今回、注目するのは東北の海産物【ほや】。

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日本酒と一緒にいただくおつまみとして人気のほや、ですが、今、東北のスーパーで、アートをパッケージにデザインした【むきほや】という商品が話題になっています。アート と ほや。どんなつながりがあるのでしょうか?プロジェクトを発案した佐々木和也さんにお話をうかがいました。

佐々木和也さん、もともとは水産加工業をしていたわけではありません。岩手県の四ツ目商事、という会社で運送の仕事をされてきた佐々木さん、なぜ、【ほや】に 関わることになったのでしょうか?

「我々、四ツ目商事は運送業をやってるんですけども、そのタイミングでは、ウニの集荷という特殊な仕事もしていました。弊社の社長がウニの目利きで、それを運送とからめながら、岩手県沿岸部を集荷して歩く、という仕事をしていたときに、沿岸でずっと仕事をしていたので、ほやの話が入ってきた、という形ですかね。」

去年の夏、岩手県の沿岸部で仕事をしているときに聞こえてきたのは、『ほやが余っている』という声でした。理由の一つは、宮城県産のほやに押されていること、そして、こんなことも背景にありました。

「よくスーパーさんで売られている規格のほやは250グラムアップ、300グラムアップのほやになるんですが、それより小さいものはスーパーで並べても消費者の購買意欲に繋がらず、すぐ値引シールが貼られたり、結局は捨てられたり。そういうことがわかっているので、仲買人=浜、漁師さんから買う業者さんも小さいほやを嫌うんですね。漁師さんから買うときに、大きいのだけ欲しい、という形になります。そうすると小さいほやがどんどん余っていく。値段も安くなっていくんですけど、買う業者がいないんです。そういうのもあって、7月、私が浜に入ったときには、だいたいスーパーで売りやすい商品が300キロに対して、3トン位が破棄される。小さいほやが3トンくらいある、というのを目の当たりにしたということですね。」

佐々木さんは、この状況を何とかしたいと考えました。そして、そんな中、障害のあるアーティストの素晴らしい作品を商品デザインに使用するなどして 世に送り出す会社 『ヘラルボニー』との出会いがありました。

「ほやが余っているということを岩手県漁連からお話を頂きまして、それをただ売ることもできるんですが、それでは面白くないなと思ってました。ちょうどそのタイミングでヘラルボニーさんが岩手県の盛岡の川徳という百貨店にお店を出すことが決まって、ネクタイがカッコ良かったのでそこにネクタイを買いに行ったときに、副代表の松田文登君と話をして『一緒に何かやりたいね、岩手盛り上げたいね』と話してたんですけど、その2日後に、水産物のパッケージをヘラルボニーにお願いしよう、ということに気づいて、それがきっかけになりました。」

『殻付き』ではなく『むきほや』にして販売しているのはどんな理由からなのでしょうか?

「小さいほや、先ほどの3トン捨てられていたほやは捨てるよりはお金にかえたほうがいいわけで。ほや専門で1年間やってる漁師さんもそのうちの9割捨てるとなると、ほやを続けるかどうか考える問題になると思うんですよ。そこで3トンを捨てずに商品化できれば、漁師さんも収入の安定につながりますし、フードロスだったり捨てるものを減らそう、という動きがある中で、これはやっぱり発信しなきゃいけないなと思いまして。でも普通にお店に並べても手にとっていただけないというのはわかっているので、食べやすく、面倒くさい下処理をこちらでして。買ってそのまま、海水を切って食べれる状態にすれば比較的触りやすいのかなと思って。滅菌海水と言って菌がない状態の海水を入れているので、そのまま袋から水を切って食べてもらえたら、海で食べているようなほやの味というんですかね、海水の味で食べやすいですし、また、スライスして刺身にしたり、ほや飯にしたり、アヒージョにしたり、何でも使える状態で出しております。」

ちなみに、ほやの殻をむく作業をしてくれる会社が 東日本大震災の影響で 少なくなっていて、 佐々木さんは、新たに『三陸ラボラトリ』という会社を設立。 障害のある方、働きづらい方の雇用も生み出しながら ほやの殻をむく作業を進めているそうです。

なお、このプロジェクトは今、 佐々木さんの四ツ目商事/三陸ラボラトリ、そして 障害のあるアーティストによるデザインを手掛けるヘラルボニーに加え、盛岡水産という会社も参加した『いわて水産持続化共同企業体』が展開しています。 最後に、今後のヴィジョン、教えていただきました。

ほやがきっかけではあったんですけど、いわて水産持続化共同企業体ということで岩手の水産物を持続的な形で進められたらと思います。だから、これからウニやワカメ、カキでしたり、岩手県、世界三大漁場とも言われているこの三陸沖の豊かな海産物を岩手県内だけでなく日本中に発信できたらと思っていますので、それが持続可能な形を目指さなければと思います。なので、そういった活動をこころがけて、次のアクション、次のアクションをやらせてもらおうかなと思っております。」

「むきほや」についてのお問い合せは、お電話でお願いします。

四ツ目商事株式会社  

TEL:0198-22-5149