毎月1回、税についての「頼れるパートナー」として税理士さんによる税のワンポイント解説をお届けしています。新型コロナウイルスの影響で中止となった文化芸術・スポーツイベントのチケットの払い戻しを放棄すると、その金額分を「寄付」と見なして税金の優遇を受けられる制度が新設されました。この制度について東京税理士会の内田景俊さんに教えていただきます。

まず、新たに設けられた制度について、説明をお願いします。

〇 この制度は、文化芸術、スポーツなどのイベントが中止や延期になった時に、そのチケット代金の返還を求めない場合は、払い戻しを受けない金額を寄付とみなして、寄附金控除の適用が受けられます。寄附金控除とは、個人が国や地方公共団体、社会福祉法人、一定の認定NPO法人などに対し寄附をした場合に、所得税と住民税が軽減される制度です。  

〇 今回、対象となるのは、国内で開催する予定のあった文化芸術、 スポーツなどのイベントですが、新型コロナウイルスの影響で中止や延期がされたもので、主催者が文化庁又はスポーツ庁に申請をして指定を受けたイベントが対象になります。指定を受けたイベントは文化庁ホームページに掲載されていますのでご確認ください。

 チケットの払い戻しをしなかった場合に、その金額を寄付とみなして税の優遇が受けられる。優遇される方法は寄付金控除という形、ということですが、具体的には、どういう方法で 申告すればいいのでしょうか?

〇医療費控除と同様に必ず確定申告をする必要があります。この制度の適用を受けようとする方は、主催者に払い戻しを受けない事を連絡して、主催者から「指定行事証明書」と「払戻請求権放棄証明書」を入手する必要があります。確定申告のときには、2種類の証明書が必要となりますので、来年の確定申告の時期まで大切に保管しておいて下さい。

〇 寄附金控除は、所得から控除する方式と税額から控除する方式の2つの方法がありますが、今回のイベントの払い戻しを受けない寄附金は、どちらでも使える寄附金となります。例えば、10,000円のチケット代金を払い戻さずに寄附した場合で税額控除を選択した場合には、所得税から3200円、住民税から800円の合計4000円が控除されます。ただし、チケット代金の合計金額は20万円までが、控除の対象です。

今のコメントにありました【所得から控除する方式】というのは、税金を計算する際のモトとなる「課税所得」から寄付金控除額を差し引く方式。一方、【税額から控除する方式】は、本来納める所得税や住民税からそのまま寄付金控除額を差し引く方式で、どちらか有利な方を選べます。

*不明な点、より詳しくは、税理士さんにご相談ください。今月のワンポイント解説は、新型コロナウイルスの影響によって中止となったイベントチケットを払い戻ししないことを選択すると寄付金控除が適用される、という制度について、東京税理士会の内田 景俊さんに教えていただきました。ありがとうございました。