ON AIR DATE
2015.07.26
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

「DJ」


世界中の いろんな人が作った音を

正しいタイミングで、正しいつながりで選び、かけていく。

DJが どの音を選ぶのか。

それは、海にこぼれたひとしずくをすくいあげるような、ひとつの奇跡。


音楽の海で 泳いでみないか?

夏はまだ始まったばかりだ。



TUDOR logo

Theme is ... DJ

いよいよ、夏本番!パーティー・シーズンの到来です。
「パーティー」の主役=DJをテーマにお送りします。

訓市が世界各地で開催された大小様々なパーティーで出会った
魅力的なDJ達。
そして、その空間で体験したエピソード、そこで感じたことを語ります。

日本では見かけない微笑ましい光景から、
訓市が一生忘れられないDJプレイまで...

ミュージック・ストリームは「踊れる曲」を中心にセレクト!


★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

「こういった特集をやってほしい」「あの国の話が聞きたい」
というリクエストも随時募集しています。

番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2015.07.26

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Intro / Alan Braxe & Fred Falke

フランスのエレクトロニック系アーティスト、Alan Braxeが2000年にリリースしたシングル曲。

2

Soft / Lemon Jelly

イギリス人DJとプログラミングを手掛ける二人からなるユニット、レモン・ジェリー。2001年にリリースされたシングルのタイトル・トラックです。

3

Magpie (Morgan Geist Remix) / Abraham

アメリカのDJで、プロデューサー、リミキサーとしても活躍しているモーガン・ガイストが手掛けたリミックス・ヴァージョン。彼の別名は、ストーム・クイーン。

4

50 Ways To Leave Your Lover / Paul Simon

サイモン&ガーファンクルとして1970年代に一斉を風靡したポール・サイモンが1975年にリリースしたソロ作、『Still Crazy After All These Years?時の流れに』に収録された曲で、「恋人と別れる50の方法」というユニークな邦題が付けられています。

5

Downtown / シュガーベイブ

山下達郎、大貫妙子を中心に結成され、1970年代中頃に活動したバンド、シュガーベイブがリリースした唯一のアルバム『SONGS』から。

6

Do You Really Want To Hurt Me / Culture Club

1980年代前期に人気を博したイギリスのバンド、カルチャー・クラブの代表曲。ヴォーカルのボーイ・ジョージは音楽界の中でいち早く「カミング・アウト」したアーティストとしても有名です。

7

Eye Know / De La Soul

MC3人で構成されたアメリカのヒップ・ホップ・グループ、デ・ラ・ソウルが1989年にリリースしたデビュー・アルバム『3Feet High And Rising』に収録されている曲です。

8

No One Is To Blame / Howard Jones

イギリス出身のアーティスト、ハワード・ジョーンズが1985年にリリースしたアルバム『Dream Into Action』からシングル・カットされ、全米でも大ヒットを記録した曲。邦題は「悲しき願い」。

9

Albatross / Fleetwood Mac

ブルース・ギタリストのピーター・グリーンとドラマーのミック・フリートウッドを中心として1960年代後期に結成されたイギリスのバンド、フリートウッド・マック。

2015.07.26

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking ...


