ON AIR DATE
2025.11.30
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54


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当番組のPodcastは・・・
毎週日曜日の午後8時に最新版を
アップしています。

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TUDOR logo


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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。

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--- 超久々だった“バリ旅”のはなし ---

テーマは「バリ」

前回から25年以上のブランクを経て訪れた「バリ」・・・
デンパサールの空港に降り立った訓市が感じたこととは?
今回、バリに行くことになった理由
超短期滞在の中、いろいろ考えさせられたこと...


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「旅」と「音楽」に関するエピソードや
思い出の“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!

そして、旅の話だけでなく、仕事、進路、
人間関係から恋愛、夫婦・親子関係まで
全ジャンル、全テーマにご対応!
曲のリクエスト、選曲オーダーにもお応えします。

番組サイトの「MESSAGE TO STUDIO」から
“お便り”を送信してください。

2025.11.30

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Beer, Wine & Sunshine / The Twang

2

Cherish The Day / Robert Glasper & Lalah Hathaway

3

Come Back To Earth / Mac Miller

4

Crying Laughing Loving Lying / Labi Siffre

5

甘い運命 / UA

6

A Couple Minutes / Olivia Dean

7

Embuscade / Phoenix

8

Chintamani / Celine Dessberg

9

Moon / Daniel Caesar feat. Bon Iver

2025.11.30

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。


KUNICHI was talking

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先日、もう25年ぶり以上で「バリ」に行ってきました。最後に行ったのは僕がまだバックパッカーのような暮らしをしている頃のことです。90年代にどんな人たちがバリに行っていたかといえば波を求めるサーファーとかバックパッカーじゃないでしょうか。当時、高級なホテルやリゾートがあったのかどうかも僕には分かっていませんでした。多分あったんでしょうけどね。何と言っても金が無かったので安宿一択でした。バックパッカーの仲間の多くはバリに行って色々なものを作っていました。染物のバティックをオリジナルの図柄で作ったり、洋服を作ったり、銀細工の工房がいくつもある村に行ってアクセサリーを作ったり、それをアジアの他の国を放浪する時にフリーマーケットで売ったり、ヨーロッパに持ち帰ってそこで売ったり。僕もそんな工房の1つに行って銀でできたピースマークのピアスを作ったことがあります。時間だけは無限にあるような感じでしたので、工房に行っては時間をつぶしたりしたような記憶があります。当時からオーストラリアやニュージーランドといったオセアニアの若者がすごく多くて、安いバーとかから爆音で音楽がかかっている「クタ」とか「レギャン」とか、まあその辺がせいぜい僕らが行くところで、そこはバンコクのカオサンみたいにうるさかったですけども、内陸の「ウブドゥ」の方に行けば静かな時間を過ごせる、そんな感じでした。世界最大のイスラム国家ってどこかっていうと確かインドネシアなんですよ。その中でバリ島だけは宗教が「ヒンドゥー」で独特の雰囲気がありました。そこにオランダの植民地だった時代の影響もあったりして、「バリってインドネシアでどうなの?」って言われると「バリはバリ」としか答えられない。そんなオーラがありました。みんな大好きなバリでしたけども、気を付けなければならないのが「バリベリー」というやつです。バリという言葉にベリー=お腹をくっつけた言葉ですが、生水や生の食材を使ったものを食べたりすることで起こる強烈な下痢です。歯磨きするにもペットボトルの水を使うというのはどこのアジアの国に行っても共通認識でしたけど、バリの下痢は特に強烈で有名でしたね。もうなくなったと思っていたんですが、僕がバリに行くちょうど前に友達の誕生日記念にと男友達6人ぐらいでバリに行った野郎共がですね、バリベリーに遭って大変な目にあったと聞いて、あーまだまだご健在だったんだと笑うとともに、「やばいな。ほんと水、気をつけないと…」って思いました。帰国前日に全員で行ったバーで飲んだ酒の氷が怪しいと言っていましたが、帰りの飛行機で上から下から大放出の地獄の辛さで、ほぼ自分の椅子に座ることなく帰ってきたと言っていました。皆さん、飛行機の中で腹を壊したことありますか?もう本当に生き地獄ですよ。ううう…みたいな。で、席に戻った瞬間にまたお呼びがかかってトイレに行こうとすると、「お客様、当機は今、気流の悪いところを飛行中でございます。お席の方にお戻りください」と言われる時の絶望感。それでもトイレに駆け込んで揺れてもいいように壁とか手つけて座り込む。海外に行くとこの水問題というのは必ずあります。まあ日本が特殊なんですよね。大丈夫だっていう。サラダとか地雷のようで食べられなかったこともありました。とにかく、帰国前の最後の飲食って言うのには本当に気を付けてください。


