映画「パピチャ 未来へのランウェイ」 

20201030week.jpg

撮影を、アフリカのアルジェリア全土で行い、アルジェリア映画として国内プレミア上映が決まっていたにも関わらず、本国では当局により上映中止。

しかし、制作陣の訴えが届きアカデミー賞 国際長編映画賞 アルジェリア代表に選ばれた注目の作品です。これは、監督、ムニア・メドゥールさんの経験をもとに作られた物語。

90年代、アルジェリアの首都・アルジェ。寮で暮らす大学生のネジュマは、友達のワシラとしょっちゅう寮を抜け出してナイトクラブで踊っています。でも、本当の目的はダンスではありません。ネジュマは服をデザインして、自らの手で服を生み出すデザイナーの卵。ナイトクラブのトイレで友達からドレスの注文を受け服を作って稼いでいるのです。

しかし。

武装した過激派のイスラム主義勢力がどんどん力をつけ、テロがいたるところで起きるアルジェでは、『正しい女性の服装』としてヒジャブの着用を強制するポスターが 町中に貼られています。

デザイナーになることを目指しているネジュマ。彼女はポスターを剥がしたり、落書きすることで抵抗しますが、ある日、大きな悲しみがネジュマを襲います。

いつ自分が死ぬかわからない。

でも、暴力に屈して、隠して、隠れて生きていくなんて。

ネジュマは自分の考えを信じ、自由のため、未来のため、そして生まれ育ったアルジェリアで生きていくために 立ち上がります。

映画 『パピチャ 未来へのランウェイ』監督・脚本を務めたムニア・メドゥールさんのコメントが届きました。この時代のアルジェリアを描くために、なぜファッションを選んだのでしょうか?

あの時代、女性は体を隠さなくてはならず、公共の場では 黒い着衣が推奨されていました。学生寮で上着を脱ぎ、肌を見せるシーンがありますが、あれは外の世界に対する抵抗です。隠していた体の線を見せ、女性らしさのシンボル的存在になる。ファッションと『寮の外』という2つの世界を対比させているんです。

ショーに使う布の種類も重要でした。とても象徴的だと思いました。独立戦争の時代に、アルジェリア女性が身につけて、武器を隠しました。象徴的だし歴史的で力強い。ネジュマは伝統的な布から出発して、それをリサイクルして近代化します。その布で作ったコレクションをショーで発表する。一方、寮の外の社会では黒や暗い色を強要されます。ショーで使われるのは白。 神聖で輝いています。布を使って対比させているんです。

時代、宗教、弾圧、男女差別。この作品は90年代を舞台に描かれていますが、今、この時代にこそ 必要な作品となっています。死と隣り合わせだった90年代のアルジェリアで 自分の夢を追い、『ファッション』という視点から戦い続けたネジュマ。彼女の強さ、ぜひ、劇場で見届けてください。ちなみに、パピチャとは、アルジェリアのスラングで、愉快で、魅力的で、常識にとらわれない自由な女性を意味するそうです。映画『パピチャ 未来へのランウェイ』は、今日から公開です。