アメリカ現地時間4月29日、バイデン新政権発足から100日を迎えました。アメリカの分断現象は新政権となってからも依然として続いていて、注目されています。現在の状況を聞きます。2007年のヴァージニア工科大学銃乱射事件を受けて設立された「平和研究・暴力防止研究所(=Center for Peace Studies and Violence Prevention)」所長のジェームズ・ホードン(James Hawdon)さんと繋がります。違う意見、思考、志向を持つ人々がどのような形で平和に共存できるのかを研究している方です。

JK: バイデン政権発足後100日が経ちました。支持する政党によって支持率の分断は見られるのでしょうか。

JH:残念ながら分断は深いです。民主党支持者は「バイデンは良い仕事をしている」と支持率が高い一方、圧倒的に共和党支持者の支持率の数字と開きがあります。皮肉なことに、トランプ政権での共和党と民主党の支持率が現在逆転しているような状況です。

JK:その分断に起因しているのか、根拠なく「不正選挙」だったという主張を持つ人たちが未だ多く居て、アリゾナ州では先に行われた選挙結果を「監査する」という動きがありました。何故未だに不正選挙だと信じる人たちがいるのでしょうか。

JH:アリゾナ州の共和党支持者は、先の選挙結果を監査することで不正があった可能性を見出したいと考えています。この「監査」という行為が、トランプを支持するか否かの「踏み絵」になっています。つまり、「不正に違いない」「不正を暴くべきだ」という態度を示さない者はトランプ支持者として許されない、という発想が根底にあるのではと推測します。

JK:不正があったという発想がいわばフェイクニュースであり、陰謀論にも繋がっていく可能性があります。そもそも、何故みなさんこれを信じているのでしょうか。

JH:まずは、一見真実に見える小さな情報のカケラから始まり、その小さな情報を発端に、必ずしも真実とは言えない道筋を進み出します。そしてその真偽のわからない情報の裏付けを都合よく探すようになります。この特徴は陰謀論支持者に共通する点です。あり得る「かも」しれないというポイントから広がり、最終的には立証できない情報を鵜呑みにしてしまう状態に行き着きます。

JK:立証できない事実に向かう過程で自分が信じたい情報のみを収集してしまうとのことですが、何故自分が信じたい情報にしか目を向けなくなるのでしょうか。

JH:インターネットの存在が大きいです。インターネットには真偽がはっきりしない情報が多く存在します。例えば、確かに郵便投票に何かしらの問題があるというのは一定の事実かもしれません。しかしそこを発端に「不正があるに違いない」という方向にインターネットが誘導してしまう傾向があります。無意識のうちに「郵便投票には問題がある」という検証されていない情報の渦に巻き込まれてしまう。すると偏った情報にしか目を向けなくなります。インターネットは、人を偏った情報環境に置いてしまう危険性があります。

JK: 例えば、僕にとってはどう見てもフェイクニュースを弟が信じているとします。この場合はどのように向き合えばいいのでしょうか。

JH:まずは「聴く耳を持つ」ことが大事です。その主張の大元に遡り、一つ一つの事実を一緒に冷静に確認しましょう。するといずれ緒が見つかるはずです。そこからゆっくりと「ときほぐす」ことが重要です。

JK:確かに、全否定から始めると当然相手も感情的になります。証拠や事実を揃え、「聴く耳を持つ」「冷静にときほぐしていく」。皆さんは冷静に向き合えていますか?

James Hawdon