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前置きが長くなりましたけども今回はパリにあるホテルに知り合いがいて、そこの新しい物件の計画があるに当たって、「一緒に働けるか打ち合わせがしたい。そして、それにはまず自分たちが作り上げてきたホテルに滞在して、どういう考えを持ってやってきたかをちゃんと見てほしい」ということでした。バリ行きは成田便のみということで、久しぶりの成田へ向かって一路デンパサールまで7時間弱ぐらいですか。そういえば遠かったよなっていうのを思い出しましたが、まあハワイとかと違って時差は1時間。何も気にすることがないので気楽なものです。空港に着いて僕はもう違う国に着いてしまったのかと錯覚するくらいびっくりしました。見違えるように綺麗で巨大な空港になっていたからです。浦島太郎になった気分とはこのことで、観光マネーのお陰かもしれませんが発展するアジアのパワーを見せつけられた気がしました。90年代って日本とほかのアジアの国々の間にはもうとんでもない差があったんですよ。はっきり言って。その差っていうのがどんどん、どんどんなくなってるのだなと、やけに電子化された空港を経て、ホテルがある「スミニャック」へ向かう途中にしみじみと思いました。他の国にとっては良いことなんですけども、日本だけはもうちょっと壁に当たっているというか、そんな気がします。着いたのが夕方だったのですが車窓から見える景色に懐かしさを感じるかと言えば、前回から時が経ち過ぎて比較もできないほど戸惑うばかり。小1時間ほど渋滞の中を進んでやっとホテルに着いたら、今度は想像していたものとは違う巨大な建物で2度びっくりしました。オランダの著名な建築家であるレム・コールハース率いるOMAが手掛けたというじゃないですか。このOMAは建築かじった人なら必ず知っていたり、レム・コールハースっていうのはちょっと哲学者みたいなところがあって本も出しているので、そんな彼が手の込んだ巨大な建物をバリに手がけている、それも信じられなかったですね。昔そんなお金をバリに投資する人がいるのかっていう感じでしたから。2日間の滞在で結局敷地を出ることは無かったのですが、その巨大な敷地内にある様々な施設の説明を受けて、それはそれでとても考えることの多い良い時間でした。いわゆる富裕層向けの施設なのは間違いないのですが、リサイクル工房を施設内に設けて海から流れてくるプラスチックのゴミを再利用して、ホテルで使うテーブルやドアを始めコースターなど色んなものに使用して販売していたり、その取り組みを自分たちだけじゃなくて、その地域の他のホテル全体に広めていたり。これはすごい良いなって、日本でもできるんじゃないのかなって思ったりもしましたし、とんでもなく音の良い、昔のニューヨークスタイルのクラブを地下に作っていて、音出しを試しにやっていいと言われて手持ちのUSBを持って行ったんですけども、結局従業員3人に対して2時間半もかけてしまいました。こんな良い音が鳴る箱が東京にあったらなーとなりましたけども、それより昔はアジア最高のものはすべて日本、東京にあるということに慣れて育ってきた僕にとって、そのアジア最高だろうっていうのがバリにあるっていう事実はもう羨ましいというよりか、ほぼ100パーセント嫉妬の気分ですよ。なんでこれがないんだっていう。まあ本当に2日間でしたけども、そうやって色々考えれて、やっぱり常に動いて色んな場所を訪れていくのは大事なことだなって思いました。「ああ、そこはもう行ったことあるし、好きじゃないから行かない」なんて年をとると言いがちですけども、知った気にならないで、いつも新しい気持ちで機会があったらもう1回見てみるよって思うのがすごく大事なんじゃないのかなと、プールサイドに腰掛けてですね、トロピカルなカクテルを飲みながら僕は思いました。