今週は経済評論家の加谷珪一さんに、「鉄道運賃」の今後について解説していただきます。

J.K. 4月からさまざまなものが値上がり、鉄道運賃も例外ではありませんね。

加谷 JR3社(東日本、西日本、北海道)は、新幹線や一部特急列車の指定席特急料金について4月1日乗車分から値上げしました。これまで、シーズン別の指定席特急料金は、通常期と、200円高い繁忙期、200円安い閑散期の3段階でしたが4月からは通常期より、400円高い「最繁忙期」が加わり4段階となります。

J.K. 首都圏のJRでは今後も値上げが予定されているとか。

加谷: 鉄道各社はコロナ危機による乗客数の減少や、エネルギー価格の高騰などで経営が厳しくなっていますが、課題はそれだけはありません。ホームドアの設置など、これまでにないコストをかける必要が高まっており、今の運賃体系ではそのコストを捻出しにくくなっています。このため、JR東日本はバリアフリー設備の整備を目的に、東京の山手線など主要路線を対象に、2023年春から運賃の値上げを行います。値上げ幅は普通運賃が10円です。

J.K. 確かにエレベーターの設置など、整備は進んでいるように感じますね。

加谷: エレベーターやスロープといったバリアフリーについては比較的順調に整備が進んでいますが、ホームドアは現在92駅しかなく、これを330駅まで拡大したい意向です。さらに自然災害への対応など、必要なコストはさらに大きくなるとの予想もあります。

J.K. 一時的にはコロナ禍でのリモート、長期的には生産人口の減少で鉄道会社の経営は苦しいのも理解できますが、インフラだけに心配です。

加谷: こうした事態を受けて、国土交通省では、今後の運賃体系を見直すための議論を開始しています。これまで鉄道運賃は一定の範囲で上限を設置するなど、独占による儲けすぎを抑制するという方向性でしたが、今後は必要なコストをいかに捻出するかという観点で、運賃を再検討することになりそうです。これも安全のためですから、ある程度は、やむを得ないと思います。