★★★★★★★
夏といえば、「パーティー」。パーティーといえば必要な音楽をセレクトしてかけてくれるDJですね。僕は本当に音楽が大好きで、それもどんな音楽が好きなのか聞かれても困るんですけど、わりかし広く、ノンジャンルのものが好きです。音楽を聴いて目を閉じて妄想するのが好きです。音楽、活字もそうだと思うんですけど、想像するスペースがすごく大きいものっていうのは自分に考える余地があってすごく好きですね。音楽も目を閉じるとその曲を昔聴いた場所を思い出したり、どんな場面でどんな匂いがしてっていうのを一瞬で思い出させてくれます。そういう中でDJっていう職種の人を僕は本当にリスペクトしているんです。なにしろ世界中の人が作ったいろんな音楽を、その場に合わせてベストなタイミングでベストなスピードで正しい順番でかけてくれるっていうのが本当にすごくてですね、それが気づくと1時間、2時間のものすごく長いストーリーになっていたりします。最近のダンス・ミュージックっていうのは・・・EDMですか。曲のテンポ早くて、1曲の間にピークが1回も2回もあるようなので、すごく疲れてしまうというか。1時間DJが回して、なにか壮大なストーリーがあるのかっていうと中々無いような気がするんですけど、素晴らしいDJというのは、どんなジャンルの音楽をかけても、その人しか作れないサウンド・スケープっていうのを作ってくれると思います。あと面白いのは自分が知っていて、たいして好きじゃなかった曲のはずなのに、その人が正しい順番でかけた時に突然その曲の素晴らしさに気づいてしまって、「なんなんだ、この曲ってこんなに素敵な曲だったっけ?」っていうのを気づかせてくれるっていうのもDJの醍醐味だと思います。僕は踊るのも好きなので、今でもDJが良さそうな人が来ると、踊りに出掛けたりしています。「いい歳こいて、まだ踊りに行ってるの?」なんて言われるんですけど、いい音楽っていうのは歳は関係ないのかなって思います。日本だとどうしても若い人に向けているという印象が強いと思うんですけど、高速ステップを切りに行くわけでもないですし、膝でカクカクしながらリズムをとるだけでも全然いいんじゃないでしょうか?海外のパーティーに行ったときにはそれこそ車椅子で腕だけですけど踊りに来る人とか、60?70代の人でも動きはしなくても、音楽を聴いて目を閉じてリズムに身を任せている人たちを見かけます。若い人たちの馬鹿騒ぎの場としてだけじゃなくて、音楽が好きな人たちが楽しめる場としての「パーティー」というのは本当に素晴らしいと思いますし、そういう場を作るDJっていうのはもう少しリスペクトされたり、理解されたりしてもいいのかなと思います。


★★★★★★★
DJ。本当にいろんなDJを見てきました。例えば、インドに行ったときには60過ぎの仙人みたいなDJもいました。ヒゲがすごくてですね、本当にグールーっていうか、なに回してるのかよく分からなかったですけどね。それから、天才児だ!っていうのが現れまして、12?13歳の子なんていうのもいて、みんなで踊ってましたけど、友達が来て、「訓市、訓市。今のDJ誰だか分かるか?」って言って、見たら子供がDJブースにいるんですよ。それで大人が踊るのもどうかと思いましたけど・・・もうすごい子でしたね。今、どうなっているんでしょうか?それから昔のディスコDJ。彼らの中にはロングセット命!という人もいまして、一人で何時間もかけるんですけど、盛り上げたり下げたりっていうのがすごく幅が広いんですね。1番すごい人は12時間くらい回す人がいて、レコードを回す現場から離れたくないらしくて、トイレも行かない人がいましたね。「どうやって済ましてるんだ?」って聞いたら、大きい空のペットボトルがありまして、あぁそういうことか!っていう、びっくりしたことがあります。それから場所ですけども、イビザにあるような大きいクラブに行ったこともあれば、牛が草を食べてる牧場でみんなが夢中になって踊ってるような場所で踊ったこともあります。それから、砂漠のど真ん中で踊りながら見る夜明けを見たこともあります。“踊る”っていうのは世界中どこに行っても変わらないというか、そもそも、いろんな宗教でも、例えば収穫祭だなんだって言っちゃあみんな集まって同じリズムで踊るわけで、きっと人間のDNAの中に刷り込まれているものなんだと思います。
面白い思い出が一つあるんですけど。昔パリにいる時に、Autechre(オウテカ)というテクノ・ユニットのパーティーがあると聞いて行ったことがあります。Autechreというのはものすごく難解な、インテリジェンス・テクノなんて言われている人たちで、リズムもすごく複雑で、お家で難しい顔をして聴いて理解しようと努める音といいますか・・・僕にはそういう風に聞こえてたんですけど。踊るテクノではないっていう。ところが、ちょうどパリに来た時というのがレディオヘッドが『Kid A』という、当時すごく期待された、レディオヘッドが一番売れてる時の待望の新作でして、彼らがそれを出すときに、「一番影響を受けたのがAutechreだ」って言ったものですから、すごい注目を浴びていたんですね。パリの新聞にも『テクノの未来はAutechreだ』とか『21世紀のテクノはここから始まる』くらい書かれていたんですよ。そのパーティーに行ったらものすごい列で、当然入れないというか。Autechreでこんなに人が来るなんて!って話してたんですけども、たまたま並んでいた列の前にいた地元の子と仲良くなって、うまいこと喋って裏から入っちまおうぜって賭けに出て、ついて行ったんですよ。いろいろセキュリティの人なんかと話して、日本から来たジャーナリストってなったのかな?うまいこと入れたんですよね。まあ面白いパーティーだったんですけども、一番印象深いのが、僕らが中に入ったら満員のフロアの目の前に60代位の夫婦がいたんですよ。踊りやすそうなタイツみたいな服を来て、ワイングラスを二人とも持っているんですけども、Autechreの音楽に合わせて踊ろうとして首を傾げてるんですよ。「どうもワシは踊れない」みたいな。「ばあさん、踊れんのか?」「いや、じいさん踊れないわよ」みたいな。でも、飽きらめきれずにフロアの方に出て行って無理やり踊っちゃあ戻ってきて、「どうもおかしい」・・・多分、新聞を読んで新しいダンス・ミュージックっていうのを知って、試しに来た夫婦だと思うんですよね。Autechreの音楽っていうのは踊れないですし、ワインにも絶対合わないと思うんですけども、新しいダンス・ミュージックって聞いて出てきた老夫婦っていうのがものすごく微笑ましくって、音楽を愛するとか踊るってこのくらい楽しいことなんじゃないかなって。日本でもこういう新しい音を作った人が来たっていう時に、試しに来る普通の人たちっていうのがどの位いるのかなとすごく思いましたし、僕も歳をとったら新しい音を敏感に貪欲に掘るおじさんであっていきたいなと思います。


