第一生命経済研究所の藤代宏一さんに、解説していただきます。

藤代: 4月1日に変わった東証(東京証券取引所)について

J.K. いわゆる東証再編ですね。どう変わりましたか?

藤代: 東証一部上場企業という馴染深い表現。これがなくなりました。それ以前は規模の大きな企業が上場する「1部」その下に「2部」があり、新興企業などが上場する、「ジャスダック」、「マザーズ」という4区分でした。これが複雑でわかりにくいという声と、「東証1部」に上場する基準が低すぎるという問題意識がありました。そこで新区分は「プライム」「スタンダード」「グロース」という3つです。ただし旧東証1部に属していた企業の大半が「プライム」に移行する形となりましたので、再編は骨抜きになってしまったという評価が多いです。実際、日経グループが投資家向けに実施したアンケートでは、「実質的に何も変わらない」との回答が過半でした。

J.K. そもそも東証再編の狙いとは何だったのでしょう。骨抜きで大丈夫ですか?

藤代: 大きな理由は海外投資家のおカネを日本に呼び込むためですが、もう一つ期待されていたのは東証株価指数TOPIXの上昇を促すことです。TOPIXを構成する企業は旧東証1部に上場する2000社以上。アメリカはSP500の500ですから、国際的にみてかなり多い。この弊害は、日本を代表する株価指数に、規模の小さな企業が組み込まれてしまうということです。規模が小さく、成長力を失った企業が平均株価から除外されることで、株価指数は上昇しやすくなるはずでした。これに対する期待の声は大きかったものの、少なくとも現時点では理想的な姿ではありません。

J.K. 一方で最近は円安です。日本からお金が出ていってるということですか?

藤代: YES、NOでいえばYES。ただしそれをもって日本が貧しくなっているかと言えばNO。円安は海外からみると、日本企業、労働者、土地そして観光も安くなるということなので、長い目で見ると海外のおカネを日本に呼び込むきっかけとなります。最近は円安で輸入品が高くなるという悪い側面が報道でも非常に注目されていますが、日本経済の成長に資するようなおカネはむしろ流入が期待されます。とはいえ、足もとの輸入物価上昇は円安が一因で消費者にとって打撃です。為替をコントロールするのは無理なので、政府は経済対策でしっかりケアをする必要があると思います。