今朝はアメリカ、ワシントンDCとつながります。アメリカでは169万人以上が新型コロナウィルスに感染しています。 (その数、世界全体のおよそ3割を占めているほど)

今月20日には、感染拡大を防ぐための外出制限が緩和され始めていて、経済活動は少しずつ再開されているようですが、現在アメリカでは、捨て犬や捨て猫を保護するシェルターから、保護犬を引き取る人が急増したそうなんです。

ということで、ここからは、ワシントンDCに本部がある、世界中の動物の権利を守る団体、Humane Society Internationalのプレジデント、ジェフリー・フロッケン(Jeffrey Flocken)さんに事前に伺った内容をお届けします。

別所: 保護犬を引き取って新しい飼い主が現れるまで一時的に預かる「フォスターペアレント(里親)」になる人が増えているそうなのですが、これはどのような背景があるのでしょうか?

「ロックダウン、都市封鎖の環境で人は他者から隔離され、自宅にこもり、オフィスにも行かない日々が続きます。不安で孤独になります。そんな状況で、犬やネコという生き物はぬくもりと愛情を与えてくれる存在となります。また、高ぶる感情を落ち着かせてくれるんです。加えて、自宅にいる時間が長いので、これまで会社に行ったり、出張で留守にしがちで時間がなかった人でも、動物の世話をするゆとりができたというのもフォスターペアレントが増えている理由です。」

別所:アメリカの経済専門メディア、ブルームバーグのオンラインニュースによりますと、新型コロナウイルス感染拡大による外出制限の影響で、ロサンゼルスではシェルターから動物たちを引き取る人たちが70%も増えたというデータもあります。これほど急増しているというのは、シェルター側から何かしらの働きかけがあったのでしょうか?

「シェルター側から、保護している動物たちを引き取ってもらえるように働きかけているのは事実です。 その理由はいくつかあります。まず、新型コロナウイルスが拡大し、シェルターのスタッフたちが仕事に来ることができなくなったら、動物たちの面倒を見ることができなくなります。また、これまでペットとして動物を飼っていた家庭で感染者が出て、ペットの面倒をみられない、あるいは飼い主が亡くなってしまうというケースも想定されます。さらに 経済が悪化すると失業者が増えたり、あるいは仕事が変わって、引っ越した先では、住宅でペットを飼うことができないという人も増えるかもしれません。そうなると、飼っていたペットを捨ててしまう、という懸念が生まれます。こうした事態に備えて、今のうちにシェルターで保護している動物たちにフォスターペアレントを見つけて預かってもらいたいと思っているんです。

別所  なるほど...新型コロナウイルス感染拡大によって、逆に保護される犬や猫が増えるのでは、ということを予測しての動き、ということですか、、、ではシェルター側は どのようにしてボランティアのフォスターペアレントを探しているのでしょうか?

「シェルターには定期的にフォスターペアレントになってくれるボランティアのリストがあります。そうしたボランティアの人たちは何匹も動物を預かってくれます。私の近所に住む女性は子ネコを何匹も引き取り、彼女の家族にも何匹か引き取ってもらって、飼い主がみつかるまでずっと世話をしています。ほかにも子犬や老犬のフォスターペアレントになっている女性もいます。新型コロナウイルスの感染が拡大した状況では、シェルターから6匹の犬を引き取っていました。その女性はずっと家にいる人ので、散歩に連れていくのも苦じゃないですし、世話をする時間もありますから。

別所 :アメリカでの状況についてお聞きましたが、ジェフリーさんが代表を務めるHumane Society Internationalでは新型コロナウィルス感染拡大がいまだ収まらない中での、世界各地のシェルターアニマルが置かれている状況にも目を向けているそうです。アメリカ以外の国でも保護犬や保護ネコを引き取る現象は増えているのでしょうか?

「アメリカや日本のような国では、動物を"飼う(一緒に暮らす)"という 文化があります。一方で、南米諸国や一部のアジア諸国には"コミュニティドッグ"という概念があります。"コミュニティドッグ"とは、個人が犬をペットとして飼うのではなく、コミュニティ全体で犬の世話をする。動物はコミュニティの一員という考えです。

そこでは、その地域全体で犬にエサを与えたり、面倒をみるわけですが、特定の誰かのもの、という意識はありません。また、インドでは"ストリートドッグ"という存在もあります。誰かがエサを与えるのでもなく、文字通り、ストリート、街中に転がっている食べ物で暮らす犬たちです。

新型コロナウイルスの影響で外に出る人たちが少なくなり、コミュニティによるケアが行き届かなくなったコミュニティドッグや飲食店が閉じているため、残り物にありつけないストリートアニマルたちが急増しています。こうした動物たちが飢え死にしないように、私たちの組織Humane Society Internationalでは、フードステーションを設けました。

チョコレートバーで知られているMARS社はペットフードのメーカーでもあり、そのMARS社の協力を得て、この数週間の間に14か国でストリートアニマルたちのためのフードステーションを立ち上げました。私たちのスタッフもステーションに出向き、動物たちに食べるように促し、体に不調をきたしていないか日々確認しています。

別所 アメリカでは現在、外出制限の影響もあって、自宅で共に過ごすパートナーとして保護犬を引き取る人が増えているということですが、この事態が落ち着いてきたら、またシェルターに戻ってきてしまう犬も出てきてしまうのではないか、と、ちょっと心配になってしまうのですが、その辺りはどうなのでしょうか?

「それはないと思います。むしろ、ペットをずっと飼いたい、フォスターペアレントになりたいと思う人は一層増えると思います。なぜなら、こうした事態で動物たちを迎え入れた人たちの中には、初めて動物を迎え入れたという人たちも多いのですが、動物が家族同様の存在になることを身に染みて感じているはずですから。

別所 最後に、ジェフリーさんご自身は 動物と一緒に暮らしているのか尋ねました。

「飼っていますよ。チュウイーという保護犬と、ダッシャという保護ネコは、私と妻と娘、家族にとってかけがえのない存在です。

別所 Humane Society Internationalのプレジデント、ジェフリー・フロッケンさん、ありがとうございました。