今回は、コロナ禍で生じてしまった差別や偏見をなくそう、という活動、シトラスリボンプロジェクトに注目します。

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「甲斐さん:柑橘をイメージさせるリボンを身につけてそれを安心の目印にしていただきます。『ただいま、おかえり』と言い合える街に、ということをキャッチフレーズにゆるやかに活動しているグループです。」

お話をうかがったのは、このプロジェクトを中心になって展開する、

松山大学法学部 准教授の甲斐朋香さん。そして、愛媛大学 社会連携推進機構 教授の前田眞さん。そう、シトラスリボンプロジェクトは愛媛県から始まった活動なのです。

「甲斐さん:きっかけは3月の終わり頃、愛媛県でもコロナ感染者が確認されるようになりました。せっかくコロナから回復して地域に戻ったときに、元の生活を居心地よく続けられるよう、そういう受け皿が地域の中にできることが必要だと思って、前田先生に相談したんです。

前田さん:甲斐先生から相談を受けたときに、コロナ感染者への誹謗中傷、差別が報道されていて、それをなくしたいという思いもありましたので、じゃあ、一人で動いていてもダメなのでグループを作って活動しようということで、お互いのネットワークの中でメンバーを集めて活動を始めました。」

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「COVID-19」による コロナ禍のなか、「少しでも+(プラス)を生み出せたら」という思いのもと大学関係者、企業の経営者、メディアで働く人などが集まり「ちょびっと19+(ちょびっと ナインティーン プラス)」というグループが生まれました。では、そのグループのメンバーは感染者への誹謗中傷、といった動きに、どう対応しようと考えたのでしょうか?

「甲斐さん:私たちはカウンセラーとか、弁護士とかそういう人ではないので、誹謗中傷を受けたご本人を対象にすることはできないねということは話しました。その方々を取り巻く地域に働きかける方が得意分野だから、そっちに軸足をおきましょう、ということが一点です。

前田さん:具体的にはそういうことを広めようというときに、新聞に広告を出そうとか、イベントをやろうとか、そういうアイディアが出てきたんです。でも、自分たちでできることを絞り込まないと、という話になりました。日本では、リボンを使った活動が比較的定着しているので、じゃあ、リボンを使った運動にしよう。

甲斐さん:最初は、安心の目印もステッカーがいいかバッジがいいかと考えていたんですけど、無償にしても有償にしても作って配るのは大変だよと。リボンだったら共感してくださった方がめいめい作ってくださるじゃないかという意見があって。これが大きかったですね。」

リボンの色は、愛媛県の名産である柑橘類=シトラスをイメージした黄緑。形は、3つの輪のリボンになりました。

「前田さん:形にするときに、自分たちがこの活動を広めたい場所をイメージしたらどうかという意見が出ました。そこで、家庭、地域、職場あるいは学校をイメージしたリボンにしようということで、3つの輪のリボンになったんです。」

活動をスタートすると、全国から 共感の声が寄せられました。

「前田さん:自分たちはリボンをつけて感染者の人たちに向けて差別しないですよ、誹謗中傷しないですよ、ということを発信しただけなんですね。それに共感してくれた人が出てきたということです。共感してくれた人が最初は個人とかボランティアの人だったのが、企業が参画してきたり、行政が参画してきたり、学校関係者が参画してきたり、そういう形で広がっていきました。

甲斐さん:LPガス、プロパンガスってありますよね、あれを各家庭に配送している会社がカスボンベ、3万本って言ってたかな、そのリボンのマークをつけて配送したいんですけど、いいですか?って、もちろんお願いしますとお伝えしました。あと、エッセンシャルワーカーであるトラック関係者、トラック協会の方が大きなトラックにシトラスリボンのマークをつけて全国を走ってくださるとか、そういうことをしてくださっているところもあります。」

コロナ禍をきっかけに始まったシトラスリボンプロジェクトですが、甲斐朋香さん、前田眞さんは 今、こんなことを考えています。

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「甲斐さん:私たち、コロナ禍をきっかけに活動を始めました、と言ってますが、何もコロナ関連の差別だけがなくなればいいと思っているわけではないので、全体的に優しい社会になればいいなと思って活動しています。コロナ禍で私自身が思っているのは、厳しい世の中になったときに、困っている方、弱い立場にある方にしわ寄せが行きやすい社会になってしまっているということです。だから、そうじゃない社会になっていけばいいなと思って。

前田さん:コロナだけじゃなく、自分たちが話した中では、障害者の方はそもそもそういうことを感じてきたんだと聞かされたときに、あ、自分たちが見過ごしてきたこともたくさんあるなと気づいて、そういう意味での優しい社会になればいいかなということを思っています。」

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シトラスリボンプロジェクトウェブサイト