★★★★★★★
DJというのはだいたい目の前にいるたくさんの人たちに向けてその音楽を届けるっていうのが仕事なわけで、それがお客さんが4?5人の時もあれば、何万人ていう時もあって、すごい技術も必要な職業だと思うんですけど。僕が一番覚えているDJの一人というは、僕のためだけに曲をかけてくれた人です。昔、ロンドンに住んでいた時に「アイソレーション・タンク」というものに入ったことがあります。これは別名、「知覚分離タンク」というおっかない名前なんですけども・・・ 生きていると僕らは常に五感を使って生きています。例えば、それが視覚だったり、聴覚、触覚、味覚、嗅覚っていう。人間ていうのは外からいろんな刺激や情報を受けてそれを映像化したりして、自分が今どういう態勢でいるかとか、何を考えているかとか、自分は誰だっていうのを認識するらしいんですけど。このタンクはその情報を遮断することによって、脳が一瞬、暴走するらしいんですけど、その後すごく落ち着いたり、リラックスする空間にさせるというものです。僕が初めて入ったのはそのロンドンでなんですけど、タンクの中っていうのは体温と同じ温度のすごい濃い塩水が入っています。そして、その中の空気っていうのも体温と同じなので、どこからどこまでが空気で、どこからどこまでが水なのかが分からない状態で塩水の上に浮くことになります。そして、真っ暗で防音もされているので、全ての触覚とかそういうのが遮断された状態で入るわけです。面白いのは、その全てが遮断されると、自分の手が例えば右にあるのか左にあるのか、足がどこにくっついているのか、上と下がどっちなのかが分からなくなるんですよね。多分、それは情報が入ってこないからなんですけど。そうすると、しばらくするとすごく不思議な落ち着いた感じになります。多分、人によってはそれが宇宙の無重力状態だっていう人もいますし、人によっては母親の胎内にいる状態に近いんじゃないかと。僕はこれ、すごく楽しかったんですけど、入る時にオーナーのおじさんに「1時間30分しか入れないよ」と。なぜなら、その塩分を含んだ水がすごく濃いので、それ以上入っていると肌がものすごく荒れるらしいんですよ。1時間30分経ったら合図を送るから出てきてくれと。「どんな合図ですか?」って聞いたら、「まあ、分かるよ!」。1時間30分入ってて無音なものですから、途中で何かあっても今いち脳が認識しないんですけど、ある瞬間に実は水中含めて音が出てるっていうのに気付きまして。それがだんだん大きくなっていって、「あ、これ音だ。音楽だ」と気づいたら、それがピーター・グリーンの『Albatross』という曲でした。素晴らしい曲なんですけども、あまりにも綺麗すぎて、僕はその時にもう自分は死んでしまったんだと一瞬錯覚するくらいスムーズに音が大きくなっていきまして。興奮して僕がそのタンクから出て着替えて、そのおじさんのところに行ったんですよ。そうしたらカウンターの後ろで、自分で古いアンプのボリュームを少しずつ大きくしてるおじさんがいまして。「これPeter Greenの『Albatross』じゃない?」って言ったら、もう満面の笑みで「そうか、お前も好きか。この曲」っていう。そのタイミングで聴く音楽としては多分、世界でこれ以上に相応しい曲はないんじゃないのかと、目が覚めるに当たって。なんでしょうね?DJというのは、正しい曲を正しいタイミングでその人に向けてかけることなんだなって、その時にすごく思いました。