soul』に収録されている曲で、リード・ヴォーカルはジョン・レノンです。

4

Love Of My Life / Queen

1975年にリリースされたクイーンの代表的アルバム『オペラ座の夜』に収録されている名曲!

5

風になりたい / The Boom

ヴォーカルの宮沢和史を中心としたバンド、ザ・ブームのアルバム『極東サンバ』の収録曲で、シングル・カットされてヒットを記録しました。

6

To You / Alf Emil Eik

ノルウェー出身で、現在はフランスを拠点に活動しているミュージシャン、コンポーザー、プロデューサーのAlf Emil Eikが1979年にリリースしたアルバム『Joy & Breath of Eternity』に収録されている曲です。

7

My Baby Just Cared For Me / Nina Simone

アメリカの黒人女性ヴァーカリストでピアニストのニーナ・シモンのアルバム『Little Girl Blue』に収録されているキュート曲です。

8

Five String Serenade / Mazzy Star

1989年に結成されたアメリカのロック・バンド、マジー・スターはヴォーカルとギターの2人編成。この曲はアルバム『So Tonight That I Might See』に収録されています。

9

Sunday Morning / Maroon 5

ヴォーカルのアダム・レヴィーンを中心とした米カリフォルニア出身の6人組バンド、マルーン5のデビュー・アルバム『Song About Jane』に収録されている曲で、日本では車のTVコマーシャルにも使われてお馴染みに。

2016.10.23

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …



★★★★★★★★

僕はどこかに行くとき、よく詩集を持って行きました。きっかけはアメリカに留学したとき。日本語の本を持って行ったらそればっかり読んで英語を覚えないとか、小説を持っていくにしても、数に限りがあるからすぐに読む物がなくなるだろうとか。でも活字中毒なので何を持って行こうかなと思ったときに、親友が文庫本でくれたのが角川文庫から出ていた中原中也の詩集でした。その親友ももともと詩が好きなわけではなく、ブルーハーツ時代のマーシーが中原中也のTシャツを着ていて、そこから興味を持って好きになったんだと思うのですが、その本を出発前に突然くれて。なんで詩集をくれたのか、よく意味がわからなかったんです。アメリカに着いてすぐ学校が始まって、部活のアメフトだの宿題だのと日々に追われて読書どころではなかったんですが、ちょっと落ち着くとその田舎の静かすぎる夜をもてあますようになりました。何しろ本当に田舎で、夜は無音のうえに電気もないような場所で、みなさん寝るのもやたら早いわけです。何かをするにも何もなくて、ネットも本もないから音楽を聴いて。そのとき最初に読んだのがその中原中也の詩集だったんですが、ちっとも理解できませんでした。読んでも読んでも、「なんなんだこれは。」で、放り投げる。でも読む物がないので次の晩にまた手にとって続きを読んで、2・3ページで「この人は何を言いたいんだろう。」とか「言い回しがくどいんじゃないだろうか。」とか。いらいらして放り投げて、でも読む物がないから続きを読むというのを繰り返していました。その繰り返しの中である晩、全く意味をなさない詩がずらずら続いた後、次の数行にとても心を動かされることがありました。きっと、なんだかんだでアメリカの高校生活にどこか孤独を感じることもあったと思うんですけど、自分が言葉にしようと思っても一度も言葉にすることに成功したことのない気持ちを、いとも簡単にその数行で表してるところがあったんです。いま見るとどこだったかもわからないんですけど、その時にはものすごい衝撃でした。若いころは特にそうだと思うんですが、「どうせ誰も俺のことなんか理解してくれるわけがない。」とかひねた考えを持っていて、でもこの世のどこかに自分の心情を理解してくれるかどうかはわからなくても、同じ心境をもって、それを言葉にした人がいる。自分は完全に一人じゃないんだっていうのを、印刷した文字を見た時に確信してしまいまして。それはものすごいことだなと思ってしまったんです。全くの知らない人が、何十年も前の時代に生きた人が、いま自分が持っていたモヤモヤした気持ちをわけのわからない言葉の後に数行でまとめてボンって出す。それが本当に衝撃で、以来その詩集を毎日読むようになりました。初めて詩の読み方がわかったというか、一行目から最後まで全てに意味があって、素敵に聞こえる詩なんていうのはどうでもよくて、一言でも一行でも自分の気持ちを表していたり、感情をシェアできるということを見つけられるのが、詩を読むということなんじゃないかとそう思ったからです。今まで嫌いだと思っていた詩とかも目を皿のようにして見始めまして、ある日すごく気に入ったり、次の日読んだら全然好きじゃなかったり。そんなことも繰り返しましたけど、それを発見して以来、僕は詩集というのは何度でも読めるし、旅が長くてもその一冊で自分の感情を表してくれたり、見ている景色を変えることができる力を持つものだっていうことに気づきました。




★★★★★★★★

そもそも一番最初に見た詩集というのは実家の仏文を勉強していたらしい母親の本棚にあった、アルチュール・ランボーの詩集でした。これは随分ませた子どもだなっていうような話ではなく、僕はもう小学校の時は他の男子と一緒で、ジャッキー・チェンとスタローン命。ロッキーとランボーが大好きだったもので、ある日本棚にこの本を見つけた時には、「ランボーの原作がある!」と思って、見たら小難しい漢字で難しい内容の詩が書いてあってえらくがっかりしたことを覚えています。ただ、高校のころ読んでみたら難解なランボーの詩も好きになったりしました。もちろん全部を理解しているという気は毛頭ございませんというか、無理なんですけども、これまた途中で諦めずにリズムに沿って読んでいると必ず素敵な一節にぶつかったりします。もちろんランボーなんかは訳した人の日本語でだいぶ印象が違うので、嫌いだと思ってた詩をある時違う訳で見て気に入ったりします。なので、翻訳家の方によって詩集を選んだりするのも、詩を読むおもしろい読み方かなと思います。とにかく、『詩が好きだ』とか『旅に詩集を持ってく』なんて言うと、とんだおセンチ野郎だと笑われるので隠れて持って行ってましたけど、どこかいつもの環境から離れたところで詩を読むというのは、本当に普段の読書とは全く違う経験だと思います。意識して素敵だと思ったこともない言葉や、目の前の風景が突然すごく意味を持ったり、詩集を読むというのは何か感情の引き金を引くというか、自分が持っている孤独感みたいなのを撃退してくれる最高の薬だったりもします。どこかこれから出かけるという人がいましたら、何か詩集を持って行って見てください。どこから詩集に手を出せばいいのかっていうのはあると思いますが、何気にいいものが載っているのは、中学や高校の教科書。昔はくだらないと思っていたものでも、後で見返すと『すごくいいなぁ』とか。わかりませんよ、40歳になって宮沢賢治の詩を読んでポロポロ泣いてしまったり。決して悪いことではないと思います。僕が気に入ってたのは、寺山修司の『旅の詩集』。これはもう絶版かもしれませんが、本当の詩から歌謡曲の歌詞や誰かのセリフを抜いたり、詩心があるものは全部詩だっていう考えだと思うんですけど。こういうものからスタートして、自分がどんなものが好きか、どんな人のものが好きかがわかると、とても中に入りやすんじゃないでしょうか。いつか音楽をかけながら酒を飲んで、“ポエトリーリーディング”といって、好きな言葉だけをみんなが酔っ払って読むみたいな会をできたらいいですね。