みなさんにとって今年はどんな一年でしたか?そして、世界ではどのような一年だったのでしょう?今朝はイギリスとタイの通信員に電話をつないでこの一年は自国のみなさんにどんな年だったのかお聞きします。

イギリス ロンドン 内山昇さん。

Q 英国が欧州連合から脱退するBrexit(ブレクジット)のニュースが話題になっていますが、ロンドンではどのように受け止められているのですか?

A ロンドンというより、英国全体の話題として、全国民が注目しています。Brexit(ブレクジット)は英国にとって、1973年から50年近く続いたEUから離脱を意味する、戦後最大の転換期を迎えています。2016年6月に行われた、国民投票では離脱派が僅差で勝利しましたが、実際に自分たちの生活にどのようなインパクトがあるかは、国民投票した2016年当時はよくわからなかったという人が大半だと思います。。

Q やはりBrexit(ブレクジット)には移民政策への不満があったと思いますが?

A 英国の人口は2000年に5千8百万人だったのが、2017年には6千6百万人と、毎年50万人づつ増えています。

そのうち、EU域内からの移民は毎年約20万人規模と推測され、人口がこれだけ増えると、社会保障や教育面などで影響がでてきて、欧州移民と雇用や公共住宅の確保などで競合する労働者、低所得者層を中心に、英国では反EU感情が急速に高まってきたのが背景です。私の子供は、現地校に通っていますが、クラスの四人に一人がEUから来た2世です。もともと外国人率が高い、ロンドンでは反対派が勝利しましたが、地方都市ではBrexit派が勝利しました。

Q Brexit(ブレクジット)になった場合の日々の生活へのインパクトは?

A 英国がEUと合意できない、いわゆる「無秩序離脱」に陥った場合、英国経済は10年前の金融危機・リーマンショックを上回る打撃を受ける可能性があると英中央銀行であるイングランド銀行は最悪のシナリオ予測しています。具体的には貿易で関税が導入されると、国内総生産(GDP)で最大8%落ち込み、リーマンショック時の6.25%を上回ると予測しています。日々の生活へのインパクトは、失業率が現在の4%から7%に上がり、EUからきている労働者が流出。通貨のポンドは、ドル、ユーロ、円などに対し、最大25%下落、海外移民流入による需要増で、建設ブームが起きている英国では、住宅価格も30%下落すると予想。そして、金利も現在の0.75%から、5.5%に大幅に引き上げられる可能があるといわれています。

Q そのような影響が受ける兆候はすでにみられますか?

A はい、自分の話で恐縮ですが、私が購入した家の値段もすでに10%下落。投資目的の不動産は2割近く下がっているといわれています。また、欧州大陸諸国から輸入している食材などもスーパーでは高くなっています。そして、イタリアとかスペインに旅行で行く時も、ポンド安になっているので割高感を感じます。その他、EUから来る大学生の人数も、将来、これまで英国の学生と同じ授業料でよかったのが値上げされるのではと懸念し、減少しているようです。また、金融機関などもフランクフルト、パリなどに拠点を移すところもでてきました。

Q まったく状況が読めないということですが、来年はどうなるのでしょうか?

A 現在、英EU離脱、国民投票「再実施」に支持高まっていますが、メイ首相は2回目の国民投票などありえないと否定しています。クリスマス休暇もあり、議論は一旦ストップしていますが、年明けから急速に動いていくと思います。今は、誰も考えたくない、もしくは考えても何が起きるか、誰もわからないという状況です。時間もなくなり、時限爆弾状態に近づいています。

タイ バンコク 山崎幸恵さん

Q 来年4月から日本政府が外国人材の受け入れを拡大することになります。このニュースがタイでは大きく取り上げられているのでしょうか?

A 日本が技能実習生を歓迎するという報道はされていて、興味のある方は是非、労働省までお問い合わせを!という告知もされています。にもかかわらず、あまり話題になっている様子がありませんね。

Q 意外です。タイの皆さんには親日派も多いと思うので、日本で働きたいと思っている方が多いと思っていました。

A 遅すぎる印象は否めません。日本での技能実習生募集が人気だったのは約20年前のこと。当時は日本で技術と言葉を取得してくれば、日系企業で引く手数多で、相場よりいい給料を得られました。

今は、タイ人の給料は上がり続けて、日系企業の労働条件はいいとは言えないようです。会社の決まりごとも多いため、新卒のタイ人では、「日系と外資系の両方に受かったら、外資に行く」という人の方が多いです。「日本企業は時間にルーズ」とはよく聞くはなしで、出社時間は厳しく守らせるくせに、退社時間は守ってくれないからだそうです。仕事の掛け持ちが当たり前の社会では、確かに厳しいですね。

また、過去に技能実習生として日本に行ってきた人の口コミから、ブラックな労働環境が想像されることからも、実習生として日本に行くことは、人気があるとは言えないようです。正社員として雇用されるなら、話は別ですよ。

だいたい、実習生として日本に行くには、費用がかかりすぎるんです。最初にブローカーに払う費用が200万円くらいと言われています。語学学校の費用などが含まれているからだそうですが、もし韓国に実習生として行くなら、初期費用は20万円くらいなんだそうですよ。韓国では、語学学校の費用は国が出しているから、実習生自身は払わなくていいと聞きました。

介護系の人材が多く行くアラブ諸国も、労働条件は良くないけど給料はいいと聞きましたし、何よりいま、ASEAN経済共同体として、労働力の移動自由化を進めていますから、タイ人がワークパーミットなして働ける場所の候補はますます増えているんですね。

そもそも、最新技術はすでにアジアにある、という人もいました。工場の移転が進んでいて、最新の設備もあるし、エースエンジニアが直接、技術指導に来ています。

日本には本社機能だけを残して、工場は全て海外移転したから帰る場所がない、なんていう日本人の駐在員もいましたね。

ということで、業種にもよるのでしょうが、タイ人の応募者を集めるのはなかなか難しいのではないかという印象です。