今週ご紹介するは、文京区の根津にある八百屋さん『菜根たん』を運営する株式会社Living Rootsの代表取締役、三浦大輝さん。

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三浦さんがおこなっている、コロナの影響で廃棄せざるを得ない状態だった野菜を販売するプロジェクト。そのHidden Story、ご紹介します。

株式会社Living Rootsの代表取締役、三浦大輝さんは24歳。大学に通いながら、食にまつわる会社を展開されています。宮城県仙台市出身の三浦さん、震災をきっかけに 食の安全、食の大切さを実感。大学に進学後、農業に関わるビジネスにチャレンジしたい、ということで 事業をスタートさせました。

「僕はもともと19歳のときに熊本の農家さんのところでしばらく泊まらせてもらったことがあって、そのときに有機農業とかこだわって作られている生産者さんに出会いました。こういう美味しいモノが全国にあるんだなと気づいて、そういうものをもっと流通にのせていきたい、というか、東京とか大きな消費地に届けたいなと思うようになったんです。最初は、駅の前でテントをはってマルシェのように野菜を売る、というところから始まったんですけど、代官山駅とか中目黒駅の前とかで売ってました。全然お金にはならないというか、半ばボランティアみたいな、原価にちょっとのせるくらいで売ってました。でも、やっぱりそういうことをやってると、駅前なんでいろんな方が買いにこられるんですけど、そのなかで俺の知り合いがスーパーのバイヤーやってるけど話つないでみようか、みたいな。」

まずは、スーパーや百貨店への卸しからスタート。去年の秋には法人化し、さらに、今年2月には 根津に八百屋さんもオープンしました。そんな中、新型コロナウイルスが感染拡大。八百屋さんの売り上げにも影響がありましたが、三浦さんが心を痛めたのは、フードロスの問題でした。

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「やっぱりこう八百屋だとか野菜を通した卸業をやるなかで、普段から農家さんとのおつきあいが頻繁にあるんですけど、今回コロナがあってから、僕らはもちろん、農家さんとしても売り先がなくなってしまったんです。何人かの農家さんは普段からとてもお世話になっている方で、しかも今回このタイミングでものすごく困ってらっしゃると聞きました。その農家さんのほうで行き場のなくなった野菜がトン単位で出てしまったと聞いて、僕らとしては恩返しじゃないですけど、力になれないかなと考えて、まずはその状況を伝えたいと思って最初はSNSを通じて状況自体を発信するというか。」

4月13日、三浦さんはこんなツイートをしました。

『千葉の農家さんの所に行ってきました。給食や飲食店の納品が完全ストップで、在庫2トン程あるとSOSいただきました。このままだと処分です。お野菜セットを作って販売を検討中です。ご協力いただけるという方はリツイートいただけたら嬉しいです!』

リツイート数は、1万4千。廃棄されそうになっていた野菜はインターネット販売され、200箱が完売しました。

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「僕らもこういうことをメインでやっていた会社ではなくて、あくまで今回のコロナで初めての取り組みだったので、ほんとにダンボールの資材はどうするのかとか、梱包作業にしても農家さんも1日で200箱も詰められないので、僕らのスタッフも総動員して畑に行って農家さんと一緒に梱包して発送するというところまでやりました。やっぱり売ったからいいだろうではなくて、その過程の部分もしっかり応援していきたいというのがあって、スタッフ総出で箱詰めして、一緒にチラシも入れました。これは今回の背景を僕が書いて、ダンボールのなかにメッセージカードを入れて送りました。」

コロナウイルスの影響で出荷ができなくなった野菜を引き取って販売する活動は、その後も続き、千葉の農家さんの場合は200箱を販売しましたが、北海道の農家さんからの野菜は、実に2000箱。しかし、それも見事 完売しました。

「やっぱり目の前というか僕がSNSだとかそういうものを通して助けられるならそこはどんどんやっていきたいと思いますし、今回いわゆるフードロスというのが起きてしまったというのは、根本的な課題があると思うんですね、流通においても。そもそも僕らは流通をやる会社としてそもそもどうすればフードロスが起きないかを考えないといけないし、給食が一回再開してもまた止まるかもしれない、というなかで、そういうときに事前に手を打てるような体制を農家さんとも連係して作っていきたいと思っています。レスキュー活動もやっていくんですが、僕らが助けきれない方もたくさんいらっしゃって、そこに歯痒さも感じています。100軒問い合わせがきて、それを全部SNSでやるというのはなかなか大変で、そういうことが起きない環境が作れないかなというのは僕らも考えていますね。」

三浦大輝さんに、最後にうかがいました。今後のヴィジョン、どんなことを考えていますか?

「僕らって一次産業を大事にしたいなとすごく思っていて、これまで人があまり意識していなかったことに本質的な価値があると考えています。例えば、今回のコロナがなければ、フードロスは普段から起きているのに関心がなくて、それが自分ごとになってスーパーの野菜の値段が上がった時に『なんで上がったんだろう?』と影響が出たときに初めて気づくということがあると思っています。僕らは本質に向き合うなかで、農業の現状の課題に気づけると思っているので、それを多くの人に届けていきたいというところと、あとは、やっぱり食べ物を扱う以上、それが美味しいと思ってもらいたいんですよね。なので美味しさの感動を届けていたいというのがあって、農業の本質に取り組むなかで、美味しさの感動を多くの人に届けていきたいという想いで今後もやっていきたいと思います。」

株式会社Living Rootsウェブサイト