国や行政が主導して行ったものの、一般にあまり浸透しなかった、また、混乱を招いた、そんな公共キャンペーンについて、海外の事情をチェックします。今朝は、イタリアとタイに回線をつなぎましょう。

イタリア フィレンツェの小泉真樹さん

JK イタリアで、いまいち浸透しなかった公共キャンペーンというと?

A 公共キャンペーンでぱっと思い浮かんだのは(フィレンツェの公認ガイドという職業柄もありますが)、月の第1日曜日に国立の美術館、博物館、遺跡などが全て無料になるというキャンペーンです。確か一昨年辺りに突然始まったのですが、ユネスコの世界遺産の半分はイタリアにあるというくらいの世界有数の観光大国ですので、ただでさえ観光シーズンには観光客で街は溢れかえり、美術館なども予約をしても長い列に並ばないといけない状態なのに、タダとなると芸術には全く興味ない人も無料ならと月の第1日曜には美術館に押しかけ、しかも予約サービスもこの日ばかりは受け付けないということになった為、観光都市特に美術館は大混乱で、私もお客様達にはこの日を避けて観光するように勧めていたくらいです。結局今年からは10月から3月の比較的観光客の少ないシーズンのみということで、いきなり観光シーズンの第1日曜キャンペーンは廃止になりました。

タイ バンコクの山崎幸恵さん

JK タイでは、公共の政策やキャンペーンで打ち出したものの、評判がよくないものって多くありますか?

A ありすぎて数える指が足りなくなりそうですね。すぐに思いつくのは、オートバイに乗る際のヘルメットですね。法律で着用が義務づけられてすぐの時は、警察も厳しく取り締まっていたので、バイクタクシーの運転手もお客さんの分のヘルメットを必ず用意していました。基本的にバイクは二人乗りまでのはずなんですが、一家4~5人で一台のバイクに乗っている姿を見かけることもよくありますね。その方たちも、人数制限はともかく、ヘルメット着用だけは守っていたはずですが、今は...。キャンペーン開始後、3カ月くらいで皆、あまり気にしなくなってしまいました。あと、シートベルトの着用義務もそうです。知り合いがシートベルトをせずに運転していて、左折禁止のところを曲がってしまったのですが、違反切符を切られたのは左折の分だけ。シートベルトの分はまったくお咎めなしでした。とまあ、交通系のキャンペーンは、なあなあになりがちなのですが、お酒やたばこに関しては非常に厳しいです。タバコに関しては、このところいっそう厳しさを増してきています。広告は一切禁止。パッケージも恐ろしいです。タバコのヤニで真っ黒になった肺の写真を使うなど、世界的にみてもおそらく強烈な禁煙運動を行っています。今年の2月から、主な空港6か所が全面禁煙になりました。空港ターミナルビルのソトでも禁煙です。違反した場合には5,000バーツの罰金支払いが求められてしまいます。電子タバコに関しても、2014年12月に禁止令が発令されました。アイコスなど、加熱式のものや、ニコチンなしのものも含みます。最大で禁固10年または罰金50万バーツ。使用した場合だけではなく、所持だけでも対象になりうるということで、タイにいらっしゃる際にはご注意下さい。

JK 交通規則はゆるいのに、たばこの取り締まりは厳しいというのが興味深い。どういった国民性からくるのでしょう?

A 熱しやすく冷めやすいと言われるタイ社会が、タバコやお酒に関してだけは徹底的に厳しいのですが、このキャンペーンの背景には「貧困の撲滅」があります。統計では確かに、喫煙者や飲酒者は貧困層に多いと出ています。本来は貧困層の保護や、定期的に収入を得る仕組みをつくるべきなのでしょうが、わかりやすいほうに走って盛り上がっている面があるようです。