今週は、車いすを使う人に海水浴を楽しんでほしい、という想いのもとで始まった、【鎌倉バリアフリービーチ in 材木座】のHidden Story。

20190712h02.jpg

鎌倉の材木座海岸にベニヤ板を敷いて車いすが波打ち際まで行けるようにし、障がいがある人も一緒に海水浴を楽しむ。

それが今月28日に開催される【鎌倉バリアフリービーチ in 材木座】。発案したのは地元・鎌倉の医師、酒井太郎さんです。

「私は普段、鎌倉で内科の診療所をしているんですが、私の患者さんが車いすの生活になってしまって、その方の一言から最初は始まりました。それは『車いすの生活になったら海に行けなくなっちゃったんですよ』という言葉。考えたらわかるんですが、車いすの方が海岸に行けないということに、私はそれまで気づいてなかったんです。たしかにそうだなと、そういう方ってたくさんいるのかなと思って、一日だけでもそういう方に海水浴を楽しんでもらえたら、ということで、知り合いの介護や福祉の方とかに声をかけて始めたのがきっかけです。」

20190712h05.jpg

車いすを使う人にとって 砂浜に行くことは難しい。

今から4年ほど前、その課題に気づいた酒井さんは、

バリアフリービーチの開催へ向け 準備を始めました。

「確かに車いすでは砂浜に行けないですよね。だったら、そこに何かを敷いて、海水浴を楽しんでもらったらいいんじゃないかなという取り組みです。例えば、クッションフロアという床に敷くものでやってみたり、板でやってみたり、ゴムマットでやってみたんですが、すごく重かったり、車いすの重さに耐えられなかったりで、結局ベニヤ板に落ち着きました。みんなで80枚、朝6時半くらいからボランティアの人たちと波打ち際まで敷いていきます。専用のマットがあるんですが、今年からは半分以上がそれに変わると思います。」

20190712h01.jpgのサムネイル画像

鎌倉バリアフリービーチ、

実際、どんな風におこなわれるのでしょうか?

「実は最初からなんですが、イベント化はしていないんです。この日はバリアフリービーチがありますよっていう、参加者もいつ来てもいいんです。海水浴が9時から5時までなので、その間にいつでも来ていいですよって、そういう環境を私たちは作ってますよ、というものです。安心できるというか、そういう方たちが来るきっかけをつくりたいというか。なので、私たちはボランティアの人もたくさんいますし医療職も介護、リハビリの関係の人もいます。困っていたら手伝ってください、必要ない人は自分で入ってくださいっていう。ですから参加者の方から費用もいっさいいただいていません。ある程度、波打ち際までは自分の車いすで行って、波打ち際に海に入れる車いすを用意しているので、それに乗り換えて海に入っていただきます。サポーターと一緒にみんなで海に入るんです。」

20190712h03.jpg

海に入ることができる車いすは、大人気。

サポーターと一緒に波を感じる 楽しい時間が続きました。

2015年に第一回がおこなわれた【鎌倉バリアフリービーチ in 材木座】。これまでの開催で感じたのは どんなことなのでしょうか?実行委員長の酒井太郎さんにうかがいました。

「私も医療職なんですが、バリアフリーって口で言っても難しくて、どうしても建物のバリアフリーを想像してしまうんです。でも、やっぱり一日みんなで一緒に海水浴を楽しんだり、お昼を食べたりしていると、もうそれは、車いすとか、参加者、ボランティアとか関係ないんです。心のバリアフリーというか。

20190712h04.jpg

夕方になったら『また来年ここで会おうね』って帰って行って。それがきっかけでメールのやり取りが始まったという人もいたりします。ほんとにベニヤ板を敷いているだけなんですけど、それ以上のいろんなつながりができたり、心のバリアフリーが大きいというか、結構参加したボランティアの方から、『車いすの方に声をかけやすくなった』という声もいただきます。

一日一緒にいると、全然身近じゃんみたいな。街で車いすの方に会っても『困っているのかな、声をかけていいのかな、失礼かな』と考えちゃうんですけど、一日海で遊んでいると『街で声をかけやすくなりました』という声もいただくので、そういうのが見えないバリアだったのかなと思いますね。」

酒井さんが強調したのは『心のバリアフリー』という言葉でした。

車いすを使う人に海水浴を楽しんでほしい、という想いで始めた

【鎌倉バリアフリービーチ】。

開催して 気づいたのは、

心のなかにあるバリア=壁をなくすことの大切さ でした。

「例年なんですけど、このバリアフリービーチ自体は、バリアフリービーチエリアがありますよ、というのぼりを立てているだけで、観光客の方も自由に使ってください、というエリアになっているんです。

それはなぜかというと、そこにいる方たちが手を貸してくれるようになるとボランティアも減らしていけるのかなと。ゆくゆくは当たり前にこうやってバリアフリーの道があって普段いる人が手伝って海に入れるといいのかなというのがあります。

実際は、海水浴シーズンなので海水浴の方もいらっしゃいますが、そういう方も結構手伝ってくださるので、そういう方が増えていくと、私たちのようにボランティアをたくさん集めなくてもいい海水浴場になるといいなと思っています。あとは、いろんな海岸で少しずつ広がってきていまして、今年は広島、千葉、東京でもバリアフリービーチを開催したいと相談があって、私たちがサポートして準備を進めています。

こういった海岸が増えてきて、車いすの方が、どこの海に行こうか迷いながら近くの海岸に行けるようになるといいのかなと思います。」

20190712h06.jpg

鎌倉バリアフリービーチ in 材木座 - ホーム | Facebook