●「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」 

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『準備はいい?ブラックのみんな。美しきブラックたちの声を聞く準備は?心を感じる準備は?』

ニーナ・シモンの言葉です。伝説のウッドストック・フェスティバルが開催された1969年夏。もう一つ、伝説になるべきニューヨークのハーレムで音楽フェスが開催されていました。その名は、

「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」

7/29~8/24に渡る6週間、毎週日曜日に開催され、音楽史に名を残す素晴らしいアフリカ系を中心にしたミュージシャンたちが出演したこのフェスティバルの存在を、あなたはご存知でしたか? もちろん、ご存知でなくても何ら不思議ではありません。このフェスの映像は開催から50年間、ずっと、とある地下室に眠っていたのです。

この作品はハーレム・カルチュラル・フェスティバルの映像を軸に当時のニュース映像、出演者、さらに、当時参加した出演者と観客の声も交えて制作されたドキュメンタリー映画です。監督はヒップ・ホップ・グループ、The Rootsのドラマー / クエストラブ。

1060年代のアメリカ社会は50年代から続く公民権運動がどんどんパワーを増し、中心となっていたキング牧師が暗殺され、アフリカ系の人たちによる「貧者の行進」により政府が非常事態宣言出すなど、人種差別への抗議運動が大きく動いていました。

この映画の中に登場するハーレム・カルチュラル・フェスティバルの映像では、

  • スティービー・ワンダー、(貴重なドラムソロも)
  • B.B.キング、
  • ィフス・ディメンション、
  • スライ & ザ・ファミリー・ストーン
  • グラディス・ナイト&ピップス
  • マヘリア・ジャクソン、
  • メイヴィス・ステイプルズ
  • そして、ニーナ・シモン

など、出演していた多くのミュージシャンがパフォーマンスで、観客、そして結果、カメラに向けた言葉で、社会の矛盾への想いを訴えています。

人々が変革、いや、革命を求め、アメリカ社会が大きく動いた時代。誰もが当事者で、強い想いを抱えていたことが映し出され、そして、新たに今を生きるアーティストらのインタビューも交え、それは過去の話ではないことが浮き彫りになっています。 

そんな映画、『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』。

映画初監督を務めたクエスト・ラブ、打診を受け、「Harlem Cultural Festival? 何それ?ググっても出てこないし。」 しかし、映像素材を観て内容に驚愕!「なぜ日の目を見なかったのか!?」ビデオ40時間分を5ヶ月間で2時間に。素材をクエストらに託した数ヶ月後に亡くなったプロデューサーが当時、「黒いウッドストック」と銘打って作品の公開に奔走していた事実があります。

「それほど売れなくて絶望的になっていたことだったろうに」と監督は振り返り、「いや、この作品はWOODSTOCKにあやかる必要なんて無い。独り立ちできる歴史的な作品だ」 との思いから、Summer of Soulとの冠を掲げたのです。

音楽を愛するすべての方、必見の作品です。

映画『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』は、今日から順次公開されます。