今週は、徳島県の藍住町である家族が営む『しごと着』をコンセプトにしたブランド、 【JOCKRIC】のHidden Story。

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取材にお答えいただいたのは、黒川勝志さん。まずは、JOCKRICを立ち上げた経緯を教えていただきました。

「私の両親がつかさ縫製という縫製工場を営んでいたんですが、今から18、19年前くらいに工場は閉じたんです。でも、機械とか簡単なものが縫える機材は残っていました。そして、その頃僕はまったく別の畑と言いますか、デザイン・グラフィックデザイン関係や自転車の仕事をしていたんですが、そこが事業縮小となって僕も仕事がなくなってしまったんです。今後どうしようかと思っていたんですが、そのときに自転車関係のほうから『黒川君のところ、もともと実家は縫製業だったよね?自転車とか整備するときのエプロン、かっこいいのを作ってくれない?』とご連絡いただいて、そのタイミングでJOCKRICを家族だけで立ち上げようと思ったのがきっかけです。」

閉じていた工場、眠っていた機械をもう一度動かそう。黒川さんはご両親の力も借り、依頼されたエプロンの制作に取りかかりました。   

「もともとグラフィックデザインの仕事をしていたので、デザインは基本的には僕がパソコン上でデザインを作ってお客さんとやりとりをしています。父親がもともとパタンナーもしていたので、デザインから父親に頼んでパターンを起こしてもらって、縫製はうちの母親と奥さんとふたりでやってもらう形で。今はもう父親が高齢で手伝えってもらえないので僕がパターンと裁断はして母親と妻に縫ってもらう形ですね。」

エプロン、そして、割烹着を中心に事業がスタート。その後、徐々にものづくりの幅が広がっていきました。

「エプロン・割烹着でやっていたんですけど、やはりいろいろ要望があって、建築関係の方で設計士さんとかで、『現場に行くときに雨が降ることもあるので、そういうときに着れるようなワークシャツを作ってもらえませんか?』という話が持ち上がったんです。それで撥水性の素材でシャツを作ったりとか、お客さんからアイディアもらいながらものづくりを進めているところがありますね。」

例えば、こんな商品もあります。フットボールTシャツをイメージした割烹着。

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「通常の割烹着でしたら、それを着てそのまま外に出て行くのも抵抗があったりするので、普通のカットソーの生地でフットボールTっぽい感じで後ろだけがあいているというものにしました。そうすると家事してる途中とか、作業の途中でもちょっとコンビニに行くのも、そのまま脱がずに行けるかなとイメージして作った商品です。」

徳島県の藍住町にあるJOCKRICですが、黒川勝志さんはごみゼロを目指す徳島県上勝町にも工房を構えています。

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「上勝町はごみゼロを掲げている町で、そこにRISE&WINさんというクラフトビールを作るお店があるんですが、そこが4年ほど前にオープンするということでユニフォームのご依頼をいただいたんです。それをきっかけに上勝町に行く機会が増えたんですが、そのとき町の取り組みが面白いなと思って、そこに勢いで工房も借りちゃって、そのなかでゼロウェイスト的なものづくりをすることも多くなってます。

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いらなくなったぬいぐるみをもらってきてそれを解体して新しいぬいぐるみとして蘇らせるという商品づくりもやってます。いま、上勝町で僕がやっている取り組みに共感してくれる同業者=縫製工場などがありまして、そこは大手の仕事をしているのですごくロスが出るそうなんです。残反というんですかね、いらなくなった生地がたくさん出て来て、それがこれまでは処分されて無駄になっていたんですけど、『だったら黒川君のところで何かできないか』という声をいただいて。ただ僕のところだけだと規模的にも制作もできないしそれだけの量は扱えないので、それでいまは縫製工場さんと連係をとりながら、みんなでいらなくなった生地を使ってものづくりをしようということで動いていってます。」

黒川さんに、最後にうかがいました。これから、どんなものづくりをしていこうと考えていますか?

「いらなくなった残反だったり、そういった生地を使って無駄のないものづくりをしながら、ワークウェアであったり、エプロンであったりというものを今まで通り作っていきたいと思っているんですが、そこからちょっと幅広くみなさんに使っていただけるものを作っていきたいと思っています。長く使えるもので、リペアとか修理もできる体制もとりたいので、そういうことも含めて長く使ってもらえるアイテムを作っていきたいなと思っています。」

JOCKRICウェブサイト