今日は、人にも昆虫にも、そして環境にもやさしい街灯「Papilio」をピックアップします。

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暗い夜道を照らす街の光や街灯は必要である一方、「光害」=光の害、過剰な光や明るさは人間の健康に様々な影響を及ぼします。また、樹木の葉が落ちる自然な落葉のサイクルを遅らせたり、光に惹かれる昆虫が大量死するなど、自然界にも影響を及ぼします。

光害を抑え、昆虫と環境にもやさしい、新しい形の街灯である「パピリオ」。どのようなもので、どういった仕組みなのでしょうか。

今朝は、この「パピリオ」を開発した、ドイツはベルリンを拠点とするデザイナーのTobias Trübenbacher(トビアス・トゥルーベンバッハー)さんに事前に伺った内容をお届けします。

JK :なぜ光害に注目したのか、そしてなぜそれが街灯を作るまでに発展したのでしょうか。

TT:光害はとても重大な問題だと認識しています。現在、人間のための街灯が世界中に沢山存在します。この街灯、そして様々な光が、人々に睡眠障害や心の病をもたらしています。更に、人間のみならず色々な種類の植物や動物に影響が及んでいることから、光害を何とかしたいと考えました。

JK :パピリオはどのような仕組みで、どのようにグリーンなのでしょうか。

TT: 2つの問題を解決しようと思っています。1つはまず気候に影響を及ばさないと言うことです。パピリオは、一般の街灯と比べて5分の1のエネルギーしか使用しません。公共で使われている照明で、街灯だけで250万トンの温暖化ガスを噴出させている状況です。尚且つ光害も軽減するようなデザインです。気候変動ガスを出さず、そして光もコントロールします。人がその街灯の近くを通らなければ点灯しない、つまり必要な時にしか点きません。また、虫たちをいたずらに刺激しないように光スペクトル、光の周波数がコントロールされています。

JK : どういった理由で環境にも優しく、気候変動のガスを出さないで済むのでしょうか。電源はどこから来ますか。

TT:この街灯自体が風力発電をしています。風を受けるタービンが内蔵されていて、風が吹くと緑の羽が回ります。これでエネルギーを作り、必要に応じて蓄電をし、その電池が電源となります。このようにグリーンな仕組みとなっています。

JK :羽がついているから「パピリオ」(=蝶)という名前なんですね。

TT: 正に、「蝶」から名前をとっています。蝶のようなデザインですし、「蝶を殺さない」という意味も込めています。

JK : 虫を誘き寄せてしまうことはないのですか。

TT: 虫は走光性なので、光の刺激に反応します。しかしパピリオは虫をそこまで誘引しない周波数の光ベクトルを発しています。更に事実として、ドイツの街灯だけで12億匹の虫が殺されているというデータがあります。その状況を改善する、虫にやさしい街灯となり得ます。

JK :虫嫌いの人たちは虫がいなくなった方が喜ぶかもしれません。そのような声にはどのように応えますか。

TT:私たちの世界において昆虫がどれだけ重要な役割を担ってくれているか皆さんちょっと意識が足りないかもしれません。植物が生きるための受粉に虫は必要不可欠で、昆虫がいなくなったら多くの植物も絶滅の危機に瀕します。昆虫は私たちには必要な存在です。なので夜行性の昆虫の生態系を守ることは重要なのです。

JK :世界展開はどうですか。日本進出はありますか。

TT: とにかく出来るだけ早く展開できればと思っていて、今色々と術を探っています。まずは製造を担ってくれる会社を探す必要があります。私は大学を卒業したばかりなので、やっとここから始まる、という感じです。何ヶ月、もしくは何年か先になるかもしれませんが、プロトタイプはもう出来上がっているので、早く世界展開、そして日本へも、と考えています。

JK :トビアスさん、ベルリン芸術大学を卒業したばかり、そしてこの「パピリオ」が卒業作品とのことです。この芸術的で合理的で自然にやさしい街灯、世界での展開を期待したいです。

Papilio